原作への愛情とリスペクトが出発点――独自の道を歩むサイエンスSARUと作り上げた、観れば“理解る(わかる)”傑作!『ダンダダン』シリーズ構成&脚本・瀬古浩司さんインタビュー
「少年ジャンプ+」にて連載中、龍幸伸先生による人気漫画『ダンダダン』。
霊媒師家系の女子高生・モモ<綾瀬桃>(CV:若山詩音)とオカルト好きな少年・オカルン<高倉健>(CV:花江夏樹)が、宇宙人や怪異と戦いながら関係性を変化させていく、オカルト・バトル・ラブコメなどの要素が奇跡のバランスで融合したダイナミックな作品です。
本作のTVアニメが2024年10月3日(木)より放送開始! 龍先生の圧倒的な画力と、物語の勢いがアニメーションでどのように表現されるのか。放送前から国内外で大きな注目を集めています。
アニメイトタイムズでは、シリーズ構成・脚本を担当した瀬古浩司さんにインタビューを実施。
数々の作品でシリーズ構成・脚本を担当してきた瀬古さんによる作品解釈や、脚本家ならではの視点でTVアニメ『ダンダダン』の魅力を深堀りしていただきました!
全てが奇跡のバランスで成立する、驚異的な作品
──原作をお読みになった感想をお聞かせください。
シリーズ構成&脚本・瀬古浩司さん(以下、瀬古):今回のお話をいただいてから読ませていただいたのですが、オカルトが題材ということもあり、宇宙人と怪異・幽霊、UMAすべてが同居しているのが非常に面白かったです。僕が中学生くらいの頃はオカルトブームで、僕自身も好きだったんですけど、その時はUMAはUMA、UFOはUFOと分けて捉えていました。幽霊は怖くて苦手なんであんまり考えないようにしてましたが(笑)。
そういう少年時代に好きだった懐かしいものが同居していて、個人的にぐっときました。ただ僕がにわかなのに対して、龍幸伸先生は本当にオカルトが好きなんだなと。オカルトってバカにされたり、インチキみたいな扱いをされることもあるじゃないですか。本作は、オカルトに真正面から向き合って、上手く昇華していますし、愛情を持って扱っているのが作品全体から伝わってきます。
──瀬古さんもオカルトにハマっていた時期があったんですね。
瀬古:当時は「超古代文明」ブームだったんですよ。『神々の指紋』という本がベストセラーになったりして。世間のブームが去ってからは遠ざかってしまいましたが、『ダンダダン』を読んで、久しぶりにあの頃の気持ちを思い出しましたね。
──再燃しそうですか?
瀬古:学生の頃とかだったら再燃したかもしれないですが、……今はちょっと時間がなく……(笑)。ただ、本作の脚本を書くにあたって元ネタであったり、実際の事件なんかを検索したりしました。改めて心をくすぐられるというか、ワクワクさせていただきましたね。
僕自身がオカルトに詳しいわけではないので、龍先生がオカルトに対してどのくらい詳しい方なのかわからないんですが、とにかく愛を感じます。細かい部分を挙げて、「これを知っているのはマニアだ」みたいなことではなく、作品全体を通してのオカルトの扱い方に愛がある。それは原作を読むと絶対に伝わる部分だと思います。オカルトを取り入れながら、物語を進行していくバランス感覚も素晴らしいです。
──オカルトやラブコメなど、様々な要素がありますがキモとなる部分はどこだと思いますか?
瀬古:全部ですよね。やっぱりUFOと幽霊、UMAが同居していて、ラブコメがあって、バトルがあって……色々な要素がある中で、「オカルトとラブコメどっちがキモなんですか?」と言われても、「両方だよ!」と答えるしかない気がします。何か欠けてしまうと、成り立たない。全てが絶妙なバランスで成立しているところが、この作品の驚異的なところだと思います。
作品が持つ面白さを最大化するには?
──瀬古さんが本作に携わるきっかけは、どのようなものだったのでしょう?
