夏アニメ「先輩はおとこのこ」連載:早瀬 藍役・加隈亜衣さん×早乙女 純役・梶原岳人さん|好きっていう気持ちを育てるのも消すのも、その人自身の力でないと無理
「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門で3位、「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位を受賞したLINEマンガ連載のwebtoon作品『先輩はおとこのこ』。かわいいものが大好きな男の娘の花岡まこと、そして後輩の蒼井 咲、親友の大我竜二との人間模様や、それぞれが成長していく過程が丁寧に描かれる本作のテレビアニメが、2024年7月4日よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて毎週木曜24:55~より放送中。
アニメイトタイムズでは、アニメの放送を振り返る連載インタビューを実施! 今回は早瀬 藍役・加隈亜衣さんと早乙女 純役・梶原岳人さんに、第11話を振り返っていただきながら、お互いが演じるキャラクターへの印象をお聞きしました。
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早瀬ちゃんは、相手の気持ちを考えられるからこそ立ち止まってしまった
――第11話では修学旅行での思い出が描かれていました。まことと早瀬がもう一度友達になれたり、早乙女の想いが早瀬に届いたりと、ハッピーなことも多かった気がします。
早乙女 純役・梶原岳人さん(以下:梶原):個人的に修学旅行に思い入れがすごくあるんですよ。というのも、僕が通っていた中学校では修学旅行がなくて。
早瀬 藍役・加隈亜衣さん(以下、加隈):えー、そうだったんだ!
梶原:はい。それもあって、高校で修学旅行へ行けたことが、すごく思い出に残っているんです。自分たちが住んでいる場所じゃない土地へ行って、班行動をして、普段喋らない人とか気になっている人と喋ることもできる。そんな修学旅行のリアルさが第11話には詰まっている気がしましたし、演じているときには、当時のワクワクを思い出しました。
早乙女的には早瀬ちゃんとの仲が深まって何よりでしたし、まさか告白までするとは……。甘酸っぱいなと思いながら収録していました。
加隈:確かコミックス7巻の巻末コメントでぽむ先生が、「早瀬ちゃんは掘り下げる予定はなかったけど、りゅーじのように選択ができない子もいるよなぁ」と思って描くことにしたとおっしゃってたんです。そのコメントも含めて原作を読んでいるときから、早瀬ちゃんは内に秘めちゃう子なんだろうなと感じていました。
早瀬ちゃんって、女の子の格好をするまことに引いたのではなく、まこととすれ違ってしまったのは彼女がよく言っている「私なんかが……」っていう気持ちが原因だったんじゃないかなと思いました。勇気が持てなくて、上手く仲良くできなかっただけなんじゃないかな。
――早瀬としてはまことに引け目があったというか、過去の出来事を後悔して、ずっと引きずっているのかもしれないですね。
加隈:そうですね。原作で早瀬ちゃんのモノローグがメインで描かれる回があるんです。そこには、一緒のクラスになったけれど、喋りかけるきっかけが掴めないままでモヤモヤしている彼女の気持ちが描かれていました。早瀬ちゃんはまことを嫌いになってないからこそ、悩んじゃったんですよね。きっと何度も「あのとき、どう言えばよかったのかな」と繰り返しながら過ごしてきたんじゃないかな。
そういう彼女のことを思うと切なくも、いじらしくもありますし、彼女なりの優しさが見え隠れしているなとも感じました。そんな早瀬ちゃんが修学旅行で再びまことと向き合えて、友達になれたあの瞬間は、とっても素敵でした。しかも、早乙女くんにひとめぼれしてもらい、告白までされちゃって! 彼女にとって、嬉しい出来事が盛りだくさんなエピソードでした。
――今回はお二人にお話を聞けるタイミングをいただけましたので、せっかくならお互いが演じるキャラクターの印象をお話いただければと思います。
梶原:早瀬ちゃんは、相手の気持ちを考えられるからこそ立ち止まってしまった優しい子だと思います。僕は喋るのも人間関係の構築も得意なほうじゃないのですが、でも絶対に仲良くしたいという人がいて。そういう人たちとの繋がりを持ち続けたい、仲良くありたいという気持ちがあるけれど、なかなか踏み出せないことがあるんです。だから、言いたいことがあるのに上手く一歩を踏み出せなかった早瀬ちゃんに、共感できる部分がありました。
加隈:早乙女くんは絶対にいい人! まことや竜二との会話でポロっと出る言葉にトゲがないですし、素直に思ったことを言っているけれど、誰も傷つけず、むしろ相手を受け入れている言葉が多いという印象があります。自分のなかで気持ちを溜めこまずに、周りに協力を仰いですぐに行動を起こすタイプでもありますよね。迷わず周りに頼れるのも、彼のいいところじゃないかな。一緒にいたら楽しいだろうし、幸せな気持ちにもなれそうです。
まことの好きを貫き通す姿はカッコいいです
――ここまでまこと・咲・竜二たちの物語を中心に描かれてきた本作。それぞれのキャラクターへの印象をお聞かせください。まずはまことから。
梶原:学生時代、まこととはベクトルが違いましたが、僕も「自分は人とちょっと違うかもしれないな」と悩むことがあったんです。高校生の頃に転校をしたのですが、最初に通っていた学校で全然馴染めず、周りに対して壁を作っていたんです。「なんでみんな僕のこの感覚を分かってくれないんだろう」って、すごくモヤモヤしていました。
それを親に相談しても、なかなか上手くは伝わらず、次第に学校に行きづらいなと思うようになってしまって。学校を休むと親が心配してくれましたし、当時、うちの母親は僕のことで悩んで、泣いていました。だから個人的にはまことも、まことのお母さんの気持ちも分かるというか。自分自身が経験したことがあったので、こういうことってあるんだよなと思いながら物語を読んでいました。
――まことが抱えている悩み自体に共感できる人は、少なくないと思います。私も学生時代は「自分らしさ」「普通」について考える時期がありました。
梶原:まことは、そういう悩みを持つ方が共感できるという意味で寄り添ってくれて、「自分らしくいてもいいんだ」と気づかせてくれるキャラクターでもあると思います。簡単ではない問題を抱えている分、より心に伝わってくるものがありました。
加隈:まことって、自分の好きを貫くために、あえて学校でセーラー服を着ていると思うんです。周りに何を言われようがああやって振舞えるのは、強いですよね。誰かを傷つけるかもしれないと、あえて周りとの壁を作りながらも好きを貫き通す姿はカッコいいです。一方で、自分の好きを否定しているお母さんの前では、それを貫かない。それはお母さんのことが大事で、失いたくないからだと思うんです。
――貫くと決めたことはとことん貫くけれど、周りに気を遣えるということですね。
加隈:そうなんだと思います。好きを貫き通すという頑固さと、大事な人の前ではそれを自制する、私にはないバランス感覚を持っている子だなと感じました。
あとは、かわいいものを見たら素直にかわいいと感動するじゃないですか。あの姿を見て、いつも「そんなお前がかわいいよ」と思っています。かわいい恰好をしてくれて、むしろありがとうと感謝したいくらい。守ってあげたい(笑)。自分がまことと友達だったら「この服も着てみてくれないかな!?」ってお願いしちゃうかもしれないですね。かわいいことを一緒に共有したいです!