秋アニメ『ガンゲイル・オンライン』第2期:楠木ともりさん(レン役)×日笠陽子さん(ピトフーイ役)が改めて語る『GGO』声優陣の結束力/インタビュー
これまで演じてきたレンとピトフーイ、2人はどんなキャラクターなのか?
――ここで改めて、お二人の演じている役柄について聞いてみたいと思います。まず、レンはどんな子ですか?
楠木:リアルは小比類巻香蓮といって、背が高いという自分のコンプレックスに、アバターであるレンを通して向き合っていくキャラクターです。香蓮は内気で静かで、言葉数も多くなく、わりとローテンションな子なんですけど、どちらが素なのか、レンになると戦闘狂みたいになるんです(笑)。で、レンだと、自分の明るい部分や楽しくて可愛らしいところも開放できるんですよね。そこのギャップが、香蓮/レンとこの作品の魅力だと思います。
――そういえば、ひとりで何役も演じましたよね? 香蓮とレンで2人ですが、そのほかに、ピーちゃん役(P-90)もあったりして。
楠木:ひとり3役をやったことで、声がガラッと変わるという印象が付いて、そのあとに、何かとそのことを言っていただけたのはありがたいことでした。そこが自分の長所なんだということに気づかせてくれた作品でもあるし、当時の自分、頑張ったなっていう思い出にもなっています(笑)。
――レンに関しては、第2期もそうですけど、普段の楠木さんのイメージにはない、ハジけた声を出されていますよね。
楠木:だから、レンちゃんと一緒に鬱憤を晴らせている感じがすごくあって、気持ちよく演じられました。ただ、第1期の頃だと、発声に関してはまだまだ未熟なところがあったので、毎週の声を枯らしていましたけど。
――第1期の終盤は、物騒な言葉をずっと叫んでいましたからね(笑)。日笠さんは、ピトフーイに関して、どんな人だと思っていますか?
日笠:戦闘狂とか愉快犯とか詐欺師っていうワードが出てきていましたけど、そういうワードがすごく似合う女性ではあると思います。ただ、その奥底にあるもの……そういう人になるにあたって、生きるということは何なのかとか、生きているって死につながっているから、死ぬために生きているのかとか。死を望むだとか、ゲームの世界なんだけど、もっともっと根幹の「人間の生き死に」というものを、しっかりと捉えている人なんだと思います。
だからこそ、ゲームの世界で彼女が生きていること・死ぬことっていうのは、ものすごく意味があることで、『GGO』におけるピトフーイというキャラクターは、ひと言では表すことはできない存在なのかなって思っています。でもあえて言うとすらば、生お化け? 生の亡霊みたいな感じ?
――ピトフーイは、リアルとゲームの違いはありましたか?
日笠:テンション感は、リアルの神崎エルザとピトフーイとで、そんなに変わらないんです。でも、もっと奥深い、どろどろしたものがあったり、日常では隠しているけど、現代に生きづらさを感じている若者ではあるんでしょうね。
楠木:そういう意味で、アーティスト感はすごくありますよね。歌手をやっているだけあるなというか。当たり前に存在している概念を必死に紐解きたい人なんだろうなっていう感じがします。本能的なんだけど、根底は哲学で溢れているキャラクターだなって。
日笠:表に出せるものって限られていて、歌とかもそうじゃないですか。内側にあるいっぱいの感情を、このメロディの音符に当てはめて言葉にしたら、これしか出せない、みたいな。で、何かが足りない、渇望している自分もいて、そこで見つけたのがゲームの世界なんじゃないかなって思っています。
――アーティストって、人には言えないような感情を、ちょっとぼかして表現したりもしますからね。歌詞の裏には、結構膨大な深い意味があったり。
日笠:芸能人って、ある意味虚像じゃないですか。神埼エルザを演じなければいけないことって、きっとたくさんあって、それがちょっと虚しかったりするんだろうなぁ。で、楠木ともりという虚像はあるの?
楠木:それが6年で変わったところかもしれないです。6年前なんて虚像も何もない、そっくりそのまま私だったじゃないですか。それがだんだん、違うものが出てきているなって思います。意識してかどうかはわからないんですけど。
――楠木ともりはこういう人っていうイメージが付けられたりしますよね。いわゆるパブリックイメージですけど。それでいて、みんなが望む楠木ともりでもいなければ、という意識もあるでしょうし。
楠木:やっぱりイメージされている自分については考えてしまいますよね。でも、そこでブレていいのか、自分! みたいなこともあるから、生きるのって難しいです(笑)。
日笠:難しく考えすぎなのよ。この人、ピトフーイになっちゃうかもしれない(笑)。
楠木:確かに、ピトに共感できることは多いかもしれないです。
《スクワット・ジャム》で味方同士になったレンとピトフーイは、どう戦うのか
――いよいよ第2期がスタートします。実際に演じてみて、レンはどうでしたか?
