SawanoHiroyuki[nZk] BEST ALBUM『bLACKbLUE』全曲レビュー|今回のベストアルバムを聴いて感じたのは、一貫してカッコいいということ――
[DISC 2-CD]澤野弘之の活動において重要になった思い入れの楽曲たち
01「aLIEz」
by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
TVアニメ『アルドノア・ゼロ』EDテーマで、この曲も、このプロジェクトの存在を多くの人に知らしめたものだと思っている。同作のもうひとつのEDテーマ「A/Z」は、スペーシーで壮大な世界観とサビの解放感が素晴らしい楽曲だったが、こちらはイントロのリフから印象的でカッコいい、シリアスさも感じるロックナンバー。どちらの曲も歌っているのはmizukiで、「aLIEz」は、サビでのボーカルの爆発力も凄まじいしエモーショナルなので、気持ちが高まる。
02「Into the Sky」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
澤野弘之自身が劇伴音楽を手掛けたOVA『機動戦士ガンダムUC』。そこでAimerの楽曲「RE:I AM」「StarRingChild」を手掛けていたのが澤野弘之。その後、OVAがTVシリーズ『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』として放送された際に、SawanoHiroyuki[nZk]で主題歌を担当していて、その最初のOPテーマが「Into the Sky」。全編英詞の曲を、歌っているのはボーカルオーディションで選ばれたTielle(チエル)。透明感のある伸びやかな歌声とサビの力強さが魅力的だ。楽曲は音楽配信サイトのiTunesとmoraで単曲総合チャートで1位を記録するなど、大ヒットを記録した。
03「DARK ARIA 」
by SawanoHiroyuki[nZk]:XAI
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』の劇中歌「DARK ARIA
04「Pretenders -eO1-」
by SawanoHiroyuki[nZk]:mica
SawanoHiroyuki[nZk]の1stアルバム『o1』に収録されていた「Pretenders」は、mica & Gemieで収録されていて、その後にリリースされた「Into the Sky EP」に収録されていたのが「Pretenders -eO1-」。タイトなギターリフがカッコいいデジタルロックで、ボーカルのmica(ミカ・カルディト)は、どの音域も魅力的な声質で、その上、激しさも兼ね備えている。ロックな曲調でも映えるボーカリストだ。
05「Club Ki3ε」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie
2ndアルバム『2V-ALK』に収録されたEDMで、ビートが効いていて、クラブで流れていたら、イヤなことを忘れて踊りまくってしまいそうなくらいノれる楽曲。Gemieの伸びやかで曇りのないボーカルが、この曲の明るさ、前向きな雰囲気にマッチしている。
06「FLAW(LESS)」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Yosh
4thアルバム『iv』に収録されている楽曲で、ロックバンドSurvive Said The Prophetの、バイリンガルのボーカリスト、Yoshを迎えた楽曲。ほぼ英詞で、澤野の楽曲の洋楽らしさを体現。楽曲のノリの良さ、ビート感をまったく損なうことのないボーカルが秀逸で、ライブで体を揺らしながら音楽を感じたくなる1曲。
07「i-mage」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer
SawanoHiroyuki[nZk]は、プロジェクトの第一弾として、『機動戦士ガンダムUC』でSawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義でアルバム『UnChild』をリリースしたことから始まった。改めて2人の関わりの深さを感じる楽曲。お互いのリスペクトを感じる開放感溢れる楽曲で、サビで広がっていく景色が見える(まさに、リリックビデオの映像がイメージ通り)。また、この曲こそ、CHAGE and ASKAからの影響を強く感じる。
08「ёmot1on」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Eliana
TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』の挿入歌「KABANERIOFTHEIRONFORTRESS」など、劇伴での歌唱の印象も強いEliana(エリアンナ)。あまりにも素晴らしい楽曲で音数も少なく、シンプルなのに力強い。メロディーの説得力とElianaの表現力、そしてサビでのコーラスで壮大な楽曲に仕上がっている。
09「NEXUS 」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco
『天元突破グレンラガン』『キルラキル』の今石洋之監督と脚本家の中島かずきがタッグを組んだアニメ映画『プロメア』の劇中歌「NEXUS
10「Keep on keeping on」
by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
TVアニメ『アルドノア・ゼロ』の挿入歌として流れた曲だが、聴いたときの衝撃は忘れられない。イントロからキャッチーなフレーズでワクワク感を助長し、楽曲のカッコ良さが、ロボット同士の戦闘シーンを盛り上げていく。アクションシーンでの歌モノというと菅野よう子の『カウボーイビバップ』などが有名だし、澤野も『機動戦士ガンダムUC』から取り入れているが、ポップダンスミュージックがアクションシーンとがっちりハマったTVアニメとして、インパクトは絶大だった。
11「Next 2 U -eUC-」
by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami
TVアニメ『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』のEDテーマ。「Next 2 U」(SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer)よりもギターがノイジーになった新たなイントロ、そして1コーラス目が日本語メインになっているのが「Next 2 U -eUC-」。ボーカルを担当するのはシンガーソングライターとして活躍しているnaNami。宇宙を感じる壮大さと、そこに存在する人間の持つ切なさ、儚さを感じる。ガンダムシリーズのEDにふさわしい楽曲。
12「LEMONADE」
by SawanoHiroyuki[nZk]:XAI
映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ 前編』主題歌で、ベースリフが最高にクールなダンスミュージック。リズムが前面に押し出されているが、裏で踊るように弾いているファンキーな生ギターもおしゃれでカッコいい。Bメロで溜めて、サビで一気にエモーショナルに歌うXAIのメリハリのあるボーカルも素晴らしい。パンチがあるのと同時に美しく響いてくる高音も聴きどころ。
13「Summer Tears」
by SawanoHiroyuki[nZk]:mica
シリアスに始まり、スパニッシュなギターの音色がとても印象的なイントロ。歌自体はとてもメロディアスなので、切なさとファルセットの美しさ、表現力の豊かさなど、ミカ・カルディトのボーカルの素晴らしさがよく出ている。曲を聴き終わったあと、しばらくその余韻に浸っていたくなる名曲。
14「VV-ALK」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
タイトルのモチーフになっているのは、リスペクトするCHAGE and ASKAが1989年にリリースした名曲「WALK」。自分が信じる道を、ゆっくりと歩んでいく。そんなマインドをTielleがエモーショナルに歌っていく。周りに何を言われても、どう思われていても、自分だけの道を真っすぐ進んでいくという強い想いを、美しいメロディーとファルセットで表現しているところもエモい。
15「CRY」
by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
『銀河英雄伝説 Die Neue These』NHK版のOPテーマ。壮大なスペースオペラである『銀河英雄伝説』。専制政治の銀河帝国と 民主共和政の自由惑星同盟が150年に渡り戦争を続けているという世界で、2つの国家に現われた天才(英雄)を描いた作品。SawanoHiroyuki[nZk]名義では「Binary Star」と「Tranquility」に続く、3曲目のタイアップ曲。「Binary Star」のピアノの雰囲気、「Tranquility」の力強さ、これまでの2曲との繋がりを感じさせつつ、「CRY」は日本語詞という新たな特徴もあって、美しさや壮大さよりも、言葉の強さを感じる。
16「N0VA」
by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami
「Next 2 U -eUC-」以来となるこのプロジェクトでのnaNamiのボーカル曲で、作詞もnaNamiが担当している。シンセサウンドが印象的だが、洗練されたバンドアレンジ、コーラスの美しさなど、実にセンスのある楽曲であり、職人の技が凝縮された1曲。ということもあって、この曲に合わせて蕎麦職人が丁寧に蕎麦を作り、澤野は曲を作り、最後に澤野が蕎麦を食べに来るというMVが、実は深くて面白かった。
17「odd:I」
by SawanoHiroyuki[nZk]:Akihito Okano (ポルノグラフィティ)
映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ 後編』主題歌。前編の「LEMONADE」とは違うアプローチの楽曲で、壮大なバラード。しかも女性ボーカルから、男性ボーカルになったことで雰囲気もガラッと変わった。「EVERCHiLD」もそうだが、岡野昭仁のハイトーンボーカルは、最初のフレーズだけで、誰が歌っているのかわかるほどの凄まじい存在感を放っている。澤野弘之の楽曲は、サビで一気に開けるところが魅力的だが、そこでの声の説得力が素晴らしく、とても感動的な楽曲になっている。
18「Christmas Scene」
by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki & Tielle
7thシングル「narrative / NOISEofRAIN」に収録されていたクリスマスソング。mizukiとTielleの透明感のあるボーカルから始まるが、英詞も美しく歌える2人だが、日本語詞であるところが魅力的で、日本語の叙情的な表現は、想像力を膨らませてくれる。2人の声が合わさる多幸感。毎シーズン12月に聴きたくなる楽曲。
19「B-Cuz」
by SawanoHiroyuki[nZk]:SennaRin
DISC 2のラストを飾る「B-Cuz」は、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimerの「Because we are tiny in this world」を、澤野弘之がプロデュースするシンガーSennaRinが、日本語詞で歌唱・作詞をした楽曲。〈どうせ小さな光だと 明日が知っても 忘れ去れない願いの 影を運び今日を歩いてく〉と、メッセージ性のある歌詞を歌う。そして〈Coming back or Give it up for your life〉からの掛け合いは、歌詞も「Because~~」にあるまま。ライブで歌ったら、きっと美しい景色が見られるのだろうと想像できる。始動10周年を記念したアルバムのラストを飾るのにふさわしい1曲。
そして初回生産限定盤にのみ、2024年6月2日に開催された『澤野弘之 LIVE [nZk]008 at NHKホール』のライブのBlu−rayが収録されている。こちらには、ASKAもボーカルとして参加した楽曲も収録されているので、必見だ。
[文・塚越淳一]
CD情報
【発売日】2024年10月2日
【価格】
初回生産限定盤:7,700円(税込)
通常盤:5,500円(税込)
【収録内容】
初回生産限定盤:CD 2枚+Blu-ray(2024.6.2 澤野弘之 LIVE [nZk]008@NHKホール)
通常盤:CD 2枚
公式サイト https://www.sh-nzk.net/
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