『ちびゴジラの逆襲』ちびゴジラ役・福山潤さんインタビュー｜恐怖の存在×みんなのアイドル＝シュールなコメディ!?　ひとつひとつのセリフに込められたエネルギーは“放射熱線”クラス

「できれば1話たりともスベりたくありません（笑）」

ーーこれまでの放送回の中で、お気に入りのエピソードを教えてください。

福山：幾つかありますが、「ちびミニラはしっかり者」（15話）は演じていて面白かったです。それから、ちびゴジラが頭の中でゴジラを数える「ゴジラが一匹」（36話）は特に好きですね。現場で監督から「リズムゲームのつもりで」と言われるまで、所謂リズムネタだということに気付かなかったんです。あと、「謎の声」を山寺宏一さんが担当しているのですが、実際にやってみて「本当にこれだけなんだ!?」と驚きました。山寺さんクラスの方がああいうことをするのはズルいなと（笑）。色々な要素が入っていて、観ていても楽しかったです。

ーー個性的な新キャラクターも続々と登場しています。福山さんから見たちびガバラ（CV：木村良平）、ちびチタノ（CV：木村昴）の印象もお聞かせください。

福山：ちびチタノはヤンキーっぽいですが本性は違いますし、ちびガバラも一見ファミレスの店員っぽいけれど、全然ちゃんとしていなくて。それぞれのキャラクターへの配役を見ていくと、「本当に分かっているなあ」と感じます。

ーーちびガイガン（CV：宮野真守）についてはいかがでしょう？

福山：ちびガイガンは両手が鎌なので、デザイン的に好きという方も多いんじゃないでしょうか。一応悪役として登場しますが、話してみるとそれほど悪くないという（笑）。

ーーちびガイガンは、怪獣島を滅ぼしに来たとは思えないキャラクターですよね。

福山：たぶん仲間に入れてほしいんじゃないでしょうか。悪いことをする人はだいたい寂しい人が多いので、そこを切り取ったのかも（笑）。

ーー新キャラクターを演じるキャスト陣についてはどう思われましたか？

福山：木村（良平）→木村（昴）ときて、3人目の木村がくるかなと思っていたら宮野（真守）だったので、「もう木村はいなかったのかな？」と（笑）。

昴くんは『ドラえもん』のジャイアンから出発して、本人も様々な番組に出演して、今では『おはスタ』では“スバにぃ”と慕われていますよね。見た目は怖いけど実は良い人というのが説明しなくても伝わりますし、ちびチタノにすんなりハマっていると思います。良平に関しても、人を食ったようなところと爽やかさが両方あるので、ちびガバラ役にこれまたハマっていて。

この作品のキャストは、ただ人気で集められたのではなく、みんなコメディや笑いが好きな人たちだと思います。方法論を各々が持っているので、どのキャラクターも納得のキャスティングです。

その中でも一番驚いたのは、ちびガイガンを宮野が演じることでした。「こんな感じでやるのかな？」という想像をハズさずに、その枠を超えたこともやっていて。必ず余白を作りながら、みんなの期待にも応えているので違和感がないんですよね。

ちびガイガンは「悪ぶっているけど悪者ではない」というキャラクターですが、宮野はずっとヒーローをやっているからか、デザインと相まってどこか正義っぽさを感じます。色々な要素が詰まっている中で、ちゃんと成立させるのは流石だと思いました。

ーーキャスト陣がそれぞれの強みを活かして演じているからこそ、よりキャラクターが引き立つと。

福山：ただ、彼らもそうかもしれませんが、僕はスベると引きずるタイプなんですよ（笑）。こういったコメディ作品で「こうしたかったけど無理だったか……」と思った場合、オンエアで「スタッフさんたちに助けられた」と確信できるまでは、ずっと引きずったままです。そして、次の収録でのリベンジを心に誓います。できれば1話たりともスベりたくありません（笑）。

