音楽
SawanoHiroyuki[nZk] BEST ALBUM『bLACKbLUE』全曲レビュー

SawanoHiroyuki[nZk] BEST ALBUM『bLACKbLUE』全曲レビュー|今回のベストアルバムを聴いて感じたのは、一貫してカッコいいということ――

数々の大ヒットアニメ作品の劇伴音楽を手掛けてきた作曲家・澤野弘之によるボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]。その始動10周年を記念したベストアルバム『bLACKbLUE』が10月2日にリリースされた。

[nZk]の2つの面を感じてもらえるよう選曲した2枚組で、DISC 1は「様々なアーティストと制作してきた楽曲」。DISC 2は、「SawanoHiroyuki[nZk]のプロジェクトにおいて重要になった思い入れある楽曲」なのだという。

『機動戦士ガンダムUC』『青の祓魔師』『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』『俺だけレベルアップな件』など、数多くのアニメの劇伴を手掛けてきた澤野弘之。もともと、劇伴の中に歌モノは多いのだが、SawanoHiroyuki[nZk]は、ボーカル曲のみがまとまって聴けるというものなので、彼の世界観が好きな人にはたまらないプロジェクトではあった。

そして改めて今回のベストアルバムを聴いて感じたのは、一貫してカッコいいということ。バンドアレンジのものからEDMまで、幅広いジャンルの音楽を発信しているが、すべてカッコ良さを追求している。そんな楽曲が凝縮されたベストアルバムに収録される楽曲を、1曲ずつ紹介していきたい。

 

 

[DISC 1-CD]様々なアーティスト陣と制作された楽曲群

01「地球という名の都」

by SawanoHiroyuki[nZk]:ASKA

5thアルバム『V』のリード曲。澤野自身が大きな影響を受けリスペクトするアーティストであると公言するASKAをゲストボーカルに迎えた楽曲で、澤野自身も「これから自分の背中を押し続けてくれる、ずっと大事にしていきたい楽曲になりました」とコメントを残している。作詞はASKAが担当。澤野の壮大な楽曲に合った世界観。地球の美しさ、未来を歌っていて、〈優しさを伝えつづければ戦いはない〉という言葉に心を打たれた。この深い歌詞を、こんなにも強く、温かく歌えるボーカリストASKAの偉大さに震えた1曲。

02「EVERCHiLD」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Akihito Okano (ポルノグラフィティ)

3rdアルバム『R∃/MEMBER』のリード曲。ドラムの大きなリズムが曲を引っ張る中、ポルノグラフィティの岡野昭仁のボーカルが、曲の中で徐々に存在感を増していく。岡野の楽曲に対するボーカルアプローチが天才的で、どんどん歌の世界に引き込まれていく。歌声と曲の力強さに、思わず拳を上げて声を上げたくなってしまう。

03「Chaos Drifters」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Jean-Ken Johnny

頭部が巨大な銃である主人公・乾十三の活躍を描いたSFハードボイルド、TVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』OPテーマ。ボーカル・作詞を、MAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyが担当。何が起こるのかわからない期待感を煽るイントロ、ブリッジから一気に爆発するコーラス(サビ)の爽快感、そして真っすぐなボーカルがたまらなくカッコいいダンスロック。

04「B∀LK」

by SawanoHiroyuki[nZk]:suis (from ヨルシカ)

コンポーザーのn-bunaとボーカルsuisによるヨルシカ。グルーヴィなエレクトロミュージックで、n-bunaもギターで参加し、ファンキーなギターを響かせている。ラフにカッコよくクールに歌うsuisのボーカルも、ヨルシカとはまた違う魅力が見せている。ヨルシカでは日本語詞で言葉を伝えることを意識して歌っていると思うが、この曲は英詞が多いのでラフさがある。それが新鮮さに繋がったのだろう。

