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『ダンダダン』監督・山代風我インタビュー

サイエンスSARUの総力を結集した〈Unidentified Mysterious Animation〉!『ダンダダン』山代風我監督インタビュー|原作のパワーと飽くなき表現欲が生み出す圧倒的な密度。龍幸伸先生の“魂”を再現した映像演出ができるまで

「少年ジャンプ+」にて連載中、龍幸伸先生による人気漫画『ダンダダン』。

霊媒師家系の女子高生・モモ<綾瀬桃>(CV:若山詩音)とオカルト好きな少年・オカルン<高倉健>(CV:花江夏樹)が、宇宙人や妖怪と戦いながら関係性を変化させていく、オカルト・バトル・ラブコメなどの要素が奇跡のバランスで融合したダイナミックな作品です。

本作のTVアニメが2024年10月3日(木)より放送開始! 龍先生の圧倒的な画力と、物語の勢いがアニメーションでどのように表現されるのか。放送前から国内外で大きな注目を集めています。

そんな『ダンダダン』の指揮をとるのは、サイエンスSARUが制作する様々な作品の演出、副監督を担当してきた山代風我監督。

山代監督のお話から見えてきたのは、こだわりが詰まった本作の真の姿。そして、監督自身の際限ない表現への欲求でした。

龍先生による原作、サイエンスSARU、山代監督の個性とパワーが集結した「UMA(Unidentified Mysterious Animation/未確認アニメ)」の制作秘話をお楽しみください!

 

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霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモ<綾瀬桃>と、同級生でオカルトマニアのオカルン<高倉健>。モモがクラスのいじめっ子からオカルンを助けたことをきっかけに話すようになった2人だったが、「幽霊は信じているが宇宙人否定派」のモモと、「宇宙人は信じているが幽霊否定派」のオカルンで口論に。互いに否定する宇宙人と幽霊を信じさせるため、モモはUFOスポットの病院廃墟へ、オカルンは心霊スポットのトンネルへ。そこで2人は、理解を超越した圧倒的怪奇に出会う。窮地の中で秘めた力を覚醒させるモモと、呪いの力を手にしたオカルンが、迫りくる怪奇に挑む!運命の恋も始まる!?オカルティックバトル&青春物語、開幕!作品名ダンダダン放送形態TVアニメスケジュール2024年10月3日(木)〜MBS/TBS系28局「スーパーアニメイズムTURBO」枠にてキャストモモ<綾瀬桃>:若山詩音オカルン<高倉健>:花江夏樹星子:水樹奈々アイラ<白鳥愛羅>:佐倉綾音ジジ<円城寺仁>:石川界人ターボババア:田中真弓セルポ星人:中井和哉フラットウッズモンスター:大友龍三郎アクロバティックさらさら:井上喜久子ドーバーデーモン:関智一太郎:杉田智和花:平野文スタッフ原作:龍幸伸(集英社「少...

 

原作が持つ“読後感”をアニメで再現したい

──元々『ダンダダン』の原作はお読みになっていましたか?

監督・山代風我さん(以下、山代):実は、あまり漫画を読まないんです。社会人になってから8年ほどになりますが、サイエンスSARUでアニメーション制作を担当した『映像研には手を出すな!』と『ダンダダン』の2作品しか読んでいないかもしれません。

というのも、仕事を始めると際限なくのめり込んでしまうので、余裕がなくなってしまう。映像を流しながら作業をすることはありますが、就職してからは、あまり漫画を読めていないと思います。インプットの機会を失っていてよくないのですが、だからこそ新鮮に楽しめることもあると思っていて、『ダンダダン』も第一印象からガツンと来ました。その時感じた感覚を16:9の画面上でしっかり再現できるように努めました。

──本作の監督になった経緯についてもお聞かせください。

山代:『四畳半タイムマシンブルース』の副監督をしていたのですが、その作業が終わったタイミングで、「『ダンダダン』の監督、どうですか?」と聞かれて。「そんなのやるに決まっているじゃないですか」と(笑)。

──(笑)。「決まっている」ですか。

 

 
山代:お話をいただいたら基本的になんでも全部やるというスタンスです。

──本作は、初監督作品でもありますね。

山代:それに関しては、嬉しい気持ちも、怖い気持ちもありますが、チャンスが回ってきたことは素直に嬉しいです。悩みながらも、とりあえず進むしかないなと。なんというか……自分が2人いるような感覚でした。「やってしまえ!」「やめとけ!」と交互に言われているような……(笑)。

──原作をお読みになって「第一印象からガツンときた」と仰っていましたが、どんなところに惹かれたのでしょう?

山代:スタイリッシュなアクションとドタバタなラブコメ、両方の柱がしっかり立っている作品は珍しいように思いました。他にも多くのジャンルが混在していて、それらを行き来するスピード感も速くて心地良いですし、色々なところにギャップが生まれている作品だと思います。

さらに、龍先生の好きなものが詰め込まれていて、ゴチャ混ぜな楽しさがありつつ、良いバランスになっています。色々なものがミックスされた結果、全ての要素がうまい具合に活き活きとしていますよね。過去に絵コンテ・演出を担当させていただいた『映像研には手を出すな!』にも通じるものがあるなと。どちらの作品もキャラクターが楽しそうで、簡単にやってのけてしまう抜け感など、そういった共通している部分があったので、なんとか手がけることができた感じです。

──本作は、オカルトがテーマになっていますが、監督自身も詳しかったりしますか?