楠木:レンちゃんの印象は結構変わっていて、第2期はギャグ顔が多かったり、激しくツッコむことが多かったり、ある意味キャッキャしているところが強く出ています。第1期のときの必死さ、あとは、まだレンになって馴染みきれてないところもあって、内側の香蓮が顔を出す瞬間があったんですけど、第2期では、完全にレンとして生きている感じがしました。だから可愛らしさも増したし、香蓮として壁を超えたというのは、レンにも刺激になっていて、より前のめりに戦いに参加している感じはすごくありました。
あと、第2期では《スクワット・ジャム》(最大6人で編成された分隊同士でサバイバル・マッチを行うゲーム)に新たなルールが加わっていたりして、レンのポジショニングや、考えていることに変化もあったりするんです。そこで、第1期とは違う一面が見られると思います。
ゲームがあったので、久々に演じたというわけではなかったんですけど、やっぱり緊張はしていて、第1話は、早めに現場についてビクビクしていたんです。そしたら赤崎さんがいたので、「私、すごく緊張しているんです」と話したり、ソワソワする始まりでした。でも、いざみんな集まってテストが始まると、一気に6年前に戻る感じがあって「これだな〜」って思えて嬉しかったです。
日笠:なんか、空気で覚えているんだよね。
楠木:カチッて入る感じはしました。
日笠:私、第1期の時は、ピトフーイを演じるのが恐ろしくて、「できないよ」って思っていたんですよ。
楠木:そうなんですか! そんなふうには見えなかった。
日笠:誰かが死んでいく姿を見て喜ぶみたいなシーンが多かったし、自分の力を誇示するとか、戦うことへの喜びとか、私には戦闘狂の気持ちはわからんと。忘れもしない、崖の上で笑い続けるシーンがあったんですよ。それが異常に長くて。
楠木:長かったですね。
日笠:テストのときに、この状況が楽しいっていう感情に持っていけなくて、途中で笑いが止まっちゃったんです。それは息が尽きたという物理的な理由もあったんですけど、その笑いをもっと欲しいと言われて、結構悩んだんです。私、サイコパスな役を演じることも多いんですけど、ピトフーイと向き合うことで、真人間であることに気づいてしまったというのかな(笑)。しかも、そこの蓋を開けるのを怖がっていた時期でもあるんですよ。
この業界にいると、さっきの虚像の話ではないけど、誰かが求める自分というものを作ってしまって、それは、自分の心から扉をパタンパタンと閉めて壁を作る作業でもあるんですよね。でも役者をやっていると、その扉を開けなければいけないときがたくさんある。でも当時の私は開けきれなかったんでしょうね。だから、ピトフーイを演じている振りというか、そういう芝居だったんです。
だから、私も第2期の第1話の収録のときは、あのときのトラウマと言ったら変ですけど、あの状態になったらどうしようという恐怖はありました。でも気持ちとしては、開けきってやるぜ!という気持ちで行ったんです。そしたら意外と、ものすごく楽しくて(笑)。今回のピトフーイが戦略タイプだからというのもあるんですけど、演じているときの自分がカッコ悪くたっていい、変だっていいと思えた時期が、この6年間のどこかであって、今、第2期に臨めているので、第1期のときはピトに振り回されていたけど、今回は制圧できている気がします。乗りこなしてる感じがして、むしろお前がこっちこいよ!みたいな感じ。
楠木:すごい!! かっこいい!!
日笠:って思う日もあります(笑)。でも、お前が寄ってこい!くらいの気持ちのほうがいいんだと思います。
――では、第2期の序盤の見どころを教えてください。
楠木:やっぱり戦いのときの環境の違いは大きいです。《スクワット・ジャム》では、レンとピトは同じチームになっているし、ルールも、今回は何やらきな臭い感じがしていますし。
ただ、環境が変わったことで、キャラクターたちは第1期から時間は経っていないんですけど、また違った戦い方、考え方が見えてきて、そこがすごく面白いんです。同じ《スクワット・ジャム》だけど、同じような戦いにはならないということを、皆さんにお伝えしたいです。
日笠:ピトフーイはどこまで行ってもピトフーイなんだけど、第1期でレンに負けて殺されたことで、また新たに、生きる道みたいなものができて、きっと『GGO』をやることが楽しいんでしょうね。だから、ピトの変化と、変わらずに、より小ズルくなった部分は見どころのひとつだと思います。第1期は割と個の戦いだったけど、今回はチーム戦で、使っている武器の特性が違うので、戦い方、戦略の練り方が本当に面白いです。
楠木:となると、レンがどういうポジションになるのかは、自ずとわかりますよね?(笑)。
日笠:お前、とりあえず行けよってね(笑)。
――では最後に、第2期のEDテーマは「Little Dancer」(レン starning 楠木ともり)は、どんな曲ですか?
楠木:第1期の「To see the future」は、良いEDだなって、穏やかな気持ちになれる曲だったんですけど、今回はカッコ良さもあって、楽しく戦うみたいな部分がある楽曲という印象があります。キーが少し低くて、そこでレンちゃんらしさをどう出すのか、みたいなところに時間がかかりました。そういうレンを新たに作ってレコーディングしたので、たくさんリピートして聴いていただけたら嬉しいです!
[文&写真・塚越淳一]
作品概要