音楽
悠木碧の1年間を支えた妖精夜行で生まれる信愛の形【連載第3回】

四季を織り込んだ楽曲群で描く、妖精夜行の流麗で残酷な世界――ファンと歩んだ1年間は「こんなに幸せなことはあったでしょうか」|短期連載「はぐれ妖精の妖精夜行見聞録」第3回:悠木碧さんインタビュー【後編】

楽しい収穫祭! だけどみんなが食べているのは……

――お次に秋をイメージした『輪舞 ~Scarlet Harvest~』について伺いたいのですが、<おっきな鍋 赤いスープ>、<骨も肉も とろけるまで>など、歌詞の詳細を聞くのが怖いような……。

悠木:この曲は収穫祭でみんなが楽しくお祝いをしているイメージです。まぁ、なにを食べているのかは……ご想像にお任せですよね(笑)。もちろんほかの曲でもイキモノを食べているんですけど、「輪舞 ~Scarlet Harvest~」では言うことを聞かなかった妖精たちも食べられていて。そういう意味では、この収穫祭は制裁のような祭りでもあるんですね。

――「妖精夜行」のみなさんも……。

悠木:いえいえ、「妖精夜行」のみんなは勤勉ですから。おそらく、鍋は盛り上がらないんじゃないかなって思います(笑)。

――ちなみに、食べられてしまった妖精たちはどんな悪行を?

悠木:歌詞に書いてあることが全てで、<悪戯っ子も 怠け者も>が表現として最適解なんじゃないかなって(笑)。ちなみに、このお祭りは1年の総決算だから、食べられる妖精は1匹ではないんですよ。「1年間、どうだったかな? ダメだったらご飯にされちゃうよ?」みたいなイメージですね(笑)。

――しかし、歌詞に反して、曲調はすごく情熱的ですよね。

悠木:この季節は森全体がお祭りムードで、1年で一番盛り上がっています。だから曲自体は明るく仕上げていただきました。そこに儀式感のある歌詞を加えることで、お料理をしているのか、儀式をしているのかわからないような、全体的に中間のバランスをとった曲を目指しています。

儀式自体は、次の春に向けて森の再生を願うもので、今まで狩ってきたものをそこで食べるようなイメージですね。

――歌うにあたってはどんなイメージで?

悠木:森の中心にはこの季節に呼ばれる歌姫がいて、妖精たちはその子を囲みながら収穫祭を楽しんでいるようなイメージで歌っています。

――悠木さんはボーカルとして、その歌姫に扮しているのですね。

悠木:そうですね。その歌姫が持つ歌の力みたいなものも含めて、森への捧げ物になるので、オペラや劇のように歌い上げられたらとトライしています。聴いている人には、その収穫祭で踊っていたり、食べることに夢中になっている妖精さんたちをイメージしてもらいつつ、狂気的なまでに欲が渦巻いている風景を感じ取ってもらえたら良いなと思っています。

――後半の<ヤーホエ ヤーホエア>でより儀式感が増しているような印象を受けました。

悠木:良いですよね。このパートを聴いた瞬間、「やっぱり怪しい儀式じゃん!」って(笑)。<ヤムヤミー ヤムヤミーア>も、なにかを食べているんだろうけど、なんの料理かはわからない怖さがありますよね。

――食べさせられていたものが実は……みたいな怖い話を思い出しました。

悠木:実はお隣さんだった、みたいな。そういう可能性もなきにしもあらずですね(笑)。

――個人的に、<宝石汁>を「ビジュー」と読むことに驚きました。

悠木:美味しそうな肉汁と宝石をかけた造語ですね。ほかにもいろいろな造語があるんですけど、私もこれは特におしゃれだなと思いました。

――ほかにもお気に入りの造語はありますか?

悠木:何度か流れる<トゥ・ラ・タタン♪>は、意味合いがあるわけではないけど、聴いていて印象に残るフレーズだと思いました。きっとなにかの魔法の言葉なんでしょうね。ほかにも、<コトコト・ココット>なんかもかわいいですよね。グラタンを焼いているようなイメージで、音だけでも楽しめるフレーズなんじゃないかなって。

ほかの曲だと、『花宵キネオラマ』では<悪戯>と書いて「ヴェール」と読んだり、『レイニー レイニーエラー』だと<奇怪><奇形>を「エラー」と呼ぶのもおしゃれだなって。

最後の<Φ>(ファイ)も、本来は出るはずのない記号が出ていること自体がエラーなんですよね。特に意味はないからこそ、意味がない方が正しいっていうおしゃれな歌詞になっています。

妖精たちの“死”を描いた冬の歌

――『sleeping forest』は冬を感じさせつつ、春夏秋冬の締めらしい一曲になっていますね。

悠木:実は『sleeping forest』で妖精は全員眠りについているんですよね。そんな妖精たちへの子守唄であり、賛美歌のようなイメージで作りました。

そもそも、森にとっての冬は、眠りと死のタイミング。1年しか生きられないイキモノがここで種を落として死んでいって、森自体が閉じていくイメージです。だけど、妖精たちにとっての死は怖いものではありません。命の終わりは毎年繰り返していることなので、むしろ、彼らは温かい眠りと受け取っていて。

――そもそも死の認識に違いがあるのですね。

悠木:そうですね。冬を終えたら(表題曲の)『妖精夜行』のように新たな仲間を集めつつ、また温かな春がやってくるので、妖精たちにとっての死は悲しいものではないんです。だから歌詞は彼らが土に還るようなイメージになっています。

この曲を聴きながら「妖精夜行」のことを思い返してもらえたら嬉しいですね。

――制作にあたって、なにかオーダーなどは伝えたのでしょうか?

悠木:雪を踏む音や鉄の音が入っていると冬っぽいかなと思ったので、どこかに盛り込んでいただくようにお願いしました。全体的に雪の重みが伝わってくるけど、キラキラしていて、パウダースノーもちゃんと舞っているような空気感が音だけで表現されていて、非常に幻想的な曲になったと思います。

――歌詞にある<みむねに>のように、キリスト教を彷彿とさせるフレーズも散りばめられていますね。

悠木:そうなんですよ。作詞の磯谷佳江さんとお話したときの「賛美歌で“みむね”ってよく使われるけど、めちゃめちゃひらがなですよね」という会話を思い出しました(笑)。歌詞に関しては目でも楽しんでもらえるような配置や言葉選びになっているので、そこにもぜひ注目してほしいです。

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