大本のキャラクターが与える、作品の彩りとバリエーション

ーー演じるちびゴジラ以外でお気に入りのキャラクターを教えてください。

福山：小美人（CV：上田麗奈＆鬼頭明里）は好きですね。恐らく一番社会風刺が入っているキャラクターだと思います。怪獣たちにやらせるには劇薬すぎるポジションかもしれませんが、モスラの巫女であるふたりが毒を吐くというのは、オリジナルをご存じの方にとっては面白く映るし、お子さんたちにとっても毒に感じないというか。それをユニゾンでしゃべっているので、面白いキャラクターだと思います。怪獣の中なら、ヘドさん（ちびヘドラ、CV.立木文彦）が好きです。ゴミ拾いをしているシーンからも分かる通り、最早ただの常識人なので（笑）。

ーーちびアンギラスの声がずっと「？」になっているのも気になります。

福山：恐らく元のアンギラスの声を使っているんじゃないでしょうか。ちびアンギラスは、「大人になり声変わりすると、怪獣の鳴き声になる」という設定の唯一の体現者です。ちびゴジラも風邪をひくとそうなりますが、治ると元に戻ります。ちびアンギラスがいてくれるおかげで、別のコントの切り口もできるんですよね。登場回数はそれほど多くないものの、重要なキャラクターだと思います。

ーー各キャラクターが個性的だからこそ、ちびゴジラとの組み合わせで様々なエピソードができますよね。

福山：そうですね。ちびモスラ（CV：高橋李依）であれば、オタクネタや乙女チックなネタができますし、小美人もいることで女子ならではのグチや感じ方も描かれています。ちびメカゴジラで言うとツッコミはもちろん、元々持っているギミックを活かしたボケや機械ネタもできるし、本当にバリエーション豊かです。不思議な話ではありますが、元々のキャラクターたちの印象が作品の彩りであり、強みにもなっているんじゃないかなと。

ーーこれまでの『ゴジラ』シリーズを知っている身からすると、各怪獣の性格付けには意外なものが多いという印象です。

福山：意外じゃないのはちびミニラくらいですよね（笑）。ちびミニラがアニメに初登場した時、「あっ、そういう立ち位置なんだ」と。僕らは監督の手のひらの上で転がされている感じです。

ーー40話の「襲来！ロボット怪獣」では、ちびガイガンが怪獣島を滅ぼして、ロボットが支配する島に作り替えること、ちびメカゴジラもその目的で送られてきたという重要な事実が明らかになりました。

福山：物語の中で「人間たち」という表現もあったので、怪獣を滅ぼそうとする勢力がいるんだと思います。詳しく描かれるのかどうかは分かりませんが、外敵がいたほうが面白くなるので、今後も怪獣島をガンガン攻めに来ていただきたいです。

ーー改めてキャスト陣を見たら、主役級を演じるキャストさんばかりで、3分アニメとは思えない豪華さです。

福山：豪華なのかどうかは分かりませんが、瞬発力の勝負には長けている人ばかりですよね。ショートアニメはユルさによって面白さを出すやり方もありますが、この作品はみんな「よーいドン！」という合図に合わせて、MAXスピードで走り始めるんです。そうなると、第一線で活躍している人たちでキャストチームを組んでいくことは、ある種の必須条件なのかもしれません。

プレスコ方式である以上、絵の力を借りないで、パワーを作らなければいけないとなったら名前が挙がるのはこういう人たちなんでしょうね。結果的には、ライトスタッフ（適正な資質や適性）でキャストが組まれている気がします。収録も毎回楽しいですが、万が一噛み合わないと地獄しか待っていないですから気は抜けません（笑）。

ーー最後に、本作をご覧になっている方、まだご覧になったことがない方それぞれへのメッセージをお願いします。

福山：既にご覧になっている方は、ちびゴジラをご存じだと思いますが、街を歩いている時にキャラクターを見て「何だろう？」と気になった方、この記事で興味を持たれた方は、毎週の放送やYouTubeでまずは一度観てみてください。勉強や作業している時の息抜きにも丁度良いかもしれません。忙しい朝に歯を磨きながらでも観られます（笑）。最初はながらで観ていてもそのうち、「この3分だけは集中して観よう」と思うはずです。

40話近く放送されていますが、まだご覧になっていない方や既に視聴中の方も一度全話通してご覧になっていただけると嬉しいです。きっと疲れると思います（笑）。

ーー（笑）。むしろ観終わった後は口角が緩んで、元気になれるのではないでしょうか。

福山：そんな方もいらっしゃると思いますが、軽い倦怠感は残るはずです。そんな部分も含めて楽しんでください！

[取材・文／永井和幸]