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映画『ふれる。』永瀬廉×坂東龍汰×前田拳太郎 インタビュー

秋と諒と優太、3人だけだった世界が少しずつ広がっていく――映画『ふれる。』小野田 秋役・永瀬 廉さん×祖父江 諒役・坂東龍汰さん×井ノ原 優太役・前田拳太郎さん インタビュー

 

「諒と優太と秋の3人だけだった世界が広がった」

──物語全体を通して、キャラクターの感情の変化をどのように表現していきましたか?

永瀬:5人の生活になってから確実に秋は変わったと思います。それまではいつも通りの環境だったから秋も変わるきっかけがなかったと思うんです。共同生活に2人プラスされることによって、秋が今まであまり経験してこなかった気持ちを知って、諒と優太と秋の3人だけだった世界が広がった。

だから、そういう意味では秋が諒と優太以外に自分の気持ちを話すシーンも結構あります。前半と比べて後半から自分の気持ちに対しての台詞量もすごく増えてきたので、そこはやっぱり畳み掛けて話すことが多かったから、そういうところは聴いている方が変化を感じられるように意識しつつ、お芝居していました。

そういう部分は秋にとっても大事な変化であり、この作品にとってもその部分をちゃんと見せていかないといけないと思っていたので、大切にアフレコしていましたね。

 

 
前田:前半のパートと後半のパートで、かなり空気感が違うんです。物語が変化していくなかで、優太を演じていて5人での共同生活が始まってから自分がコンプレックスに思っていたこと、今まで言わないけど2人に対して結構、「背が高い」「かっこいい」とか、心のなかでは思っていたはずなんですよ。

そういう部分で初めて出てくる時の普段の優太と自分の想いが溢れ出ちゃう優太は演じていても変化をつけたいと思っていました。環境の変化を意識して台詞を読んでいました。

坂東:一見、諒は元気で明るい体育会系というイメージなんですけど、物語が進んでいくにつれて疾走感が出てくるシーンは、シンプルに(諒という)人間としてワクワクいきいきしていたいという気持ちがあって。そういう部分は、意識せずに身体が動いてしまうくらいの意気込みで臨みました。

諒が怒るシーンや客観的に2人を宥めるシーンもあって、そういうところの声色の違いは出せていけたら良いなと考えていました。気持ちに幅があるキャラクターだったので、ひとりの人間なんだけど、そう見えないようにしたいなって。楽しく演じさせていただきました。

──秋・諒・優太の関係性の見どころ、もしくは自身の役にとって他の2人をどういうふう捉えて演じられていたのでしょうか?

永瀬:秋にとっての2人は小さい頃からの幼馴染で大切な存在だとは思っているんですけど、秋は口下手なのでそこの不器用さ。その一方で行動や2人に対する態度をみると、2人のこと本当に好きなんだなと。

本当に絵に描いたような、青春の延長線上のような共同生活の中で暮らす3人は羨ましいなと思いますね。頼れる諒と場を和ませてくれる優太が居て、口下手な秋。全然個性も違うけど仲が良いという説得力が感じられて、すごく良いなと思いました。

坂東:生きている上で「友達」って本当に大事だし、かけがえのない存在だと思っていて。

なんでこの3人が3人でいられるのかということを最初に考えた時に、諒からすると意外と秋と優太は客観的に見たら面倒臭い2人だと思ったんです。一緒にいるメリットってなんなんだろう?とか。

でも、島からずっと一緒で共同生活もしていて、これからもずっと友達で居続ける。生涯を通して友達で居続けることはすごいことだし、年を重ねるたびに前の友達関係がどこかで途切れる瞬間があると思うんです。だけど、この3人にはそれがない気がして、ずっと3人で一緒に居るという自信が諒を演じる上では常にありました。

 

 
そして、秋と優太という存在の大切さみたいなものも演じていく中でも強く感じました。この諒という人間には絶対に秋と優太という友達が必要だと思えたので、「ズッ友」というと軽く感じちゃうんですけどそういうことなのかなって……(笑)。

永瀬:軽いねぇ!(笑)

坂東:でも人生において、「ずっとこの人と死ぬまで絶対に一緒に友達でいるな」と思える人って本当に限られていると思います。それがこの3人の中では、他の2人がそうなのかなって。

前田:すごく良いことを話しているのに、やっぱり「ズッ友」のインパクトが……(笑)。

坂東:じゃあ、「ずっと友達」に訂正してください(笑)。

一同:(笑)。

前田:優太から見ても、秋と諒は友達としてすごく大好きで本当にリスペクトがあるなと思っています。

2人のことをすごいと思っているからこそ、優太がちょっと卑屈になったり、コンプレックスを感じたりするんじゃないかな。でも、それがまた良い関係だなと思っています。お互いがお互いを尊重し合っていて、そういうところがすごく良いなって。

