感情とリンクする音楽、“好き”という尊い感情、キヅナツキ先生が紡ぐ言葉の力——『ギヴン』でしか得られない特別な体験を、あなたも。
キヅナツキ先生が紡ぐ“言葉の力”
原作者・キヅナツキ先生が描く画力の訴求力はもちろんのこと、巧みな言葉づかいにも『ギヴン』が人気を博している理由だと感じています。
私自身、言葉を扱うお仕事をしていますが、ここまで人の感情を繊細かつ正確に、そして情緒的に表現できるのは本当にすごいことだなと思っています。人の心を動かすフレーズばかりで、『ギヴン』を通して言葉の引き出しがたくさん増えました。
その中でも、特に好きな言葉として、第2巻より“秋彦のモノローグ”を紹介します。真冬へ向ける立夏の恋心に気づいた秋彦が、自身の経験を踏まえて考えを述べるセリフです。
誰かを、好きになるというのは
自分の一番皮膚の薄い柔らかい場所を差し出すことでしか成立しない
触れられれば簡単に熱にうかされ
少し爪を立てられれば簡単に皮膚は裂け
意志を持って握り潰せば致命傷
上ノ山の恋は音楽(バンド)ごとポシャるリスクを孕んだ爆弾だ
人を好きになるという感情を“皮膚”で表現する、この言葉選びのセンスと発想は衝撃的でした。
『ギヴン』の世界をさらに深く、魅力的なものにしているキヅナツキ先生の比喩表現。本作で紡がれる言葉たちは一体どこから引き出されているのか気になるほど、感銘を受けるものばかりです。
言葉や画力を通して、その場の匂いや温度・空気感までも感じ取れるのは、他の作品にはない『ギヴン』でしか得られない体験だと思っています。
また、givenとsyh、センチミリメンタルさんの楽曲も、心が動かされる言葉たちが盛りだくさんです。物語と併せて楽曲を聴くと、より一層登場人物たちの気持ちを深く感じられるのでぜひ歌詞にもご注目ください。
今だからこそ『ギヴン』の世界へ
『ギヴン』でしか得られない体験をテーマに、長く愛されている理由を紐解いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
人間の本質や成長、深い理解は、苦しみや困難を経験する中でこそ見出されるものだと、私は『ギヴン』を通して感じることができました。(少し哲学的になるかもしれませんが……)
それほど『ギヴン』には「BL」を超えた人間愛、より自由で多様な愛の形を感じられる要素が本作にたくさん詰まっています。特に、繊細な心理描写と、芸術的な言葉選びのセンスに魅了されるでしょう。
『ギヴン』を通して、音楽や言葉の力をより強く感じられるほか、ときに甘くときに切ない青春も体験できます。
共感するところもあれば、新たな視点と感情に出会えることもある『ギヴン』の世界に、ぜひ足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
[文/福室美綺]
作品情報
あらすじ
一方、メジャーデビューを決めた鹿島 柊と八木玄純のバンド「syh〈シー〉」。
一時的なサポートギターとして加入していた立夏は、柊から託されたある曲を完成させようとしていた。
そんな中、立夏のもとに真冬から「あいたい」と連絡がくる。
ただならない雰囲気を感じた立夏は真冬のもとに駆けつけるが、真冬の音楽を拒むような態度に気づいてしまう。
立夏への想い、音楽への想い。
さまざまな気持ちの前で戸惑い、立ち止まってしまう真冬。
そんな彼に声をかけたのは、世界的に活躍するヴァイオリニスト・村田雨月だった。
キャスト
(C)︎キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。好きな作品は『Free!』『NO.6』『十二国記』『ギヴン』『新世界より』など。好きな声優さんは保志総一朗さんと坂本真綾さん。ハッピーエンドよりも意義のあるトゥルーエンドや両片想いが大好物な関係性オタクで、主にイベントレポートやインタビューを担当しています。最近はVTuberがマイブーム。