「観ている人の心を揺さぶる作品」――映画『きみの色』で躍動するキャラクターたちに命を吹き込んだ、日暮トツ子役・鈴川紗由さん、作永きみ役・髙石あかりさん、影平ルイ役・木戸大聖さんにインタビュー
山田尚子監督の最新オリジナル長編アニメーション映画『きみの色』が2024年8月30日(金)に公開されます。
『映画けいおん!』『映画 聲の形』などを手掛けてきた山田尚子監督、待望の最新作となる『きみの色』は、柔らかな色彩と力強い筆致で生み出された「音楽×青春」の物語。フランスで行われた「アヌシー国際アニメーション映画祭2024」にも出品されるなど、世界中から注目を集めています。
1600人に及ぶオーディションを経てメインキャラクターを射止めたのは、日暮トツ子役の鈴川紗由さん、作永きみ役の髙石あかりさん、影平ルイ役の木戸大聖さん。初挑戦となる声優の仕事に臨む際の心境や、どのようにして役に向き合い、命を吹き込んだのかを教えていただきました。
表現者として興味を持っていた「声優」としてのお芝居
ーーもともと声優のお仕事に興味はあったのでしょうか?
髙石あかりさん(以下、髙石):もちろんです。お芝居には色々なジャンルがありますし、どのジャンルにも興味があります。その中でも、声優というお仕事はその世界に入ってみないと実態が分からないものも多いと思うんですが、小さいころからアニメが好きだったこともあって、声優のお仕事は夢のひとつでした。
鈴川紗由さん(以下、鈴川):私自身、声優オタクであり、アニメオタクでもあるので、もちろんずっとやりたいと思っていました。自分の中で「何歳の時にこういう仕事をしたい!」といった目標を作っているのですが……。
髙石:へえ!
鈴川:その中で20代くらいの欄に「アニメの声優」と書いていたんです。こんなにも早く夢が叶うなんて思っていなかったですし、しかも主役を演じさせていただけることになって。本当に夢のような時間でした。
木戸大聖さん(以下、木戸):自分も小さい頃からアニメを観ていたので、(声優は)一度はやってみたいお仕事でした。
ーー実際にチャレンジされてみて、どのような思いがありましたか。
髙石:マイクの前に立った時に「ああ、これか……!」という想いがありました。アフレコブースならではの無音の空間で収録を楽しみつつも、温度調整をしたり、本の持ち方に気をつけたり。新しいことだらけなので難しいこともありましたが、初めてのことに挑戦するって良いなぁって。
ーー役とはどのように向き合ったのでしょうか?
髙石:トツ子、きみ、ルイ、三者三様の異なる悩みがあって、私はきみの抱えている悩みに共感できたのが、すごく大きかったと思います。
例えば、きみはおばあちゃんや学校の友だちに見せる顔と、自分の考えていることのギャップに苦しんでいて。その中で、信頼できる友と出会って成長していく。人に見せる顔が違うのは当たり前だけど、それを当たり前にはできないんですよね。「なんで違うんだろう」と考えてしまったり、人と比べてしまったり……そういった壁や悩みが自分と似ていると感じたので、それをきっかけに、共感しながら役に入り込みました。
鈴川:私も台本を読んだ時に、トツ子は自分と似ているなと思っていました。性格的なところもそうですし、私もクラシックバレエを小さい頃に習っていたんです。でもあまり上手ではなくて(苦笑)。そういった共通点がありました。また、アフレコをした時、自分が高校3年生で、トツ子たちと同年代でした。だからこそ、大きくなにかを作るというよりも、等身大の自分で挑めたらなぁと考えていました。
ーー今日は髪型もお揃いで、本当にトツ子ちゃんのようですよね。
鈴川:ありがとうございます。色々な方にそう言っていただけて嬉しいです。
ーー木戸さんはどうですか?
木戸:この3人で並んだ時、ルイくんというキャラクターがどういう色になるかが重要だなと思っていました。ふたりとは性別が違いますが、観ている人にはそれすら気にならないような、同志としてのバンドチームになればと思っていました。そう考えた時に、トツ子、きみが接しやすい、一緒にいたくなるような男の子で在りたいなと。それを声の技術的な面で言うと、温かみがある音……例えば、地声よりもちょっと高めだったり、少年のような無邪気さだったりを場面によって出すように工夫しました。ふたりにとって「この子と一緒にいて、音楽やって良いんだな」と思えるような安心感に繋がれば良いなと。