“負けヒロイン”は、負けたあと前へ進んでいくから美しい――『負けヒロインが多すぎる!』連載 第6回:梅田修一朗さん(温水和彦 役)インタビュー
佳樹のヤバさと人気は上がる一方、そして物語は文芸部のエピソードへ
――第5話から第7話までは檸檬のエピソードが続きますが、朝雲千早のヤバさも見えてきましたね。
梅田:千早はおでこがピッカピカでしたね(笑)。千早のシーンだと、温水の部屋でタペストリーを見ているところで、佳樹が出てきて解説をしてくれるところが面白かったです。
佳樹が出てくると、僕はいつだって嬉しくなっちゃうんです。温水って佳樹に対しては、家族だから全然普通なんですよね。僕も佳樹と話しているシーンは、いつもより砕けた感じの普通の話し方で台詞を言っているんです。あと佳樹って、どのヒロインよりも一番ヤバいんじゃないか?って気はしています……。
――毎週の予告映像でもヤバいですし、そのシーンでの「5人の覚醒者が揃うことでシグマドライブが共鳴し」のところも面白かったです。
梅田:そこは台本もふざけていたんですよ。ト書きに「扉口のエバンジェリスト佳樹、盆持って入ってくる」って書いてあったりするんです(笑)。予告映像もそうですけど、あんなに素晴らしく佳樹を演じてくださっている田中美海さんには頭が上がらないです。
――第5話はある意味、佳樹回でもありましたからね。
梅田:そうですね。ゴンちゃん(権藤アサミ/CV.関根明良)も出てくるし。このゴンちゃんと佳樹のやり取りもいいんですよ! 「私のお嫁になりんよ」「ならんもん」の会話のように2人の絶妙な空気感があって、本当にくっついてほしい。「私のお嫁になりんよ」「ならんもん」のところ。テストも本番もどっちも可愛かったので、どちらが使われているのか、まだ見れていないので楽しみです。
――そして第6話、第7話では、檸檬のシリアスなシーンが続きます。
梅田:檸檬の話の前に、スタジオオーディションで、温水と八奈見の掛け合いをやったんですけど、それが第7話の冒頭シーンだったんです。なのでオーディションのときから空気感を想像しながらやっていたんです。ここは恋愛というか、人間関係のところですごく真剣に話しているから、温水くんの良さも出るんですよね。「八奈見さんには他の人を悪く言ってほしくないっていうか……」っていう。
――ここでスルーしてもいいのに、八奈見は温水の言うことを、一応尊重するんですよね。
梅田:そうですね。温水くんと八奈見さんの信頼関係も出来てきているんだと思いますし、2人が檸檬のことを大事に思っていることもわかるシーンだったと思います。
――そのあと、温水が、走っている檸檬に会いに行きます。
梅田:ここは小説では書かれているんですけど、走っている檸檬を見て「綺麗だな」って温水が思うんですよ。その綺麗だっていうのには、いろんな意味が含まれていそうだなって思いました。
実はその「綺麗だな」も、オーディションのときはあったんです。なのでその気持ちは僕の中でしっかりと持っておきながら、檸檬との2人のシーンを演じていった思い出があります。
――檸檬の心は本当に綺麗ですよね。「もしこのまま二人が別れたら」と思っただけで、そんなに泣くんだと。
梅田:「可愛く見られたいって思っちゃったの」って、純粋すぎて頭を抱えますよね。そうなんだ!って。だって、「もし…、このまま…、2人が別れたら、って…」って言ってるけど、そんなの全然普通のことだと思うんですよ。好きな人に彼氏彼女がいて、別れてくれたらなぁなんて、誰でも思うだろうし。ここは、温水として接してはいるんだけど、さすがに僕のほうにもグッとくるものはありました。
――お芝居を聞いていても、ちょっと感動しすぎてしまって……。
梅田:若山さんが檸檬を演じているときの雰囲気ってちょっと異質なんです。檸檬とのシンクロ率がすごいというか。役者として演じているから、パッと切り替わっているんだけど、(マイク前で)話しているときは檸檬そのものなんです。
遠野さんとかからは「何で見ているの」ってからかわれるんですけど、僕は結構、温水として皆さんのことを見ながら収録しているんです。特に若山さんの檸檬を演じているときの感じはすごいと思っていて、檸檬の真っ直ぐさとか純粋さ、強くなり切れないけど走ろうとする姿勢とか、全部声と雰囲気に表れているから、カッコいいなと思いました。