僕も仲の良い友達とお仕事でも高め合いながら頑張っているので、3人の関係を自分とも照らし合わせてみたりもして、やっぱり「ズッ友」だなって(笑)。

坂東:おーい!(笑)。

──(笑)。続いて、収録中の思い出などがありましたらぜひ教えてください。

永瀬:「マイクに近すぎる!」って怒られました(笑)。しゃべるためにマイクとの距離がどんどん詰まっていくから、それで監督に注意されるのは分かるんですけど、坂東くんに注意された時は「終わったな」って思いました。

坂東:気持ちが乗っているってすごく良いことなんですよ。マイクとの距離も分からなくなるくらい役に入り込んでいるということだし。

永瀬:多分クセだと思います。

坂東:本当に何回言っても直らなくて(笑)。

 

 

──みなさん横並びで録っていたのでしょうか?

永瀬:そうです。

前田:いつも同じ並び順でね。

坂東:「ここから先は越えるな」って線を引いて欲しいぐらい(笑)。

永瀬:いや、しっかり引かれていたよ。

前田:ありましたよね! カーペットの色が変わるところまでって(笑)。

永瀬:でも、気付いたら入ってしまっていて。

坂東:音が割れちゃうから!

永瀬:でも、ちゃんと自分の声が乗っているのか不安にならない?

坂東:多分、歌を歌っている人って自分の中でのマイクとの決まった距離感があるじゃん?

永瀬:そうそう! いつもはマイクに口をほぼつけて歌っているから、そのクセもあって。

坂東:ここで歌うと気持ち良くちゃんと声が入るっていう場所があるの?

永瀬:そう。普段、その場所で歌っているからそれをみると近づきたくなっちゃう。

前田:あみあみを見ると……。

永瀬:もはや網戸とかも(笑)。

一同:(笑)。

坂東:やばすぎるでしょ!(笑)。

 

 

──(笑)。坂東さんと前田さんのアフレコの際の印象的だったエピソードもお伺いできればと思います。

坂東:一回だけ、優太を忘れちゃった日があったよね?

前田:ありましたね。ちょっとアフレコが空いちゃって……。

永瀬:普通に前田拳太郎になっていたよね?

坂東:急に普段の声のトーンで。

前田:やっぱりほかの役も並行して演じているから、だんだん優太が定まらなくなってきちゃって……(笑)。

優太に戻ってくるのが結構大変で、家でも自分の優太の声を聴いていたんですけど、いざアフレコでマイク前に立ったら分からなくなって、アフレコが始まったら「少し優太の声、違うかも」って言われてチューニングを合わせるのが難しかったですね。

戻ってくるまでにちょっと時間がかかってしまって……その節はお待たせしてしまってすみません。

永瀬:すぐ戻ったけどね。

坂東:いやいや、どっか行っちゃった優太、楽しかったからいいけど。「優太ー!」って(笑)。

坂東:僕は結構、マイク前で大暴れしてしまうので、いろんな音を出しますね……。

永瀬:ガサガサゴソゴソ。

前田:ダンダンドンドン。普通に生のガサガサが聴こえてくるんです。「絶対にマイクに乗ったでしょ!」って(笑)。

坂東:途中から靴を脱いで裸足でアフレコするとか。色々と工夫はしていたんですけど、それでもうるさかったと思います。

 

 

「ふれる」を通じて、コミュニケーションについて考える

──不思議な生き物「ふれる」の能力についてはどう思われているのでしょうか?

坂東:使ってみたいなぁ。単純な興味というか、超能力系が好きだから(笑)。

永瀬:楽ちんだよね、本当に。

前田:僕は相手に対して普段から何を考えているんだろうって、考えて悩んでしまうタイプなので、「ふれる」の能力を使ってみたいですね。多分使ったら使ったで「こう思われていたのか……」って悩むんですけど(笑)。

坂東:僕はお金払ってでも使いたいです(笑)。小さい時にお父さんの頭の中をよく想像していました。

──ちなみに、自分の気持ちが相手に伝わってしまう部分は問題ないのでしょうか?

