ついに完結!『呪術廻戦』とは一体、何だったのか……? 僕達の青春を彩った『呪術』が与えてくれたものとは……? 徹底感想会【めざせ! トレンドマスター!】
日夜多くのコンテンツが生み出されていく昨今。異なる界隈で同時多発的に様々なコンテンツ、ミームがバズり、トレンドは常に変わり続けています。
「そんな世の中で、今流行っているモノに敏感でありたい」——
本企画は、現在インターネット等を中心にブームになっている、アニメ・漫画・ゲームなどのワード、コンテンツを調査し、理解することによってみんなで流行に乗っかっちゃおうという試みです!
今回は、9月30日に6年半もの連載に幕を閉じた芥見下々先生による人気漫画『呪術廻戦』について。原作コミックスはもちろん、TVアニメ、劇場版作品が全世界でヒットした週刊少年ジャンプのいわゆる看板作品です。
本稿では、漫画・アニメ・特撮・映画……などなど幅広いエンタメコンテンツを愛するアニメイトタイムズ編集者・小川を召喚し『呪術廻戦』が描いてきた物語を振り返りながら、本作が一体どんな作品だったのかを座談会形式で、勝手にレビュー!
作品が私達に与えてくれたものは何だったのでしょうか?
※本稿には物語の重大なネタバレが含まれます。また、個人的な解釈や感想でありオフィシャルなものではありません。
目次
本稿で喋る人
・ライター・タイラ
生活や暮らしなど人間の営みを描いた作品が好き。『呪術廻戦』はTVアニメから入った。
・アニメイトタイムズ編集部員・小川
家でずっと映画やアニメ、漫画などのコンテンツを見ていた人。色々あって社会へ。『呪術廻戦』はジャンプGIGA掲載の『東京都立呪術高等専門学校』から読んでいた。
『呪術廻戦』との邂逅
タイラ:僕は『呪術廻戦』のTVアニメから先に触れました。かなり話題だったので「流石に触れておかなければ……!」と思って配信で視聴しましたね。
その後、映画『呪術廻戦0』が公開されて、池袋の映画館に見に行ったんです。それがとんでもないくらい面白かった。「乙骨憂太かっけ〜……」と(笑)。原作では彼も登場するはずだと思い、すぐに書店へ向かって既刊をすべて買いました。「週刊少年ジャンプ」から少し離れていたんですけど、居ても立っても居られなくなってしまって。
小川:私は新人の作家さんの読み切りなどが掲載されている「ジャンプGIGA」で、『呪術廻戦』の元になった作品『東京都立呪術高等専門学校』を読んで衝撃を受けました。「ジャンプGIGA」はどの作品も熱量があって面白いんですけど、『東京都立呪術高等専門学校』は独特の凄みがあって、当時の読者の間でも話題になっていましたよ。
タイラ:『東京都立呪術高等専門学校』はまさに『呪術廻戦0』の原作ですもんね。こんな面白いものを最初から描くなんて……!と思っていましたが、リアルタイムでも盛り上がっていたのか。
小川:そうですね。その後、ジャンプで連載が決まるんですけど、読み切りが連載になる時って、"読み切りの設定を踏襲しつつ新しいお話をやる"のが一般的だと思うんです。でも『呪術廻戦』で知っているキャラクターが登場したので「お前らいるんだ!」と驚きました。
『東京都立呪術高等専門学校』から地続きのお話だったのも、それだけ読み切りの時点でパワーがあったということなんじゃないかなと。連載が始まってからも凄かった。
「呪胎戴天」「幼魚と逆罰」なと序盤から物語がどんどん展開し、芥見先生らしい言葉選びや死生観が飛び出して、最初からインパクトが凄い。とにかく序盤で一気に読者の心を掴もうとする気概がありました。有名な作品たちと紙面上で競わなければいけないという側面もあるので、週刊連載だからこその気合だったのかもしれません。
『呪術廻戦』のココが凄い!
小川:本作は私達が触れてきた90年代後半〜の作品たちの影響を感じますよね。『エヴァンゲリオン』であったり、『HUNTER×HUNTER』『NARUTO』『BLEACH』のような子供の頃から好きだったジャンプの系譜を感じます。術式、領域展開、逕庭拳、黒閃……みたいなワクワクするワードも沢山出てきます。ジャンプ作品らしいかっこよさがあります。
タイラ:僕はジャンプから離れていたからか、逆に「ジャンプっぽくないな……!」という驚きが強かったですね。友情・努力・勝利みたいなイメージが無意識にあって、『呪術廻戦』の最初の印象が孤独・才能・惨殺……みたいな感じだったので(笑)。一方で、それぞれが個性的な能力を持っていて、それを元に戦うみたいな馴染みがある要素も多くて確かにかっこよかったです。
小川:いわゆる、王道みたいなものは移り変わるものだと思います。空虚に感じてしまう虎杖の精神性や、最強の五条悟という存在に対する安心感と軽い絶望があって、それより弱い僕ってなんだろう?みたいな。キャラクターがあっさりと命を落としてしまうなど、『僕のヒーローアカデミア』の中盤以降、『鬼滅の刃』など、今のジャンプっぽさ、今の王道みたいなものがあるのかもしれません。でも私は「ジャンプやってるな〜!」とテンションあがっていたタイプですけど。
タイラ:なるほど。原作を読み進めてみると最初は呪霊たちに惹かれましたね。人間の黒い部分が具体化したような彼らの存在、呪いとして気高く生きている彼らの言動に哲学的なものや仏教的な価値観を感じておもしろい、みたいな。
また、『呪術廻戦』の凄いところって読んでいて「芥見先生絶対ノリノリで描いてるじゃん!」って思ってしまうところかなと。禪院真希の相撲のシーンもそうだし、五条先生の物理チックな術式だったり、パチンコをモチーフにした秤金次の領域「坐殺博徒」、日車寛見の裁判とか(笑)。
先生が現実世界の興味があることを徹底的に取材して、能力に落とし込んでいるというか。調べるのも、設定を考えるのも楽しいんだろうな〜と勝手に思っていました。
小川:あと、東堂の全てとかね(笑)。
タイラ:東堂葵の「不義遊戯」とか、思いついた時点で芥見先生の勝ち(笑)。直接的に攻撃する能力じゃないけど、強いやつが使ったら滅茶苦茶強くてかっこいいって、読者は大好きだから。『呪術廻戦』で最も好きなのは髙羽史彦vs羂索戦かな〜。読んでいるこっちまで楽しくなってきて、なぜかラストで泣いてしまう。
小川:大事なラスボス級のキャラの最期をあんな『ボボボーボ・ボーボボ』みたいなテイストでやるんだという。本作は、終盤になってもなにこれ!? と思っちゃう展開が沢山あって、やっぱり芥見先生って天才なんだ……と思わされました。
タイラ:まさか、乙骨が五条の体を乗っ取るという。読んでて宿儺と同じ反応したもん。乙骨お前そこまでやるか……! と(笑)。しかも、ちゃんと乙骨は無事だったし。
小川:あんなに東堂が大暴れした後に、狂気の展開が用意されていて、痺れました。五条が死んだ後の方がヒートアップしていって、虎杖の領域展開でまた1つ作品としてのギアがあがっていましたね。