きみはジョゼやボンボラを知っているか？――SNSで日本とジョージアへの愛を発信するティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使が語る「ジョージアの国産アニメ・オタ活事情」【後編】

昨今、SNSを中心にシュクメルリや民族衣装チョハなどで目にする機会が増えた「ジョージア」という国。そんなジョージアへの愛をX（旧Twitter）を中心に発信しているティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使にインタビューする本企画。

後編となる本稿では、中々知る機会のない「ジョージアの国産アニメやオタク事情」をテーマにインタビューを実施。大使館勤務のダヴィド・ゴギナシュヴィリ専門分析員にも同席していただき、ジョージアの国民的キャラクターやオタ活など多方面に渡ってお話を伺いました。

前編から続けて読めば、きっとあなたもジョージアに行きたくなるはず。

前編はこちら

『ドラゴンボール』ではヤジロベーがお好き!?――SNSで日本とジョージアへの愛を発信するティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使が語る「日本とジョージアのアニメ・オタク事情」【前編】

いまジョージアで一番人気のキャラクター「ジョゼ」とは？

――いまジョージアで人気の国産キャラクターはどんなのがいるのでしょうか？

ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使（以下レジャバ）：ジョージア独自のキャラクターというと、最近うちの子供が虜になっているのが「ジョゼ（ჟირაფი ჟოზე）」というキリンさんです。

https://youtu.be/mrz_9ivAZ8o?si=RTTskIiSDGMNNgJT

彼はYouTubeで展開しているアニメのキャラクターなんです。教育関係の番組（チャンネル）で、歌いながらジョージアのアルファベットを覚えられたり、ジョージアの文化を学べたりするので、ジョージア国内でもとても人気のキャラクターです。最近ではアメリカの会社がジョゼの権利を買って、アメリカでもグッズが出ているんですよ。

――YouTubeのチャンネル登録者が43万人もいるんですね。このジョゼは最近誕生したキャラクターなんですか？

レジャバ：最近です。色々な動画をアップしていますが、特に教育系が多いですね。最近のYouTubeは子供にどんなものを見せれば良いか迷うこともありますが、ジョージアの文化を知ってもらえるし、教育になるので、このジョゼはためらうことなく見せられます。それにお話自体もジョゼは面白いんです。

――日本で言うとEテレ（NHK教育テレビジョン）みたいなものですね。この『ジョゼ』はジョージアの国内で普通にテレビでも流れているんですか？

ダヴィド・ゴギナシュヴィリ専門分析員（以下、ダヴィド）：YouTubeがメインだと思います。

――そうするとジョゼがジョージアの国内で一番人気で、日本で言うと『ドラえもん』みたいな人気キャラクターと思っていいのでしょうか？

レジャバ：はい、ジョゼが一番人気です。

ダヴィド：間違いないです。

――ちなみに『ジョゼ』より前に、ジョージア国内で国民的な人気キャラクターはいましたか？

ダヴィド：私が子供の頃だと『ボンボラ（ბომბორა）（※）』が人気でした。トビリシ（ジョージアの首都）の一番大きい遊園地もボンボラという名前で、そこのメインキャラクターにもなっています。ボンボラというのは日本で言うところの「鬼」なんですが、悪い鬼ではありません。

※編集部注：公式チャンネルが無いためURLは貼れませんが、YouTubeなどで「ბომბორა」と検索するとボンボラの姿を見ることができます

――日本の弁天様とかビリケンさんみたいな、そんな雰囲気のキャラクターですね。『ボンボラ』はどういったお話なのでしょうか？

ダヴィド：ボンボラは可愛らしい鬼なんですが、ちょっと教育やマナーが足りないところがあります。みんなの分までご飯を食べ過ぎてしまったり、うっかり悪いことをしてしまったりもしますが、心が優しいので友達などに諭されたらちゃんと素直に話を聞く良い子です。

例えば、ジョージアではワインを作る時に地中に大きなかめ（クヴェヴリ ქვევრი）を埋めますが、その中で泳いでは駄目だと注意書きがあるのに、ボンボラは読み書きができないのでかめの中で泳いで怒られてしまう。それで勉強しようと思って、ジョージア文字を友達から教わって勉強する話があったりもします。