――第7話は、良いシーンの連続だった気がします。一方で八奈見は、ソファでのシーン以外は、遠野さんの面白演技が目立っていた気がします。5話の「浮気だよ」とか、宙に浮いてたりとか、6話で糖質について考えたりとか。
梅田:一緒に録っているときは自然に感じていたんですけどね(笑)。アニメで見てみると、八奈見さんってこんな感じだったっけ?って思うくらい八奈見さんなんですよね(笑)。それが面白くて、すごすぎるんです。小鞠もすごいですし、みんなすごいんですよ。
――第8話からは、いよいよ小鞠のターンになっていきますね。
梅田:そうですね! 第8話は、生徒会長の放虎原ひばり(CV. 七海ひろき)と、馬剃天愛星(CV. 諸星すみれ)が出てくるのが一番の見どころです! 天愛星のあの感じはちょっとずるいですよ。すごくあざといんです。キャラクター自体が! 声優さんも、みんなウフフって思ったんじゃないでしょうか。
――学校ものと言えば文化祭ですけど、小鞠が文芸部の部長として、どうなっていくのか。
梅田:部長の重荷というものに、みんなは気づいていないけど、小鞠ちゃんはすごく頑張っちゃうんですよね。僕は第8話だと、小鞠ちゃんが自分の部屋で作業をしていて、伸びをしているときの横顔が、すごく好きなんです。応援したくなるけど、同時に心配にもなる小鞠の感じが表現されていて、すごく良かったです。
――先ほど、小鞠は、こちら側の友達という話をされていましたけど、温水にとっては、どこか同志みたいな気持ちもあるのでしょうか。
梅田:それはあります。ただ、同志だと思っているところも、このあとすごくキーになってくるというか。第8話以降で、温水が小鞠に対して気づくこともあるんですよね。同じタイプだからといって、全部が同じわけではない。考えていることやできることが一緒なわけではない。それに気づけたことで、温水くんも、小鞠に対する接し方や言葉が変わってきて、小鞠を小鞠として見るようになっていくから、今後、2人の信頼の築き方を見守ってほしいなと思います。この文化祭の話も、めちゃめちゃいいので!
――小鞠にとって、2人の先輩がいた文芸部がどれほど大事な場所なのかが描かれていきますからね。
梅田:そうですね。だから、小鞠も頑張りすぎてしまうところがあるんです。小鞠の良さと危うさが出てしまうんです。
――第8話で印象的だったシーンはありますか?
梅田:ツワブキ祭の企画テーマを考えてるときに行ったお店で、温水が小鞠にカヌレを分けてあげるシーンがあるんですけど、そこはすごくかわいかったです。温水からだったらもらえるんだなって。
そこで八奈見が「お金がない相手への対応が私のときとちょっと違わないかな?」と言って、足で小突かれたり痴話喧嘩みたいな感じになるんですけど、八奈見さんとはすごく仲良くなったんだな、友達になったんだなぁって、Aパートの終わりで思いました。
――そのお店に行く前に、八奈見をラッコに例えている温水が面白かったです。
梅田:小鞠には、八奈見と付き合っていると思われていたみたいですからね。そこで、ラッコについて「あいつらはやたらかわいいが、1日に体重の20%以上の餌を食べるんだ かわいくて、大飯喰らい。だからと言って、ラッコに恋はしないだろ。つまりはそういうことだ」っていう。
――意味はよくわからないですけどね(笑)。文化祭での八奈見の役割が、コンサルタントになるんですよね。
梅田:そうでした! Bパートでコンサル八奈見が誕生するんですよね。「何で略して言い直したのかよくわからないけど、その通りだ」ってツッコむんですけど、このあたりも2人のやり取りが板がついてきた感じがして面白かったです。
――意外とコンサル八奈見も活躍するんですけど、最後に、今後の見どころを教えてください。
梅田:第8話はツワブキ祭の導入であり、最後の生徒会メンバーの登場が、何より見どころだったと思います。このまま無事に文芸部の展示が終わればいいんですけど、さぁどうなるのか?というところで、第9話は楽しみにしてほしいです。顧問もヤバい先生に決まりましたので。
小鞠が部長として、仕事が大変と言うより、気持ちの面で背負ってしまう部分があるので、そこをどう考えているのか、温水くんがそれをどうやって助けてあげられるのかというところも見ていただけたらなと思います。
[文・塚越淳一]
作品概要
あらすじ
キャスト
(C)雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会