映画
鈴川紗由・髙石あかり・木戸大聖が明かす『きみの色』の世界【インタビュー】

「観ている人の心を揺さぶる作品」――映画『きみの色』で躍動するキャラクターたちに命を吹き込んだ、日暮トツ子役・鈴川紗由さん、作永きみ役・髙石あかりさん、影平ルイ役・木戸大聖さんにインタビュー

2次元なんだけど3次元。その世界に入り込むような感覚

ーーその役作りが見事に結実していますよね。私はクライマックスに向かって涙が堪えられなくなってしまったのですが、みなさんから見た作品全体の印象も教えてください。

髙石:絵を見ながら台本を読んでいましたが、試写の時に、全てが重なり合って、クライマックスに向かっていって……最後には自然と涙が出ました。この作品は日常を切り取ったような作品ですが、どんどん自分が作品に入り込んでいき、なんだか不思議な気持ちでした。まるで心を勝手に揺さぶられているような……。

最初は「自分たちの声だ!はわわ〜!」と思っていたんですけども、途中からはそんなことも考えなくなって。終盤のシーンはやっぱり……特別と言いますか。人から聞くお声も嬉しいものばかりです。やはり、様々な方に届くと良いなと改めて思いました。

ーーアフレコで見たラフのイラストと試写会で色がついた時とで、また印象が変わりました?

髙石:変わりました。すごく色鮮やかになっていますし、キラキラしていて、素敵すぎる作品だなと思いました。

鈴川:(頷きながら)完成した作品を観て、本当に鮮やかな色で描かれていて、友だちの声や音楽も入ってより物語に引き込まれました。儚くて、心が浄化されるような気持ちになって、私も涙を流しました。特にバンドのシーンでは鳥肌が立って。日常を穏やかに描いた作品として観ていましたが、バンドシーンがはじまった途端に、一気に胸がざわざわするような感動に包まれました。

ーーやはり歌う時も力が入っていたのですか?

鈴川:そうですね。バンドシーンは(レコーディングスタジオで)レコーディングしたのですが、実際に歌うのと聴くのとでは音圧も違って、また違う感動がありました。

木戸:今の話でいうと、僕の場合は楽器担当で歌は歌っていないので、初号試写で初めてふたりのライブ中の歌声を聴くという体験をしました。色や音楽など、台本に文字では書かれていましたが、山田監督、牛尾さんたちが作り上げたのは、僕らが想像していた以上のもので。

オープニングが始まったところで、劇場全体がその世界に入ったかのような感覚でした。スクリーンが目の前にあるというよりは、観ている側が入り込んでいくような感覚。だからライブシーンも、劇場の席で観ているというよりも、ライブ会場の客席に座っているかのような気持ちになりました。台本に描かれている文字と実際にできるものとの跳ね上がり具合というのは、普段あまり経験しないものでした。

ーー確かに映画館でありながら、ライブハウスや舞台にいるかのような。

木戸:そうですね。2次元なんだけど3次元というか……そんな感覚でした。

ーーお話にもあった通り、本作は音楽がとても重要なテーマになっています。普段の役作りや日常生活において、音楽はどのような役割を果たしていますか? 演技への取り組み方への影響などありましたら教えて下さい。

髙石:私はお芝居に音楽を使うことが多いんです。「この役にはこの音楽だ!」とハマることがあって、その期間はそう感じた曲をループで聴いています。

ーージャンルはバラバラなんですか?

髙石:はい。その時期に出会った曲を聴くことも。私は音楽の世界に入り込みやすいので、日常生活に音が入ってくると「あっ違う」と思うこともあって。音楽に助けられていることが多いです。

鈴川:私も音楽は普段からよく聴いているんです。歌詞を重視する方、リズムを重視する方がいると思うんですけど、私は圧倒的に後者で。

髙石:あっ、一緒一緒!

鈴川:特に最初の入りを重要視していて……。

髙石:ああ、一緒! 分かる!(笑)

鈴川:だから「水金地火木土天アーメン」の中毒性のあるリズムが大好きで。歌っていて気持ちが良かったです。

木戸:僕はルイくんのように音楽を作ったり、楽器を弾いたりはまったくできないんですけども……ただ、さっきあかりちゃんが言っていたように、僕もお芝居に音楽を使うことがあります。

もともとドラマなどのサントラが好きで、本番前によく聴いているんです。日常生活の中でも聴いていて。普段の散歩や現場に行くときに音楽を聴くと、目の前の風景が変わるように感じるんです。例えば、前を歩くスーツ姿の方が今どういう感情なのかなと音楽を聴きながら勝手に色付けをして、想像することがあります。そういう意味では、今回の映画のテイストと通ずる部分もあるのかな? どうかな?という感じですね。

言葉で形容しがたい美しさがそこに在る

ーー皆さんにとっての『きみの色』の推しポイントはどこでしょうか? 例えば、仲の良いお友だちに勧めるときには、どのシーンやキャラクター、または物語のどの部分の魅力を伝えたいですか?