05「FAVE」

by SawanoHiroyuki[nZk]:AiNA THE END

アイナ・ジ・エンドのクセの強い素晴らしいボーカルを澤野サウンドに乗せた感じで、個性と個性がぶつかり合ったら、どんな景色が見えるのだろうと、いつの間にかのめり込んで聴いてしまう。強烈な個が融合しても、その魅力は損なわれることなく、むしろ輝くということがわかった。サビ前に息を吸う音も魅力的だし、サビの爆発力も圧倒的で、アイナ・ジ・エンドの凄さを改めて実感する1曲。

06「s-AVE」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer

このプロジェクトのゲストボーカルは、誰もが当たり前のようにものすごい存在感を放つ歌声なのだが、Aimerもまた個性的な歌声の持ち主。そして、SawanoHiroyuki[nZk]のプロジェクトの始まりとなったアーティストでもある。その独特な声質に意識がいくが、感情表現がすごく豊かなところが魅力的で、聴いていると心を揺さぶられてしまう。そんなAimerの歌の魅力を引き出す叙情的な歌詞とゆったりとした美しいメロディーラインも素晴らしい。

07「NOISEofRAIN」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Takanori Nishikawa

澤野弘之の創り上げる“美しさ”を感じる音世界。それに寄り添うように静かに入っていったボーカルが、ギターのノイズ音と共に一気に激しくなる。テンポが速い楽曲ではないだけに、西川貴教のボーカルの爆発力とロックマインドが炸裂していて、とてもエモーショナルな楽曲に仕上がっている。

08「COLORs」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Hata Motohiro

秦基博というと、「ひまわりの約束」や「鱗(うろこ)」「Girl」のような、ハスキー感のある地声とファルセットが美しい高音がまず思い浮かぶ。だが、エレクトロミュージックの「COLORs」では、グルーヴィでアタック感の強いボーカルが聴けて、彼の新たな魅力が感じられた。もちろん、楽曲のメロディセンス、ポップセンスが抜群なのは言うまでもない。

09「膏」

by SawanoHiroyuki[nZk]:okazakitaiiku

作詞も岡崎体育が担当。ファンキーなロックサウンドが、力強く真っすぐな岡崎体育のボーカルの良さを引き出している。後半のシンガロングできるパートを、ライブでみんなで歌ったら爽快だろう。コミカルな岡崎がまったく出てこないのかと思いきや、MVの最後で、しっかり澤野と一緒に踊っているので、やはり期待は裏切らないエンターテイナーだ。

10「7th String」

by SawanoHiroyuki[nZk]:ReN

シンガーソングライターReNをゲストボーカルに迎えての楽曲。ギターのアルペジオから静かに始まり、そこからボーカル、ピアノと音が重なっていく。洋楽っぽく聴こえるのは、ReNのボーカルが成せる技でもあるだろう。英詞だけでなく、日本語詞も多いのだが、それを感じないほどグルーヴィだし、途中で曲の雰囲気がガラッと変わっても、軸のブレない素晴らしい歌声を響かせている。

11「Till I」

by SawanoHiroyuki[nZk]:優里

シンガーソングライター優里が歌うのは、アニメ『キルラキル』の劇中歌「Till I Die」のリアレンジ「Till I」。バラードだが、最初の美しいフェイクで心をグッとつかまれるし、Bメロでの声の伸び、そこからエモーショナルなサビに繋がっていく感じは唯一無二。特にラストのロングトーンの美しさと儚くさは、とてつもなく心に沁みた。

12「never gonna change」

by SawanoHiroyuki[nZk]:スキマスイッチ

アコギのストロークから、打ち込みのリズムに乗ってカッコ良く展開されていく疾走感溢れる曲。サビのキャッチーさと開放感は澤野弘之の真骨頂だろう。そんな楽曲を大橋卓弥がどんなアプローチを見せるのか。「奏(かなで)」に代表される、切なさと哀愁漂うボーカルのイメージがあったが、新たな魅力が垣間見られて、やはり素晴らしい声質を持ったシンガーなのだと実感した。ただただカッコいいし、“wow wow”と叫びたくなる。ラストの切なく沁みる常田真太郎のピアノも聴きどころ。

