『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇』ヘディン・セルランド役 島﨑信長さん|「リアルに想像してみてほしい……5時間前から待ち合わせ場所でデート相手を待つ時の気持ちを」【連載第2回】
同窓会のようだった先行上映会
──先行上映会が9/16にありましたが、ファンの皆さんの反応はいかがでしたか?
島﨑:昨今珍しいクローズドなイベントだったことも大きいのですが、会場では作品の印象と同じく昔ながらの良さを感じられたと思っています。個人的な印象にはなりますが、第1期から追いかけてくれている古参の方が多かったのではないかなと。
ノリとかひとつひとつのリアクションや笑いどころが通のそれだったんですよ。10年前くらいのオタクなノリを共有しているような感覚があって、ちょっと懐かしかったり楽しくなったりしました。
もう僕も大人なので普段は発言に気をつけるようになりましたが、今回は配信も何もないとのことで、かなり自由にやらせてもらったんです。僕が『ダンまち』のイベントに参加するのは初めてでしたが、ファンの方も含めての同窓会みたいで楽しかったです。
映画館っていう場所も良かった。ライブビューイングもなく何千人と入る箱ではないので、少しこじんまりとしたちょうど良い規模感も懐かしかった。『ダンまち』の持つ熱さを好んでいる本当に作品が好きな人たちばかりだったなっていう印象があります。
──『豊穣の女神篇』第1、2話をご覧になった印象はいかがでしたか?
島﨑:アフレコ時は線画やコンテ撮の状態だったので出来上がりを楽しみにしていたのですが、素直にクオリティが高いと思いました。だから上映会に登壇する時も、「コレは絶対面白いでしょ!」という気持ちでした。
ストーリーの良さは台本を読んだ段階からわかっていましたし、それをこのクオリティで仕上げてきたのなら絶対面白いよねっていう自信を持って登壇できました。先行上映会を気楽に楽しめたのも、作品の面白さに自信があったからかもしれないです。
ヘディンの戦闘シーンも殆ど喋っていないのですが、凄くクオリティが高かった。ベルがファイアボルトを撃ってもそれ以上の魔法をサラっと唱えてくるし、かと思ったら近接戦闘でも当たり前のように追い詰めてくる。今の成長したベルくんが、より強い相手に淡々と詰められていく様は緊張感がありました。
なにより第2話は、僕が想像していたより表情の表現が凄くて。「ゴミを見るような目」という表現はよく聞きますけれど、ヘディンは「ゴミ以下のものを見るような目や表情」をしていました。
この作品はギャグとシリアスの緩急や切り替えも素晴らしいですし、それがグラデーションになっているシーンもまた面白い。ギャグとシリアスが混ざってミルフィーユみたいになっているところもありますよね。
音楽や僕たちの声もあわさって見ていて飽きないですし、だからこそ単純に面白いものになっているなと思いました。
ディレクションを受けて変わったヘディンへの印象
──ヘディンをアニメで改めて演じるにあたって何かディレクションはありましたか?
島﨑:第2話の収録でひとつ大きなディレクションがありました。ヘディンはベルくんに色々と教育を施していくのですが、最初に僕が持っていったのはどちらかと言うと、知性や頭の良さを感じさせるお芝居だったんです。
原作や台本をチェックして彼のキャラクターをイメージした時に、最初にみなさんが思い浮かべるようなものだったんじゃないかなと思います。これから放送されるものと比べたら大人しいヘディンでした。
けれど、現場でテスト収録の際に「今やってもらったのも良いのだけれど、鬼軍曹にしてほしい」というディレクションを受けて、僕も「なるほど!」となりました。
それから鬼軍曹で思いっきりやってみたら、ベルくんを演じる禎丞のリアクションも変わってくる。それを受けて僕のテンションも上がっていくみたいな流れになったんです。最初に自分が用意したものを超えるものができて凄く楽しかったです。
僕がどう思いっきりやろうとも、禎丞がベルくんらしく素直に一生懸命反応を返してくれるので、悪い気分にはならないんです。きっとヘディンもその時の僕と同じ気持ちだったんじゃないかなと思います。ノリノリで収録できたと思っています!
ディレクションを受けてからヘディンの内面とその出力の仕方の解釈も少し変わりました。鬼軍曹というのは別にふざけているわけではなくて、彼がベルくんに対してそういう態度になることに納得もあったんです。改めて彼の人間性について深く考えるきっかけになりました。
原作の大森先生なのか他のスタッフさんなのか僕らはどなたから出た意見なのかはわからないのですが、ディレクションをいただいて、考えて、実際に演じてみて凄く腑に落ちるものがあったんですよね。
たとえ誰からだったとしてもスタッフ陣の総意であることには間違いないので、良いディレクションをいただけてありがたかったです。おかげでその後、ヘディンを演じるのがより楽しくなりました!
──ベルとの修行のあたりの掛け合いはコミカルで見ていて楽しかったです。
島﨑:そこがメインにはなるのですが、ベルくんとの関わり方や関係の築き方の部分にも影響がありました。元からヘディンが思っていることは理解して演じていたのですが、その出力の仕方が変わると、他のシーンの演技や感情も変わってきて。
僕が感じていたことを変更したというよりは、ヘディンの感情の発露の仕方や表現の回路を変えてもらった感じです。
常に鬼軍曹というわけではなく、普段の会話やフレイヤ様とのシーンもそれを理解してから変わりました。「ヘディンってこういう人なんだ」と自分の中で納得感があったんです。他のキャラクターとはまた違う、替えが効かないキャラクターになれたかなと思っています。
──『ダンメモ』収録時には無かった部分が足されたような印象でしょうか?
島﨑:ゲームとアニメでは違う部分もあるので難しいところではあるのですが、『ダンメモ』は最初に持っていった演技に近かったと思います。キャラクターの内面や感情、考え方が変わったのではなく、出力の仕方やぶつけ方がもう少し厚く鋭くなった感じかなと。
もしまたゲームにヘディンとして出演することがあるとしたら、ちょっとお芝居が変わるかなと思います。