坂東:全然大丈夫です。相手の気持ちが知りたいですね。

永瀬・前田:(頷く)。

 

 

──「ふれる」繋がりのお話しにはなりますが、みなさんが人とコミュニケーションを取っていく上で大切にされていることをお伺いできればと思います。

永瀬:相手がどんな気持ちでどういうことを思っているのかを想像することですかね。それが当たっているか当たっていないかは関係なく、「相手はこういうことを言いたいんだろうな」と自分なりに汲み取ってみたり、欲しそうな言葉を想像してみたりとか。ある意味、気を遣いながら話しているところはあります。

坂東:この業界に入りたての頃は本当に何でも知りたくて、人間に対して興味津々だったんです。でも最近は、このお仕事を続ける上で人との会話は本当に大事だって改めて感じるようになりました。

何も言わなくても何かが芝居で生まれるかもしれないけれど、その前にお互いのプランや気持ちの擦り合わせが出来ていた方が、更に上のレベルに持っていける。自分が思っていること、相手の思っていることを言える状態にしておきたいな。

前田:『ふれる。』という作品に出演させていただいて、特にコミュニケーションについて考える機会が増えたんですけど、コミュニケーションというものを結構サボりがちなんですよ。普段の会話はもちろんしますが、悩んだ時に自分で全部消化してしまうというか、自分の思ったことをあまり言わないようにしてしまっていました。

相手との関係がこの言葉で変わってしまったら嫌だなとか。すごく悩んでしまうけど、でもちゃんと自分の気持ちを伝えるってすごく大事なこと。長い関係になっていけばいくほど、その部分がすごく重要になっていくので、自分の想いを伝えることをサボらないようにしたいと思いました。

──それでは最後にお芝居について。みなさんは俳優業もされていますが、俳優としてのお芝居と声優としてのお芝居での読み込み段階や役作りのアプローチの仕方に違いなどがありましたらお伺いできればと思います。

永瀬:そんなに僕は読み込み段階では変わらなかったですね。でも、お芝居の仕方とかは全然違いました。

振り向いた時の「あっ」という台詞とか、普段の俳優のお芝居では絶対に無いようなこととかもアニメーションの世界の中ではやっていかないといけないので、そこは難しいなと思いつつ、楽しみつつ進めていきました。

でも、全体的に3人でアフレコもできて、和気あいあいとした環境で収録できてすごく良かったなと思います。
 
坂東:脚本をいただいてからの作業は、俳優としてお芝居をする時と大体一緒でした。だけど、声優を務めるのは初めてだったので、不安要素が多くて、「この場面はどうなるのかな?」「僕の声がどういうふうについていくのかな?」と自分で想像しながらやっていました。

いざ収録現場に行ってアフレコが始まったら、実際にこの声をどういうふうに諒というキャラクターにつけていくのか、という部分を長井龍雪監督が細かく指導してくださったので、監督のOKに委ねていいんだなと思えてからはすごく気持ちが楽になりました。

俳優との決定的な違いは、自分の声に向き合うということ。すごく新鮮でした。普段はカメラに顔や身体、全てが映っているんですけど、今回は「声」の一点集中で表現していかないといけないということで、表現の幅が狭まったようですごく広がったように感じています。この自分の声と向き合った経験が普段のお芝居にも活かされるんじゃないかなと。

前田:声優をやらせていただいて「声」でお芝居しないといけないので、やっぱり自分が「これだけ表現したい」と思ってやっていても、声だけだと伝わりきらない部分がありました。

いつもは表情や身体の動きでやっている部分を声だけで表現しないといけないので、いつもより割り増しで自分の感情を大きめに出すとか。自分が今までドラマでやっていた部分とは違う部分でしたね。

あとは、やっぱり「井ノ原 優太」という役を演じる上で僕の見た目と違うキャラクターなので、どういう風に小さくて可愛らしいキャラクターの声を、優太らしく表現していくかはとても難しかったです。

[インタビュー/笹本千尋]

 

作品概要

オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』
永瀬 廉 坂東龍汰 前田拳太郎
白石晴香 石見舞菜香 
皆川猿時 津田健次郎

監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
音楽:横山 克 TeddyLoid 監督助手:森山博幸
プロップデザイン:髙田 晃
美術設定:塩澤良憲 榊枝利行(アートチーム・コンボイ)
美術監督:小柏弥生
色彩設計:中島和子
撮影監督:佐久間悠也
CGディレクター:渡邉啓太(サブリメイション)
編集:西山 茂
音響監督:明田川仁
制作:CloverWorks

YOASOBI「モノトーン」
(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)

配給:東宝 アニプレックス 
製作幹事:アニプレックス STORY inc. 
製作:「ふれる。」製作委員会
©2024 FURERU PROJECT

絶賛公開中

(C)2024 FURERU PROJECT
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