山代:私自身は全くです(笑)。小ネタを沢山取り入れるために、かなり調べながら作っていました。作中に登場するアクロバティックさらさら(アクさら)も、実際にネットで有名なオカルトだと知って驚きました。アクさらは左手に自傷痕があるようで、そういった部分も、ドラマを邪魔しない程度に小ネタとして入れ込んだりしています。

オカルトを通っていない身ではありますが、とても面白いジャンルですし、アニメ化するうえでも、可能な限り元ネタを調べて、要素を取り入れることを心がけました。フラットウッズモンスターも、原作の雰囲気と怪異自体の特性(ガスを吐いたり、浮いたり)をできる限り映像に組み込んでいます。

──周辺知識を入念にリサーチしつつ、演出を作り上げていったと。

山代:あくまで可能な範囲にはなりますが……原作にもマニアックな小ネタや様々なジャンル、展開がぎゅっと凝縮されていますが、どうしても映像になると間が生まれてしまい、濃度が薄くなってしまいます。

濃度が保たれた感覚のまま、原作の読後感を再現するためには、映像ならではの特性を活用していく必要がありました。その手法はシーンごとに違っていて、話すとかなり細かくなってしまうんですけど、本編に混ざっても違和感のないレベルで「龍先生だったらこうするだろう」という要素として足しています。

 

 

引き出しの数と組み合わせで勝負する演出方針

──妖怪や宇宙人のデザインに関してはいかがでしょう?

山代:全体的に、初期の円谷プロへの愛を感じました。成田亨さんがお好きでデザインに影響を受けていると先生自身も仰っていて、深いリスペクトを感じました。ですので、映像表現にも『ウルトラQ』からや『怪奇大作戦』あたりの昭和初期の匂いが出ると良いなと思って組み込みました。特にセルポ星人のシーンは、わかりやすいと思います。

新しいスタイルの中に、先人が発明した昔の素晴らしい表現を混ぜながら取り組んでいるので、今の若い方たちにとって、少し不思議で新鮮なものに映るかもしれませんし、そうなればいいなと思っています。参照する作品の方向性がハッキリしていたので助かりました。

──他に参考にされた作品はありますか?

山代:コメディシーンに関しては、2000年代に作られた宮藤官九郎さん脚本で、金子文紀さん演出のドラマや水田伸生さん監督の映画のテンポ感を参考にしました。『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』でやっているような、コメディとシリアスが突然切り変わる感じです。個人的な感覚では、コメディシーンは初期の宮藤官九郎作品、怪奇シーンは円谷プロというイメージ。キャラクターの活き活きとした感じは『映像研には手を出すな!』をイメージして作っていました。やっぱり自分がこれまでに見てきたもの、携わらせていただいた作品の影響って大きいですね。

まずは原作を読み込んで、それにマッチする演出を研究、取捨選択をして、作品に上手くミックスしていくような感覚です。他の作品もそうですが、先人の偉大な演出家や監督がの発明してきた表現を借りさせていただいている感じです。

──ミクスチャー、サンプリング的な手法というか。

山代:単純にこの作り方が合っているんですよね。私は凡人なので、引き出しの数とその組み合わせで戦う必要があると思っています。

更に言えば、出来るだけ意味のない画面を作りたくないんです。画面は何かを表現するためにあるのであって、「とりあえず成立させるためにこういう画を入れておく、単にかっこいいから、気持ちがいいから」みたいな理由で作るのは死んでも避けたい。キャラクターの状況や感情、シーンの感情の移り変わりをベストな形で表現できる方法を考えて、「なぜこの画面が必要なのか?」と考えた時に全て必然要性のあるものだけで構成されているようにしたいんです。自分ができているとは到底思いませんが、映像作品を制作させていただくにあたって私の理想や心意気はそこにあります。構造的に美しく完成度の高いものを目指したいのです。

 

 

──それこそ第1話は、モモの登場シーンから目が離せませんでした。

山代:モモは楽しくない日常をずっとループしているような感覚だったのだろうと。だから、教室のシーンでモモは画面の真ん中で吠えているが、友達に軽くあしらわれる。画面上では中央に位置するシーンの主役ですが、専有面積は小さく影響力がない。そして教室のシーンは最初と最後で同じポーズから始まり、同じポーズで終わる。廊下を歩くカットも常に同じアングルになっているわけです。オカルンとの出会いは彼女にとっての非日常で、転換点でもあったわけですから、そこまでの差として、出会う前まではループ感というかルーティーン感を軸にシーンを組み立てました。

このようにオカルンと出会う前のモモのシーンはそのルーティン化した日常の退屈さみたいなものが画面だけで伝わるようにしています。とはいえ、かなり注意深く観察しないと気づかないレベルかもしれませんし、それでいいとも思います。。その「印象」を再現する上で必要な要素なだけであって、本来はそんなところに注目させるものではないからです。

ただ、私は絵描きではありませんからそうやってひとつひとつに必然性を持たせて積み上げないと映像に密度が出せないんです。やはり原作から伝わってくるものを最大限アニメでも再現する必要がありますから、細心の注意を払って細かく細かく組み立てていくわけです。他にも、このシーンはモモが教室で座っている席が違うなど、原作から細かい変更もありますが、何となくやっているわけではなく、映像に翻訳した際に作品の印象、匂い、空気感を減退させたくないからです。

──原作の魅力を映像化するうえで、龍先生とお話されたことはありますか?

山代:基本的には、自由にやらせていただいています。先生が仰っていたのは、大きくは主にキャラクターに関して「こういうことは絶対にしない」とならないようにだけ気をつけてほしいという1点のみでした。私がやろうとしていることに対しても理解を示していただいて、大変ありがたかったですし、任せてもらえたからには、必ずいいものにしようとも思いました。

 

 

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