『キングダム』騰(とう)とは? その能力から、おもしろさまでをご紹介! 「ファルファル」の正体や、史実の騰も調べてみました。
『キングダム』は、中国 戦国時代末期(紀元前245年頃から)を舞台にした、週刊ヤングジャンプ連載中の原泰久先生の漫画作品です。主人公は、中華統一をめざす秦(しん)王 嬴 政(えいせい)と、大将軍を目指す信(しん、李 信)。彼らを取り巻くたくさんのキャラクターたちも魅力的です。
多くのメディア展開もなされており、特にこの夏(2024.8〜)には、実写映画第4弾となる『キングダム 大将軍の帰還』が爆発的大ヒット。
この映画をきっかけに、『キングダム』の世界に足を踏み入られた方も多いのではないかと思います。
ここでは、騰(とう)の人物像と、「ファルファル」の正体をご紹介! 史実の騰の記録や形跡についても調べていこうと思います。
目次
『キングダム』騰とは
騰は『キングダム』において、王騎の副官です。
王騎というのは、政が王座につく前から秦で活躍している将軍で、誰もが一目おく人物。騰は、この王騎の側近として数多の戦場を共にしており、王騎からあつい信頼をおかれています。騰の方も、王騎への信頼と尊敬心は絶対的です。
とはいえ、緊張感のある縦の服従関係ではなく、お互いに冗談や意見を言えるような仲でもある絆の深い関係です。
王騎とのやりとりから見えてくる“騰のおもしろさ”
王騎というと、その圧倒的な迫力と強さなのですが、その一方で「ンフフフフ」「コッコッコッ」、さらに変なギャグと、掴みどころのないおもしろさもありますよね。
騰は、そんな王騎の副官を務めているわけですから、色々な意味で並の人物ではありません。
騰の『キングダム』初登場シーン、王騎との会話をご覧下さい。
王騎:騰はいますか?
騰:はっ お呼びでしょうか
王騎:あなた 右龍”へ行って様子を見てらっしゃい
騰:オーイ 誰か右龍に……
王騎:あなたに言っていますよ 騰
騰さん、シレっと仕事を部下におしつけようとしていませんか!? 王騎にこんなことを言える人物は、他にいないのではないでしょうか。
騰は、言葉数が少なくポーカーフェイスなので、一見何を考えているのかわかりにくいのですが、実は王騎に負けないおもしろさを持っていますよね。このおもしろさは、戦場の緊迫した場面でも変わらず。さすがは、あの王騎の副官です。
王騎とのやりとりから見えてくる“騰の優秀さ”
どんな状況でもおもしろさが発揮できるということは、場を和ませる力があるとも言えますが、別の言い方をすると、極限でも冷静さを失わない力があることになるでしょう。
物語のはじめの頃、王騎が引退中で政に仕えるかどうかをまだ決めていない時の会話をご覧いただきたいのですが、先に状況の説明を。
2人は「秦vs.魏(蛇甘平原(だかんへいげん)の戦い)」の戦いを丘の上から見下ろしています。そして、何かを思いついてニヤッとしている王騎と、お目めぱっちりで王騎をまっすぐ見る騰とのやりとりになります。
王騎:あちらの丘の方が見晴らしが良さそうですねェ そう思いませんか 騰?
騰:ハ! 間違いありません 殿
しかし殿 許可なく戦に加わるのは罪となります
残念ですが我々が足を踏み入れられるのはここまでです
王騎:誰も参戦するとは言ってませんよォ
私はただあの丘を登りたいと思っただけですよォ
途中邪魔なものは排除いたしますが
騰:さすが殿 完璧な言い訳です
王騎:んでわっ
(2人を先頭に手勢を率いて垂直な崖を「バッ」と下る)
「完璧な言い訳」って、騰さん?とツッコミたくなりますよね。ここも先と同じような2人のおもしろい会話として読まれることが多いかと思います。でも、ここ、実はよく読むと騰の能力がわかるシーンでもあるような気がするのです。
ここでわかる騰の能力を、2つに絞って挙げてみます。
能力第1は、王騎のやりたいことをこの会話だけで理解していることです。何も説明されていないのに理解できてしまう有能さ、もちろん2人の絆あってこそなのでしょうが、相手の考えをさっと理解できる能力は、うらやましい限りです。
能力第2は、戦況と地形を完全に把握していることです。広い視野での周囲の把握、客観的に戦況を見つめる冷静さ。武人としての高い能力の表れですよね。こちらの能力、王騎死後に前面に表れることとなり、騰は秦を代表する将軍となっていきます。
おまけとして付け加えておくと、王騎の死後の騰は、王騎軍第一軍長だった録嗚未(ろくおみ)相手に“おもしろ発言”を改めて開花させます。ポーカーフェイスな騰から発せられる謎発言に、録嗚未がツッコミを入れる場面も楽しいですよ。
ファルファルって?
騰という人物を語る上で、王騎と一緒にいるかどうかにかかわらず欠かせないのが、やはり「ファルファル」でしょう。
ファルファルという文言は、原作作品中にて、騰の戦闘シーンに登場するものです。往年のファンは、騰のことを“ファルファルおじさん”といった愛称で呼んだりもするのですが、このファルファルとは、いったい何なのでしょうか?
「ファルファル」は擬音か台詞か
ファンの間では、主に次の2とおりの解釈がなされているようです。
1つ目は剣を振り回すときの擬音、2つ目は騰が「ファルファル」言いながら戦っているというものです。たしかに、どちらとも解釈できるような気がします。
ちなみに、アニメ作品および実写映画ではともに、剣の動きを表す擬音として解釈されています。つまりは、俳優さんが台詞として「ファルファル」言うのではなく、戦場での効果音が入るのです。
アニメ放送時には「ファルファル来たー」、実写映画では「実写ファルファルが見られたー」などの、喜びと笑いの声が多く聞こえました。
「ファルファル」のルーツ
では、このファルファルとは、何を表した言葉なのでしょうか? 剣を振り回すときの擬音だとしても、他では見たことのない擬音だと思いませんか?
そこで、ファルファルのルーツについて調べてみました。
コミックス54巻と55巻の巻末に、『おまけマンガ「秘剣のナゾ」「ファルファル伝説」』という、原先生書き下ろしのページが付いているのですが、ここに騰の幼少期のエピソードが描かれています。ここが今のところ、ファルファルのルーツがわかる唯一の部分ではないでしょうか。
この『おまけマンガ』は、6歳の騰が剣術の師匠から奥義を教えられるという話なのですが、師匠いわく、奥義のキモは“螺旋(らせん)”とのこと。柄(つか)の握り方を特殊な型にすることにより、剣の旋回と剣先のわずかな回転を生み出すことができるというのです。
師匠:とにかく お前は螺旋を極め
お前はお前の最高のファルファルの音色を見つけるのだ
それがお前のファルファル道だ とにかく!
と、こんなわけで、騰はファルファルを身につけます。
原先生ご自身も、ファルファル、楽しんでいらっしゃいますよね!?と思わざるを得ない爆笑エピソードです。