10周年はみんなで一緒に『だかいち』の歴史を刻んでいく道の途中。西條高人役・高橋広樹さん&東谷准太役・小野友樹さんが語る作品への想い|『だかいち』10周年記念バスツアートークイベント終了後インタビュー
東谷准太と西條高人の2人の役者の魅力とは?
――ドラマCDから数えると約9年と、長い時間をかけて高人さんと准太さんを演じられていますが、それぞれのキャラクターとの向き合い方に変化が生じた瞬間を教えてください。
小野:それがまさに、先ほどの0章を経ての部分と繋がっていきますね。彼のバックボーンを知るまでは、あくまで僕の中で知らない時間を想像で埋めて演じていて。そこを実際に知ったことで、彼の過去の虚ろな部分があるからこそ、今の反動を含めた感情を演じるようになっているのかもしれません。
また、今回発売になるドラマCD『抱かれたい男1位に脅されています。9』は、念願の物語。かけがえないけど何気ない日常みたいな。恋人同士だと普通かもしれないことに、ついに彼らがたどり着いたんだなと、すごく感慨深い感覚があります。幸せ度というものを全部、今回の収録に込めさせていただきました。
高橋:僕がチュン太との向き合い方に変化を感じたのは、やっぱりスペイン編の少し前あたりかな? 高人はチュン太からの愛情を受け入れてはいるものの、どこか抵抗している節があって。それは彼の基本にあるプライドの部分が関係しているのかもしれませんが、自分の中での葛藤があったんです。
その葛藤が取り払われて、ちゃんと自分たちは恋人なんだ、自分はチュン太のことが心から好きなんだと認識した前後で、チュン太との会話の中で変化が生まれたような気がします。
「この発情天使が!」という言葉の意味合いも、ゆっくりスライドしていっています。最初は嫌悪感100%だったのが、だんだん愛情や許容値が増えていって、今は愛情が100%になっていると思います。なので、スペイン編の少し前をゼロ地点として、高人の心の許容具合が変化していったのではないかと考えていますね。
――高人さんたちの話の続きになりますが、改めて東谷准太・西條高人というふたりの役者の魅力は、どのように捉えていらっしゃいますか?
小野:いわゆる感情型か論理型かみたいな部分でお話をすると、チュン太の序盤の描写として、うまくシーンに持っていけず芝居が乗らないという時に、「何も考えずやってみろ」という高人さんのアドバイスで一気にガラッと変わった場面がありました。
僕はたまに専門学校で特別講師を務めさせていただいて、少しではありますが生徒さんのお芝居を見せていただき、アドバイスをさせてもらった後、再度お芝居をしてもらうことがあります。その時に、チュン太のようにガラッと変化するほどではないものの、ほんの一言でお芝居が変わる方も中にはいるんです。「すげえ!」と思うと同時に、チュン太に感じたのはその感覚でした。
また、チュン太として今お芝居がどう楽しいのかは、個人的に気になる部分ですね。既に実力がある上に、まだ発展途上というポテンシャルを秘めた部分を含めて、お酒は飲まないですが、彼とはいつか飲み交わしながら話してみたいと思うような役者さんです。
逆に高人さんはここまでストイックに積み上げてきていて、プライドを打ち砕かれてもまた立ち上がれる強さを深掘りしてみたいです。だけど、それは高人さんのプライドがあるので話してくれるのかは難しいところだとは思いますけど……お酒をガンガン入れれば……。
一同:(笑)
小野:もしかしたら話してくれる気がします(笑)。そのように、このふたりの役者については「すげえ奴ら」として見ています。
高橋:高人さんは一言で言えば「完成美」なんです。完成された美しさを持つ役者で、全てが完璧であり、身のこなしや台詞、間も全てがこれ以外ないというお芝居ができる人。
その背景には鈴子さんへの憧憬があったり、演技が上手くなることによって自分の存在価値が上がっていくんだという考えがあって。そうなると、どこか強迫観念のようなものも、もしかするとあるのかもしれません。そんな中で役者をやっている、すごくストイックなプライドの高い俳優さんなんだろうなという気がします。
そんな高人が良い意味で天然で演技のできる東谷准太という俳優に出会った時に生じる化学反応が、このふたりの関係の面白さだと思います。高人の完成された美しさと、東谷の未完成の美しさ。この対比がこのふたりの役者の特徴だと思います。