音楽
音楽朗読劇『モノクロームのシンデレラ』レポート&メールインタビュー

中田裕二さんの楽曲が“僕”の自分探しを彩る――濱野大輝さんらが出演する音楽朗読劇『モノクロームのシンデレラ』レポート&メールインタビュー|アフタートークでは演奏&芝居に大興奮!?

シンガーソングライター・中田裕二さんの楽曲からインスパイアされたオリジナルストーリーを、濱野大輝さんらキャスト陣が声で紡ぎ出す音楽朗読劇『モノクロームのシンデレラ』。

2024年9月7日(土)、中田さん自身の演奏を絡めた、類を見ない音楽朗読劇が“1日限り”で上演されました。

本稿では、主人公・“僕”の不思議な出会いと成長の物語を、中田さんが全10曲の生演奏で彩った公演のレポート、中田さん、濱野さんによる終演後のメールインタビューをお届けします。

全10曲の中田裕二楽曲が“僕”の自分探しを彩る

音楽朗読劇という前代未聞のステージ『モノクロームのシンデレラ』。中田さん、濱野さんは事前のインタビューで、“どう受け入れられるのか気になっている”と語っていましたが、それは観客も同じ気持ちなのか、どこか緊迫した空気が会場内に流れていました。

静寂に包まれる会場に声を落とし込んだのは濱野さん演じる“僕”。彼のもとに現れた“彼女”との時間は幻だったのかもしれないけど、それでもそこにあった“何か”は僕の胸に刻まれていることを独白すると、ステージ中央の中田さんが奏でるギターと歌声が高らかに響き渡り、1曲目「シンデレラ」が物語の幕を開けます。

<あなたが見たその夢>のように物語を示唆する歌詞の数々はこの朗読劇との親和性の高さを感じさせます。まだまだ劇は始まったばかりですが、劇を終えたあと、もう一度聴き返してほしいと思える一曲でした。

劇中、ステージ中央で楽器に囲まれた中田さんは歌唱だけでなく、効果音やBGMの演奏も担っていました。そのおかげで曲と劇がシームレスに交差し、“僕”と社長の会話中にラジオを点けたら「STONEFLOWER」のアレンジバージョンが演奏されるという粋な演出も。中田さんファンはもちろん、純粋な朗読劇ファンにも響くであろう仕組みが散りばめられていました。

曲を終えると、僕の語りで再び朗読劇が始まります。小さな出版社で働く“僕”は、学生時代から特にやりたいことがあったわけでも、何者になりたいのかハッキリしていたわけでもない普通の人間。自らの生い立ちを自慢げとも、卑屈とも言えないフラットな声で濱野さんが読み上げていきます。

それなりに忙しい日々を送っていた“僕”は、ある日、社長から本を図書館に返してきてほしいとお願いされると、舞台は深夜の図書館に移ります。

ここでギターの優しい音色が響き渡り、「月の憂い」がスタート。どこか夜に輝く月を想像させる一曲が会場のムードを作り上げる中、“僕”は深夜の図書館でひとりの女性を見付けたのです。

「輪郭のないもの」が“僕”の不思議な出会いを象徴するように流れると、時は移ろい翌日に。あの図書館で特に何かがあったわけでも、会話をしたわけでもありません。それでも“僕”の頭には“彼女”の姿が焼き付いています。そこで“僕”は、思い立ったかのように「“彼女”にまた会いたい」と動き出すのです。

まるで重力から開放されたように図書館に向かう僕の背中を押す「グラビティ」。中田さんのリードによって、客席からは手拍子が。緊張の糸がほどけたように会場の雰囲気が一段と柔らかくなりました。

舞台は再び図書館へ。特に手がかりがあるわけでもない状況で、“僕”は新宿の歴史が記された本を手にします。しかし、なにやら異変を感じた“僕”は、気付いたら夜の西新宿の街にいたのです。それでも図書館に本を返しに行こうとする“僕”。そこに「そんなに急いでどこに行くの?」と声をかけたのは“彼女”でした。

やっとの再会でありながらも冷静に“彼女”と会話する“僕”、そして初めて会ったはずなのに“僕”に話しかけた“彼女”。関係性だけ見れば不思議ですが、どこか夢見心地の会話劇が繰り広げられていきます。しかし、突如として“彼女”は「あなたを待っていたら、私はどこにも行けなくなってしまうわ」と笑いだし、西新宿の街に消えるのでした。

「Little Changes」の演奏で次の場面が幕を開けます。目が覚めた“僕”は、図書館の机にいました。結局、“彼女”との出会いは夢だったのか。しかし、夢だったはずなのに夢ではない気がする“僕”は、居ても立っても居られなくなり、再び“彼女”を探しに行くことに。

「夜の行方」がドラマチックな雰囲気を演出すると、やはりというべきか、“彼女”と再会する“僕”。しかし、今度は夢ではなく本当の再会。何を話そうか悩んだ“僕”でしたが、手にしていた本のおかげか、それとも運命なのか、“彼女”から「散歩は好き?」「散歩、しましょう」と声を掛けられるのです。

“僕”は少し驚きながらも“彼女”に着いていきます。そこで切り出した言葉は「君は一体誰なんだ」。これに“彼女”は「私は私よ」と答えますが、本当の答えなど期待はしていなかったのか、“僕”も深く追求することはなく、ただ“彼女”との満ち足りた時間を楽しんでいました。

「分身」が響き、また夢が覚めるのではないかと思ったのは“僕”も観客も同じはず。しかし、今回はどうやらそうではなかったようです。“彼女”が“僕”の自宅に押しかけ、他愛もない会話とともに、満ち足りた時間を過ごす“僕”。「やっぱり君は天使じゃないのかな」と“彼女”に言葉をかけた7時23分、“僕”は眠りにつくのでした。

君の声を、君の姿を確かめて目覚めたかった“僕”。フレーズひとつひとつが僕の心情とリンクする「そのぬくもりの中で」の優しい音色が会場を包み込むと、物語は終局へ。

あれから数年、やはり“彼女”はいなくなっていました。“僕”の手元に残ったのは“彼女”が残した真っ白な本。それは“彼女”が残した靴ではないかと考えますが、本当は“僕”自身の靴だったのです。それとともに、この白紙の本に何かが描かれたとき、“僕”は何者かになることができ、いつか“彼女”と再会することができるのではないかと一縷の望みを胸に刻むのでした。

EDを飾るのは「マテリアル」。大事なものを失い、いつか訪れるかもしれない“彼女”との再会を胸に、前を向こうとする“僕”の成長がこの曲にすべて詰まっていたと気付かされるフレーズの数々。“僕”の自分探しとも言えるこの物語の最後に相応しい一曲でした。

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