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『ダンダダン』監督・山代風我インタビュー

サイエンスSARUの総力を結集した〈Unidentified Mysterious Animation〉!『ダンダダン』山代風我監督インタビュー|原作のパワーと飽くなき表現欲が生み出す圧倒的な密度。龍幸伸先生の“魂”を再現した映像演出ができるまで

 

画面に登場するもの全てが“フック”になる

──監督の考える『ダンダダン』の魅力は何でしょう?

山代:原作のコマ割りや見開き、セリフの有無で表現しているメリハリやギャップ、落差がこの作品の大きな魅力だと思います。この読んだ時の感覚をどのように映像で再現していくのか、シーンにとってベストな形を追求しました。

──映像でメリハリやギャップを伝えるために、どのような工夫をされるのですか?

山代:緩急が一つポイントだと思いました。例えば、キャラクターたちの会話をかなり早口にしています。アクションやコメディの部分は速いテンポを意識して、シリアスが来ると尺を長めに取る。全体のテンポを速くしていれば、TVアニメの一般的な間でも、メリハリが効いて長い尺のように感じます。これは映像が持つ特性のひとつですね。

加えて、シリアスとコメディが瞬時に切り替わるので、声優さんのお芝居に関しても「情緒不安定な感じで」とお願いしました。実際に声が付くまでは、正直不安でした。自分でやっておきながら、「本当にこんなテンポ感で成立するのか?」と。通常の作品より1.25倍ほどの速度になっていましたし、会話が終わったら即座にカットが切り替わったり、会話は続いていて、音声は流れたままシーンが移ったり……。ギリギリまで心配していたのですが、完璧なスピード感とお芝居だったので安心しました。

 

 

──映像を観させていただきましたが、緩急があるからこそ、最後までワクワクできた気がします。

山代:良かった! そうなれば良いなと思いながら作っていたので、本当に嬉しいです。龍先生の絵は描き込みが多く、本当は完璧に再現したいのですが、TVアニメだとなかなか難しくて。キャラクターデザインの恩田尚之さんには、ギリギリまでシンプルにしつつ、龍先生の描くキャラクターたちをそのままアニメでも表現できるように作っていただきました。本当に素晴らしいデザインだと思っています。ありがとうございました。

描き込みの密度ではなく、デザイン・演出・小ネタなど、あの手この手を使って密度を高めていく。そこに映像ならではの強みも加えて、みなさんに満足いただけるような作品にできたらなと。1番気を遣っているのは、龍先生の原作の芯、魂の部分をしっかり捉えて外さないようにすることでした。

──例えるなら、「もし、龍先生がアニメの監督をやるなら?」と想像するような。

山代:そうですね。原作を読み込んで、「龍先生ならこうやってシーンを構成するかも」と考えながら制作しています。

特にオカルンとモモのバディ感は、重要なポイントです。どちらかが主人公という訳ではなく、ラブコメなんだけどベタな恋愛をしていないというか。持っている要素が違うだけで、基本的に似た者同士で対等なんですよね。お互い気遣いができるし、好きなものに真っすぐで、共通点があるから仲の良い友人になれる。

お互いが対等であるということが画面でも伝わるように、均衡な画面を意識していましたし、それこそ第1話のモモとオカルンの探索のシーンは、お互いのカット割りも同じようなものになっています。コマ数が一緒のシーンもあります。また、同じ展開を後半にも持ってくる形で、雑誌を渡すシーンと最後のズボンを渡すシーンの構図やお芝居を合わせ、お互いの小さな関係性の変化もしっかり表現しようとしました。

──凄まじいこだわりですね……。

山代:加えて、本作では宇宙人と妖怪の存在も鍵になります。宇宙人VS妖怪VS人間という三つ巴の構図になると思いきや、妖怪たちには土着感があって、地球を守る存在にもなりえる。その性質の違いを画面でも表現したいと思い、宇宙人は寒色系、妖怪は暖色系の色を使いました。

ターボババアなら赤色、セルポ星人なら青色。その他の妖怪や宇宙人にもテーマカラーを割り当てていて、そのキャラクターが登場すると画面をその色に染め上げる。そうすると、キャラクターがその場を支配している感覚になりますよね。舞台芸術の、カラースポットを浴びているような感じです。もちろんこれについても「格好良いからやりたい」という訳ではなく、非日常に踏み入れた感覚を再現するためであって、日常と非日常に画的なギャップを作るためでもあります。

画面に登場するもの全てが“フック”になっていて、色んなところに張り巡らされているような、それでいて遊び心のある映像を目指しました。

 

 

表現のバリエーションでギャップを生み出す

──豪華キャスト陣の共演も今作の注目ポイントだと思います。モモ役の若山詩音さんのお芝居が本当に素晴らしいなと。

山代:若山さんは素晴らしい役者さんですよね。ギャップや振り幅が大事な作品なので、アニメらしさも必要ですけど、一方でリアルな演技も必要になります。

──先ほども話題に挙がっていた、本作ならではのテンポ感ですね。

山代:はい。頭の中で想像していた通りの掛け合いになっていました。“少し誇張されたリアル”というのがキモなんです。アイラを演じる佐倉綾音さんのお芝居もかなり好きです。裏表があるキャラクターでわざとらしさはないんだけど、どちらの面も意識されているというか。細かいですが、しっかりギャップも感じられるような塩梅になっているなと。