優しい心を育んだり、マナーなどを覚えるために良いキャラクターだったのかなと思います。でも、ボンボラ自体は30年くらい前の作品ですね。

――ジョージアではアニメと教育が密接に結びついているんですね。

レジャバ：こういった文化を伝える要素があったり、あとは古い物語や神話、おとぎ話など基づいていたりとか、そういう作品は多いです。

――そういった伝統や文化で言うと、ジョージアという国名自体がドラゴンを退治した「聖ゲオルギオス」が語源と聞いたことがあります。この聖ゲオルギオスをモチーフにしたアニメもあるのでしょうか？

ダヴィド：ないですね。どうして無いかと言うと、おそらくですが宗教関係のアニメを避けているのではないかと思います。宗教には色々と決まり事ありますが、そういったものを描くことへの反発や非難を恐れて、アニメなどにするのを避けているのかもしれません。

ジョージア大使館が漫画を発行している!?

ダヴィド：実はジョージア大使館では漫画（※）を発行したりもしています。

――おおっ！　大使館で漫画を発行しているとは思いませんでした。これはネットで読めるのでしょうか？　それとも大使館で配布しているんですか？

レジャバ：たまに大使館でこうやってお客さんに配っているだけですので、世の中には出回っていません。

※編集部注：大使館で発行しているマンガ『タマダくんと行く100日間ジョージア文化の旅』は、主人公タマダ（ブドウやワインの精霊のようなキャラクター）と一緒に全100本の4コマ漫画を通してジョージアの文化を学べる作品。ところどころに『風の谷のナウシカ』など日本の文化ネタも挿入されているので、興味がある方は大使館に問合せてみてください。

ジョージアでオタ活するなら？

――アニメや漫画の話を伺ってきましたが、ジョージアにも日本のアニメを愛する「オタク」がいると思います。ジョージアのオタクのみなさんは、どんなオタ活をしているのでしょうか？

レジャバ：コスプレが人気です。ジョージア国内でも定期的にコスプレ大会が開かれていて、私も参加したことがあります。YouTubeにアップしている人もいますが、ジョージア人のコスプレも結構良い感じだと思いますよ。ちなみにコスプレでも『NARUTO -ナルト』が人気です。

――今回のインタビューを通してジョージアという国に興味を持った人もいると思いますが、日本のオタクがジョージアに行った時におすすめの観光地はどこがありますか？

レジャバ：トビリシの街並みはとても古くて、城壁や10世紀前後の教会が残っているので、コスプレ写真を撮るとすごく異世界な感じになると思います。

それと“ドラクエ（ドラゴンクエスト）の町”とも言われている「スヴァネティ（სვანეთი）」は秘境中の秘境で、ゲームの世界に迷い込んだような感覚を味わえるはずです。スヴァネティには数多くの塔が建てられていますが、その街並みや雰囲気は『ドラクエ』の世界にそっくりなんです。

――スヴァネティの景色を検索してみましたが、最近のアニメだと『葬送のフリーレン』にも出てきそうな風景ですね。

レジャバ：あと『風の谷のナウシカ』のナウシカたちが来ている服は、特に胸元などはジョージアの民族衣装のチョハ（ჩოხა）にそっくりだと言われています。

私には届いております。 https://t.co/Oa8fL15LsF
— ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使 (@TeimurazLezhava) January 23, 2024

――町を歩いているだけでファンタジーの世界に迷い込んだような感覚を味わえるのもジョージアの魅力ですね。旅行と言えばグルメということで伺いたいのですが、日本で有名な「シュクメルリ」以外で、ジョージアでお薦めの料理を教えてください。

レジャバ：私は「ハチャプリ」が一番好きですが、その中でも特に「アチャルリハチャプリ」という中に卵が入っているものはとても美味しいです。これは周りの生地に卵をつけて食べるんです。

ジョージアには「ハピネスチャージプリキュア💫」な郷土料理があると聞き、駐日大使に作り方を教えてもらいました！

今回作ったのは、アチャラ地方で作られる「アチャルリハチャプリ」。別名「チーズボート」とも呼ばれているそうなんですが、とろけるチーズがたまらん… https://t.co/fXB3UBDLqI pic.twitter.com/7Q2tBQ2bYi
— BuzzFeed Japan (@BuzzFeedJapan) October 25, 2020