髙石:「歌がいいです!」(笑)。やっぱり思い入れがあります。歌わせていただくこと自体はもちろん、役で声を作って歌うことも特別な経験でした。特にバンドシーンは「リズムもピッチも何も気にしなくていいから」と言われた瞬間に、全部弾けて、どうでもよくなって、きみのままで歌っていたんです。正直、ぐちゃぐちゃになりました。でも「そのグチャグチャが良い」となって、劇中で使ってもらえることになりました。ただ、それまで予定していた絵とは変わってきてしまうから、絵を変えましょうという話に。まだ線画の状態だったので変えられるということだったのですが、私にとっても、思い入れのあるシーンになったので、お友だちにはバンドシーンを勧めたいです。

鈴川:映画内の色がとても綺麗で、特に感情が溢れ出た時の色がスノードームの中のように、オーラのようなものがふわっと弾けるのが見どころです。まるで観ている人の感情も一緒に広げてくれるような感覚があり、言葉では表しきれない美しさがあります。そこに注目していただきたいです。

木戸:あとは、3人をはじめとした、いろいろなキャラクターのキュートなところ。トツ子もそうだし、きみちゃんのクールな中に垣間見える可愛さだったり、新垣結衣さん演じるシスターをはじめとした他のキャラクターたちの会話から覗く可愛さだったり……それは山田監督のキュートさから生まれているものだと思うので、それぞれのキャラクターの可愛い部分に注目して観ていただきたいです。どのキャラクターも本当に可愛いですよね。あの(厳しい)シスターにも、可愛さがあります。思春期の子たちも、心が大人になった人たちも、映画の中で少年少女っぽい可愛さが垣間見えるところは人間らしくて良いなと思います。

ーー山田監督とはどのようなお話をされましたか?

鈴川:最初にキャラクターの魅力を教えていただき、アフレコ中には具体的なアドバイスをたくさんいただきました。そういった話を聞いて、トツ子のエネルギッシュな部分や、ふたりをぐいぐい引っ張っていくところを表現できたら良いなと思っていました。歌のレコーディングに関しては「トツ子の初々しさを残すために練習せずに来てください」という指示をいただきました。

また、鼻を鳴らすシーンでは、実際に鼻にティッシュを詰めてアフレコしたことも(笑)。やりやすい空間を作ってくださったことが印象的でした。

髙石:アフレコの時だったかな? 「驚かせてみようか」って、突発的に「わっ!」と驚かすこともあったよね(笑)。すごく良い現場でした。

私の場合はブース内での指示はあまりなくて。事前に、きみがどういう人間かというお話を監督に聞いたとき「湿気感を大事にしてほしい」と言われました。映像の芝居作りの場合は役の心情が大事ですが、そうじゃない部分というか……湿気感、体毛が濃い感じなど、言われたことがない演出方法のオーダーで。難しそうではあったのですが、監督からいただいたその言葉に腑に落ちるものを感じて。湿気感を大切にしながら、きみの歌も、声も演じさせていただきました。

ーー湿気感というのは、具体的にどのように理解して、どのように表現されたのでしょうか。

髙石:きみは誰からも頼られる存在でありながら、意外と落ち込みやすかったり、頑固な部分があって、ちょっとねじ曲がっているところがある。「湿気」というその言葉が役をまとめるキーワードでした。それで声に粘り気を足す感じで演じました。

ーー木戸さんはどうでしょうか?

木戸:僕もオーダー的なものはなかったのですが、言われたのは「ゴールデンレトリバーのような男の子」と。それがなんとなく……大きさに比例して優しさがあるキャラクターなんだろうなと。その例えがルイくんを掴むきっかけになりました。

抽象的な表現にはなってしまいますが、ルイくんは曲線で作られたようなイメージがあったんです。声の感じも、話しかける雰囲気も、丸みを持った子で。柔らかさや包み込む感じというというのも、監督は仰っていたので、自分の中で常にそのイメージを持ってアフレコに挑みました。ただ、母親と話す時にはしっかり意思を伝える部分なので、そこは普段とは違ったギャップを意識しました。

ーーアフレコについて、もう少しお伺いさせてください。アフレコブースには独特の空気感があったと思います。普段のお芝居とは異なる声優の現場での経験や、その環境の中で特に印象に残った出来事などを教えて下さい。

髙石:すごかったです……! 私は1日目のアフレコのときに「ここを家だと思えたら、この現場は勝ちだ!」なんて思ったのですが、全然思えなくて(笑)。やはり独特で、特別な空間でした。ガチャンと重く分厚い扉を開いて、そこに入ると無音で……アフレコの進み方的に、ふたりがお芝居をしている間も部屋の中で出番を待っていたんです。その間、台本をめくる音や自分の息を飲み込む音まで聞こえているんじゃないかと思うくらいで、なんだか不思議でした。この緊張感は他では味わえないだろうなって。

鈴川:もうアフレコブースは神聖なる場所というか……もともとアニメが好きということもあって、余計にそう感じました。密閉空間で、独特の空気感があって……なんとも言葉にしにくいのですが……(髙石さんを見て)ねえ?

髙石:ねえ(笑)。

木戸:うんうん(笑)。

鈴川:ブースの中に入るだけでも、シャキッと背筋が伸びる感覚がありました。

ーーマイク前に立って演じる感覚も新鮮でしたか?

鈴川:はい。どんな小さな音でも拾ってくれるので、震えながら台本をめくることも(笑)。

ーー緊張しますよね。木戸さんはいかがでしたか?

木戸:普段は目の前に大人数のスタッフさんがいる中で「よーい、はい!」という合図で撮影がスタートしますが、アフレコブースでは「Rec」という赤いランプが点くだけの静かなスタートで、それもあまり体験したことがないことでした。また、監督たちのいるブース(調整室)では何を話しているかも分からないので緊張してしまって(笑)。

髙石:(トークバックで)「ちょっと待ってね」って(笑)。

木戸:アフレコブースから監督たちの姿が見えるので「何を話しているんだろうなぁ」って。でもマイクの調整時間や休憩時間以外、アフレコブースにはずっと3人しかいないからこそ、演じる上では良い環境だったのかなと思っています。

ーー基本的には、3人で掛け合いをすることができたんですね。

鈴川:そうですね。トツ子はひとりで録ることもありましたが、掛け合いのところは3人でできました。

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