付け加えるなら、モモとオカルンの掛け合いが本当に素晴らしくて、異常なテンション感でコメディやシリアスを行き来するんですね。キャストさんに限らず、他のスタッフさんたちも、自分の専門の分野において、表現のバリエーションが多い方ばかりでしたので、作品の幅が大きく広がりました。非常にありがたかったです。本当にありがとうございました。

──キャラクターたちの掛け合いの魅力は、特にコメディシーンで現れている気がします。

山代:私自身は『ダンダダン』をバトルものというより、どちらかというとコメディと捉えています。テンポの早さ、やり取りの雰囲気、クールなところで少し外す感じなど。みんな頑張って戦うんだけど、必死な感じがあまりなくてサラッとやってのけますよね。泥臭い印象が少なく、ハイスピードで展開していくので、意外と比重はキャラクターの関係性にフォーカスしている気がします。

 

山代監督の“これまで”が『ダンダダン』を加速させる

──先ほど「引き出しと組み合わせで作る」とお話されていましたが、山代監督の制作方法について、もう少しお伺いさせてください。

山代:前提として、先人の方々が生み出した技術を利用するのは、良いことだと思っています。マニアックなものから代表的なものまで、これまでに沢山の表現や技術が生み出されてきたわけで。そのまま持ってくるのではなく、それぞれを違うところから。見せたいものに合わせて、カメラワーク、お芝居のプラン、カットのタイミングなどの要素を各所からピックアップして持ってきて、雑味なくハマるように組み合わせて1つの画面にしていくるような感覚です。

 

 

──例えば、ドラマや映画、特撮などの映像作品から?

山代:そうですね。もともと映画が凄く好きだったのも影響しています。父親の仕事の関係で、家庭にDVDがたくさんありました。それをよく観ていたのですが、数多くの作品を観ているというよりは、同じ作品を繰り返し何度も何度も観ていました。おかげさまで次に何が起こるのか、どんな演出があるのかを大体全部覚えていて。今になって思うと、この経験がかなり活きています。

何か足りないと感じた時に「あの作品のこの要素が使えるかも!」と。カットの積み重ねや展開の仕方が共通している作品のシーンが思い浮かび、これのこれとあれを組み合わせれば「いけるかもしれない!」となる訳です。覚えるまで繰り返し観たという経験が今の自分を作ってくれていますね。確実に。

──ご自身で作品を作りたいと思ったのは、どのタイミングですか?

山代:小学校6年生の頃に「絶対に映画監督になる」と決めました。とは言え、具体的なやり方が分からずに日々を過ごしていたのですが、19歳の時に交通事故で死にかけまして何か残さなくてはと思い、そこから自主制作の映画を作り始めました。

友人と一緒に作っていたのですが、なかなか思い通りにならなくて何度も同じカットの撮影を繰り返すと、周りが露骨に嫌な顔になっていき、思い描いていた方向からさらに離れていく(笑)。それなら自分で描いた方が早いんじゃないかなと。アニメーションなら、自分の思い描いた画面が作れるかもしれないと思い、業界に飛び込んだわけです。

──手法に関わらず、表現すること自体がお好きなんですね。

山代:私は映像に恋しているので手法自体は何でもよかったんです。自分が色々既存の映像作品から研究したことを発表させてもらっている部分も作品作りの一環にはあって。もちろん作品に無理やり押し入れるわけではなくて、そこに合うパーツ、必要なものを的確に組み込む。そして作品の完成度に貢献したいのです。なかなか振り向いてもらえないのですが(笑)。

『ダンダダン』のような原作モノであれば、原作の向いている方向、同じ芯、魂を持ちつつ、そこに的確な映像演出、表現をハメて密度を上げていき、原作と同じ「印象」を目指す。それを視聴者のみなさんに楽しんでいただけたなら、何より幸せですね。ありがとうございました。

 
[取材・文/タイラ]

 

作品概要

2024年10月3日(木)より
MBS/TBS系28局「スーパーアニメイズムTURBO」枠にて放送開始!

ダンダダン

あらすじ

霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモ<綾瀬桃>と、同級生でオカルトマニアのオカルン<高倉健>。

モモがクラスのいじめっ子からオカルンを助けたことをきっかけに話すようになった2人だったが、「幽霊は信じているが宇宙人否定派」のモモと、「宇宙人は信じているが幽霊否定派」のオカルンで口論に。

互いに否定する宇宙人と幽霊を信じさせるため、モモはUFOスポットの病院廃墟へ、オカルンは心霊スポットのトンネルへ。

そこで2人は、理解を超越した圧倒的怪奇に出会う。

窮地の中で秘めた力を覚醒させるモモと、呪いの力を手にしたオカルンが、迫りくる怪奇に挑む!運命の恋も始まる!?

オカルティックバトル&青春物語、開幕!

キャスト

モモ<綾瀬桃>:若山詩音
オカルン<高倉健>:花江夏樹
星子:水樹奈々
アイラ<白鳥愛羅>:佐倉綾音
ジジ<円城寺仁>:石川界人
ターボババア:田中真弓
セルポ星人:中井和哉
フラットウッズモンスター:大友龍三郎
アクロバティックさらさら:井上喜久子
ドーバーデーモン:関智一
太郎:杉田智和
花:平野文

(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

 

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