瀬古:サイエンスSARUのEunyoung(代表取締役 Eunyoung Choi)さんと元々面識がありまして、アニメ化の際に声をかけていただきました。そのお話があった際に『ダンダダン』を渡されて読みました。
個人的な話になってしまいますが、特に仕事が詰まっている時期だったんです。お受けできるかどうか見通しがつかない状態だったのですが、作品を読んで「スケジュールが少しキツくてもやりたい」と思いました。
──脚本の担当が決定してから、龍幸伸先生とはお会いしましたか?
瀬古:龍先生とは飲み会で一度お会いしただけですね(笑)。仕事の話もあまりしてないですし、監督を交えて当時公開されていた映画の話などをしました。シナリオに関しては編集の林士平さんを通して、細かく意思疎通していましたね。
例えば、怪獣や宇宙人のデザイン・解釈について、こちらからディテールの部分を尋ねたり、監督が元ネタ等を詳しく調べて、その要素を組み込むというアイデアを持っていたので、その際のすり合わせなども行っています。
──本作は要素も多く、物語のテンポもハイスピードですが、脚本・構成の仕事をする中で苦労したポイントはありますか?
瀬古:これはどの作品にも共通することなのですが、紙に描かれた漫画を動きのあるアニメーションにする際には、「その作品が持つ面白さを映像化した時に最大化するにはどうしたら良いのか」ということを常に考えながらやっています。その点で言うと、『ダンダダン』はとてもやり易いなと。本作の描き込みの凄さはアニメ映えしそう、キャラクターの掛け合いは絶対に面白くなるはずだ、という想像がしやすかったです。
強いて言うなら、構成の部分ですかね。最後をどこにするかとか、ちょっと悩みましたけど本当にそのくらいです。細かい調整はありますが、できるだけ原作を読んだ感じをそのまま映像でも表現できればと心がけました。
──どのようなところを調整されたのでしょう?
瀬古:漫画で読む分には問題ないセリフでも、声に出してみると違和感を抱くことがあるじゃないですか。「俺が」という言葉が繰り返されている、あと例えば「靴が脱げちゃった」というセリフがあったとしたら、それは映像で見れば十分に伝わるとか。そういうところを削ったり、逆にセリフを足したりすることも多かったです。たとえば会話している絵だけがあってセリフが書かれていない場面とか、掛け合いをもう少し長くして欲しいと監督からオーダーがあったりしたときなどですね。
──山代風我監督と、お話しながら脚本の作業を進めることも?
瀬古:色々なやり方があると思いますが、僕の場合は一旦、脚本を書いて持っていって、監督はじめスタッフの方と相談しながら進めていく感じです。
──山代監督とのお話で印象的なものはありますか?
瀬古:「色を大事にしたい」というお話は最初からされていました。キャラクターごとにテーマカラーが決まっていて、そのキャラが登場したら画面もその色に染まる、みたいな。こういう映像的なアイデアは、脚本の時点でどうこうできるものではないんですが。
原作のやり取りをもう少し盛ってほしい、というような脚本で可能な部分はこちらでやっています。第4話のモモとオカルンが地縛霊から逃げるくだりは2人が初めて息の合った共同作業をするシーンにしたいので、原作よりもアクションを盛ったり、あとは学校でモモとオカルンがすれ違うシーンを増やしたいとか。かなり細かいところの描写やト書きのオーダーもありました。
──お仕事をされている中で、書いていて楽しいキャラクターなどはいましたか?
瀬古:僕はモモが好きでしたね。ちょっと言葉遣いが悪いところもあるじゃないですか(笑)。ああいうセリフを書くのが好きなんです。性悪みたいなことじゃなくて、軽口を叩く感じ。
──特徴のある言葉が多いですよね。
瀬古:星子がターボババアのことを「腐ったミカン」と罵ったり、ターボババアが口癖のように「くそだらあ」って言ったり(笑)。真似したくなるようなセリフって大切だと思います。言葉遣いに関しても、先生の好きなものを全部詰め込んでいて、それが単なる趣味ではなくて物語にも活きているのが素晴らしいです。