秋アニメ『ネガポジアングラー』第3話 上村 泰(監督)×岩中睦樹(佐々木常宏 役)振り返りインタビュー|アフレコでも実際に走って、リアルな息づかいを収録!?
毎週木曜22時よりAT-X・TOKYO MXほかにて好評放送中のオリジナルTVアニメーション『ネガポジアングラー』。自身も大の釣り好きである上村泰監督が、『BLUE GIANT』・『幼女戦記』を手掛けたNUTとタッグを組んでお届けする、「釣り」を題材にしたアニメとなっています。
不幸続きな青年・佐々木常宏が「釣り」を通じて、様々な出会いや経験を積んでいく様を描く本作。アニメイトタイムズでは、上村監督と佐々木常宏役の岩中睦樹さんに各話ごとの感想や収録エピソードなど、たっぷりとお話を伺ってきました! 毎話ごとの振り返りインタビューとして、各話放送後の金曜日に毎週更新中。今回は第3話についてのお話となります。ネタバレ満載となっていますので、ぜひ各話を見てからご覧ください!
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走るのが苦手なキャラクターのリアル感を出すため“どれだけダサくできるか”を意識した
――賞金目当てとはいえ、3話ではついに常宏が自ら釣りに行きましたね。
岩中:わかりやすくていいですよね(笑)。
上村:釣りを始めるきっかけって何かしらあると思っていて。大体の人は小さい頃にお父さんに連れて行ってもらったり、近所に海や川がある環境だったり、あとは友達に誘われて……という方も居るでしょうか。常宏の場合はそれがお金という…(笑)。
岩中:でも100万円は大きいですよ。僕も100万円って言われたらさすがに釣られるかもしれません(笑)。もちろん、難しいからこその金額設定だとは思いますが。
――3話はある意味物語のスタートとなる回でしたが、見た感想はいかがですか?
上村:今回の舞台はお台場周辺がモデルとなっていて、実際にロケハンに行ったのですが、そこで制服姿で水遊びする高校生たちが居たんです。僕が高校生の時は田舎の丘の上にある高校で、近くの駄菓子屋でお菓子を買って帰るだけの日々だったんです。なのでお台場でその高校生たちをみて、こんな世界があるんだなって取材時に衝撃を受けまして……。それであの水遊びしているカットが入りました(笑)。
都会で釣りをするという点において、お台場周辺は本当にすごい景色だと思います。レインボーブリッジを目の前にして釣れる場所もあれば、高層ビルの真下に大きな魚が居たりもする。東京に来るまで、そういった場所で釣りをするという認識がそもそもなかったので驚きの光景でした。田舎で釣りをしている時の郷愁感、それとはまた違った”都会の釣り”を少しでも感じてもらえたら嬉しいなと思っています。
岩中:確かに、ビル群などのカットや夕暮れ、夜景が綺麗で、とてもこだわりを感じます。
――岩中さんは3話を見ていかがでしたか?
岩中:僕は今回の話数は町田さん(店長)が好きでした。みんなで釣っている時は「みんなで山分け」と言っているのに、一人で釣らされることになった時は「山分けしない」と言い出して(笑)。上っ面というか上辺だけというか、雰囲気が少し常宏と似ているのかなと思いました。実際に上司として居たら大変そうではありますが(笑)。
――3話では常宏の過去も見えてきましたが、彼は“ネガティブ”というよりも運が悪かったり、トラブルがあった時に逃げてしまうタイプのキャラクターという印象を受けましたが、その辺りはいかがでしょうか?
上村:言われてみればそうかもしれませんね。ああなってしまったからネガティブになったのか、ネガティブだったからトラブルから逃げるようになったのかは「タマゴが先かニワトリが先か」問題のように難しいところですが。
妙にエリート志向が強かったのでそれがへし折られてしまい、逃げる癖がついてしまって、逃げれば逃げるほどネガティブになったのかなっていうのは感じますね。
――今のところポジティブなキャラクターが多く、作品タイトルである「ネガ」を常宏一人が請け負っているようにも感じます。
上村:僕は作品を作る時、キャラクターの多面性は常に心がけています。先程少し話が出た町田もネガティブな一面はあると思うんです。心情をモノローグなどで表現してはいませんが、そういった面は直接描いていないだけで、結局誰しもあると思っています。ですので、常宏一人がネガティブに見えているかもしれませんが、実はそうでもないのかなと。
――岩中さんは、3話を演じてみていかがでしたか?
岩中:この回はとても走りました(笑)。「どんだけ逃げるんだよ」というくらい常宏が走って逃げるので、アフレコでも実際に走って、息を切らしながら収録しました。
僕も走るのが苦手なのでわかるのですが、ちゃんと息を整えて走れないんです。なので、息づかい1つとっても“どれだけダサくできるか”を考えながらアフレコしていました。
――3話では貴明に借り換えとはいえ、借金取りに借金を返済しましたが、あの借金取りたちもインパクトのあるいいキャラクターでしたね。
岩中:あれは何かモデルがあるんですか?
上村:アニメには定番のフォーメーションというものがありまして……女性リーダーに手下2人と……(笑)。企画当初はあそこまでキャラ立ちすると思っていなかったので、正直少し想定外ではありました。
実は脚本の段階では、一度全話数作ってから最後に3話を作り直したんです。3話だけずっとふわっとしていて、最初はあの人たちが出るかどうかも決まっていなかったんです。でも次第にキャラ立ちがすごくなっていき、今のような形になりました。
岩中:悪い人たちではないですよね。心があるというか。
上村:仕事熱心なだけで、どちらかといえば常宏のほうが悪いですからね(笑)。
――今回好きなシーンはどこでしょうか?
上村:僕は追いかけっこのシーンですね。感想のところでも少しお話しましたが、お台場の綺麗な町並みを走り続けて。真俯瞰から橋を描く部分は3Dを使ったりと、何気に豪華に描いているんですね。その辺りも含めて、あの追いかけっこは面白いシーンになったかなと思っています。
岩中:僕もあのシーンですね(笑)。アフレコがすごく大変で印象的でしたし、途中でみんなで休憩してゼーハーしているシーンもドタバタギャグ感があって好きです。
――最後にネタバレにならない程度で構わないのですが、家に住まわせてくれたり、常宏の借金を肩代わりしたりと、貴明は一体何者なのか気になっています。
上村:自分で稼いだのか親が金持ちなのかはわからないですけれど、あの歳で他人の借金を肩代わりするなんて早々できないですよね。
岩中:でも名字がもうお金持ちっぽい名字していますよ、“躑躅森”(つつじもり)って(笑)。
上村:(笑)。彼が何者なのかは、ぜひぜひこの先を見ていただければと思います。
[文・二城利月]
作品概要
あらすじ
鬱々とした日々を過ごす常宏は、ある日借金取りに追われ海に転落したところを、釣り好きの少女ハナとその釣り仲間の貴明たちに助けられる。
ハナに勧められるまま人生初の釣りを経験し、その釣り仲間とも親交を深める常宏。
ハナや貴明の働くコンビニでバイトも始め、難解な釣り用語や生アミの匂いに苦戦しながらも、徐々に釣りにハマっていく。
手元に伝わるアタリは、生の実感――。
転落し続け世界を見上げるだけの人生は、そう簡単に変わらない。
そんな常宏が釣りを通して見つけたものとは……?
キャスト
(C)NEGAPOSI-ANGLER PROJECT