13「LilaS」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Honoka Takahashi

TVアニメ『86—エイティシックスー』の第2クール最終話のEDテーマ。ゲストボーカルは、同作の第2クールのEDテーマ「アルケミラ」を歌っていたロックバンド、リーガルリリーのたかはしほのか。作品に寄り添って書かれたたかはしの歌詞。そして、弱さや儚さの中の強さを感じるボーカルに、澤野が生み出す繊細なメロディーとピアノの音色。すべてが合わさって大きな感動を誘う。

14「time」

by SawanoHiroyuki[nZk]:ReoNa

TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』のEDテーマ。打ち込みがメインのサウンドだが、音が賑やかにしているわけではなく、シンプルな音数で、メロディーと歌のパワーを信じているサウンドメイク。それに応えて、洋楽のカヴァーで培ったグルーヴィなボーカルを響かせるReoNaもまた素晴らしい。サビで主旋律の裏でもうひとつのメロディを持ったコーラスが展開され、そのコーラスが主旋律になっていくというアレンジがカッコいい。

15「OUTSIDERS」

by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨 (JO1)

競馬学校で騎手を目指す少年たちの姿を描いたTVアニメ『群青のファンファーレ』のEDテーマ。OPテーマ「Move The Soul」をグローバルボーイズグループJO1が歌っていて、劇伴を澤野弘之が担当しているという縁から、JO1の河野純喜と與那城奨によるゲストボーカルが実現。澤野のボーカル曲は、基本的にカッコいいが、そのカッコ良さを完璧に表現しているというか、自分のものにしてしまっているのがすごい。タイプの違う2人のボーカルの魅力が炸裂しているし、MVでのパフォーマンスも見惚れるほどカッコ良かった。

16「Trollz」

by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco

アニメ『進撃の巨人』や映画『プロメア』のサントラに収録される歌モノでボーカルを担当していたLacoが、[nZk]に初参加した楽曲。タイトルにある「Troll」は、スラング的な意味で、ネットを荒らす人、悪目立ちする人という意味があるが、負の感情を爆発力のあるボーカルで歌っているのに、どこかおしゃれでカッコよくて上品さがある。それは澤野が生み出す音楽にも共通している。

17「Avid」

by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki

TVアニメ『86—エイティシックスー』の第1クールEDテーマ。ゲストボーカルのmizukiは、SawanoHiroyuki[nZk]の1枚目のシングル「A/Z|aLIEz」(TVアニメ『アルドノア・ゼロ』EDテーマ)から参加していて、澤野も楽曲コメントで「信頼するボーカル」と語っているが、表現力が豊かで深い。穏やかだが徐々に熱を帯びていくバラードで、決して軽くない歌詞のテーマだが、見事に歌い上げている。

18「LEveL」

by SawanoHiroyuki[nZk]:TOMORROW X TOGETHER

韓国5人組ボーイグループ・TOMORROW X TOGETHERがゲストボーカルとして参加した楽曲で、TVアニメ『俺だけレベルアップな件』のOPテーマ。超常的な能力に目覚めた覚醒者は、覚醒した際に付けられたランクから成長することはないとされる中、成長を続けるハンター・水篠旬の活躍を描くアニメで、韓国の漫画が原作となる。イントロがパーカッションから始まるのが印象的で、ダンサブルなサビがカッコいい。リズムやグルーヴを意識したボーカルが何より素晴らしいし、途中にラップが入るところなどは、K-POPへのリスペクトも感じられる。

19 bonus track「Twin Fates」

by 澤野弘之×Awich

ボーナストラックとして収録されるAwichとのコラボ楽曲。日本だけでなく海外でも活躍するヒップホップの女王、Awichの圧倒的な存在感と、澤野弘之の生み出すサウンドの奥深さ。楽曲だけ聴いてもカッコいいのだが、マジック:ザ・ギャザリング『エルドレインの森』アニメーショントレーラー起用楽曲ということで、作品世界に寄り添ったAwichによる歌詞も素晴らしい。双子の宿命や物語を想像しながら聴くと、さらに深みが増すし、トレーラームービーのラストにあるショートドラマだけ見ても、曲の解像度はかなり高まる。

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