『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』日本語吹替版 ジョーカー役・平田広明さんインタビュー|「とにかく宿題が沢山出た映画でした」――狂気の狭間に立つジョーカーの内面とリーとの関係性
2019年に公開された『ジョーカー』の続編となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が、2024年10月11日(金)より公開中です。
社会を震撼させた事件から2年後、アーサー・フレック(ジョーカー)は精神病院で孤独な日々を送っていました。そんな中、音楽セラピーでリーという名前の女性患者と出会い、彼女が自身の熱狂的なファンだと知ったアーサーは彼女に惹かれていきます。音楽に没頭し、共に現実を忘れていくふたり。その過程で、アーサーは再び自らの狂気と向き合うことに……。
今作の日本語吹替版では、前作に引き続きジョーカー役を『ONE PIECE』でサンジ役などを演じる平田広明さん、レディー・ガガ演じる謎の女性リー役を村中知さん、ジョーカーを追い詰めるハービー検事役を『海賊戦隊ゴーカイジャー』でジョー・ギブケン/ゴウカイブルーを演じた山田裕貴さんが演じています。アニメや特撮とは一味違ったお芝居にも要注目です。
本稿では、アニメや吹替、舞台など幅広く活躍されている平田さんのインタビューをお届け。吹替という仕事に対する想いや、ジョーカーやリーといったキャラクターの印象などを語っていただきました。
5年ぶりのジョーカー続編。笑いの難しさと役への向き合い方
ーー5年ぶりの続編となりますが、ジョーカーを再び演じることが決まった際の心境はいかがでしたか?
ジョーカー役・平田広明さん(以下、平田): 決まった時の心境は「さぁ大変だぞ、こりゃ」と。前作から狂気の笑いとか、演じるうえで大変な部分が多い役でしたから。
あの笑いに合わせるのは大変なんです。演技力とか表現力ではなく、職人的な作業の繰り返し。 何回笑ったらむせる、何回笑ったらえずく。ハッハッハなのかファッファッファなのか、そういうのを何回も巻き戻して確認する必要があります。
ーー作中では『ジョーカー』で描かれた事件から2年が経っており、ジョーカーを取り巻く状況も大きく変化しています。どのように役を捉えて演じられたのでしょうか?
平田:あまり考え込まず見たまま、感じたままを演じるようにしています。お客さんに喜んでいただくためにも、僕が見て一番面白かった箇所、印象的だった箇所というのは大事にしたいと思っていて。そういった部分を音響監督と調整しながら収録しています。
ーー吹替版を拝見したのですが、雨の中で笑うシーンは観ていて鳥肌が立つ程でした。
平田:あのシーンは病気の笑いだと解釈しています。笑い出した自分に対して、「今どう思っているのかな?」「どう思いながら笑っているのかな?」というのは、全て拾いきれないし、お客さんにも全て正確には伝わらないだろうと。だからこそ彼の笑いを見て、僕が受けた印象で演じることにしました。向こうの役者の演技に合わせる。吹替はほぼ100%それに尽きますよね。
頭の中で役者さんと相談するんですよ。ホアキンに「これで合ってるよね」、ジョニー・デップに「こういうつもりでやったんでしょう?」みたいな。架空のご本人と相談しながら作るという感じです。
ーーそういう意味では、吹替特有の難しさもありそうですね。
平田:そうですね。収録は村中さん(リー役)も一緒だったんですけど、彼女も苦労していた様でした。音響監督に「もっと、もっと芝居しないで」って言われていたんですよ。
「芝居しない」というのは勿論、棒読みにしろということではなくて、「ご本人の演技を、すべてを腹に落とし込んで過剰に表現しない」みたいなことだと思います。彼女とは別のシリーズもので共演していますが、決してお芝居の下手な声優さんじゃない。抑えた表現も見事に出来る声優さんです。彼女もガガの芝居に合わせて役作りして来たはずなのに「もっと芝居を抑えて」と。僕も他作品で同じことを言われたことがあります。逆に僕はそういう芝居を抑えるスタイルが好きなんですよね。でもたまに「もっと芝居してよ!」って言われます。