秋アニメ『妻、小学生になる。』平川大輔さん&悠木碧さんインタビュー|悠木さんはキャラクターがかけてほしかったであろう温度感の圧で言葉をスッとかけてくれる
累計部数300万部を突破する漫画『妻、小学生になる。』がTVアニメ化。2024年10月6日(日)よりTOKYO MX、BS11ほかにて放送中です。本作は、愛する妻を亡くした新島圭介とその娘・麻衣のもとに、生まれ変わって10歳の小学生の姿になった妻・貴恵が現れるところから始まる物語。2022年にTVドラマ化もされ、話題となりました。
アニメイトタイムズでは、圭介役の平川大輔さん、貴恵&万理華役の悠木碧さんにインタビュー。作品の見どころや、お互いのお芝居の印象についてお聞きしました。
最初は「こんなにコミカルにやって大丈夫かな」と思っていたのですが……
――最初に原作を読んだときの感想を教えてください。
新島圭介役・平川大輔さん(以下、平川):オーディションの際に初めて読ませていただいたのですが、どのキャラクターにも共感できる作品だと感じました。「こういう考え分かる」「こういう行動しちゃう」という感情がどんどんと押し寄せてくる内容で、最初はオーディションに関わる部分だけ読むつもりだったのに、気が付いたら全巻買って読んでいたんです。それくらい没入して読める作品でした。
新島貴恵&白石万理華役・悠木碧さん(以下、悠木):登場人物がすごく立体的に描かれている作品だと思いました。あまりにも“人間”を感じられすぎて、本を読んでいるのにキャラクターやストーリーだと思えなくなるくらいの感覚になったんです。内容的にはミクロな話をしているにも関わらず、広い人間への愛情を感じる物語で、すごく胸に響きました。
――ご自身が演じるキャラクターの紹介をお願いします。
平川:新島圭介は、見た目は本当に普通のおじさんです。ただ、愛する妻が亡くなってからは笑わなくなってしまって。覇気もなくなり、生きる屍のような状態になってしまいました。そんな彼の元に、小学生の姿になって妻の貴恵が戻ってきます。そこから彼が本来持っていた明るさや強さがどんどん戻っていきますので、その姿を見守っていただければなと思います。
悠木:貴恵はチャキチャキしていて芯も通っていて、家族はもちろん、困っている誰かを見過ごせないくらい、愛情を広く向けられる人です。交通事故で死んでしまいますが、10歳の小学生の姿になって圭介らの前に姿を現します。自身が死んでから暗い生活を送る圭介らに小学生の姿のまま発破をかけるシーンが序盤にあるのですが、あそこに彼女のとりあえずの外郭がすべて詰まっていると私は思いました。
――困っている人を放っておけないし、愛情の深い人物。
悠木:ただ、実はすごく繊細な部分を持ち合わせている人でもあって。優しいからこそ後から「やってしまった」と考えてしまうこともあり、逆に自分が言い過ぎてしまう自覚があるから、一歩踏みとどまることもできるんですよ。とても“人間ができた人”だなと感じています。ぜひ、友達になって欲しいですね!
――演じるうえで、どのようなディレクションがありましたか?
平川:本作は生々しい、人間臭いと言っていいほどのキャラクターが出てくる作品ではあるのですが、圭介はコメディチックになるシーンもあるんですよ。それもあって、ナチュラルさとコミカルな部分のバランスを自分のなかで考えながらお芝居をしていたのですが、ディレクションで「もっとやっちゃっていいよ」と言われたことがあって。
最初は「こんなにコミカルにやって大丈夫かな」と思っていたのですが、お話が進むなかで「あっ、このためのディレクションだったんだ」と納得する瞬間がありました。みなさんにも、あえてコミカルになっている理由をお芝居から感じていただけたら嬉しいですね。
悠木:先ほどお話した繊細な部分を考慮し過ぎてしまい、芝居がウェットになるときがあったんです。なので、「もっとカラッと、明るく」というディレクションをしていただくことが多かったですね。芝居を通じて、貴恵は私が思っていた以上に太陽のような明るさがあって、周りの人の心も照らしてくれるし、立ち上がる強さもくれるようなキャラクターだと感じました。ディレクションをいただいた後の芝居は、「頼れる貴恵になった」と実感し、より彼女のことが好きになりましたね。
平川さんのお声から圭介の人生の重みを感じられて、心が揺さぶられました
――お互いのキャラクターの印象についてもお聞かせください。
悠木:貴恵も優しいですが、圭介はちょっと質の違う優しい人です。自分へは愛情をあまり向けられないけれど、誰かのためとなったらギアが入るんですよね。そこも含めて本当に優しい人だと思います。決して怒りの感情がない訳じゃないですけど、恐らくその矛先を他人に向けることが苦手なんじゃないかな。貴恵は交通事故で亡くなりますが、圭介は運転手に怒りの気持ちがあれども、その感情に走り切れなかったから引きこもるしかなかったのかもしれません。
ただ、物語を通じて彼は優しくて、強い人に進化していきます。とてつもない痛みも伴いながら。今回の物語は、まだ弱い・脆い優しさを強化していくために、神様が彼に与えた試練なのかもしれません。圭介には幸せになって欲しいです!
――平川さんの声からも優しさがにじみ出ていました。
悠木:そうなんですよ! 平川さんの声は業界でいちばん優しいから。でも、ただ優しく穏やかに語りかけるとはちょっと違うんですよ。泣けてくる優しさがあるんですよね。だから、圭介がすごく楽しそうにしているのに、なぜか泣けてきちゃうときがあって。平川さんのお声から圭介の人生の重みやひだを感じられて、心が揺さぶられました。
―― 一方の平川さんは、貴恵にどのような印象をお持ちですか?
平川:貴恵は言動がチャキチャキしていたり、ちょっと勝気だったりという部分がありますが、実は色々と悩んでいますし、とにかく人を慮れる方だと感じています。ちゃんと言わなければいけないことは言うけれど、その人のことを思うがゆえに自分のなかに収める、飲み込むことができるんですよね。すごい人です。
ただ、僕はちょっと危うさも感じました。前のめり過ぎて、支えてあげないと倒れちゃいそうな、そんな印象を受けるときもあって。これは言葉正しくないかもしれませんが、もしかしたらちょっと損な生き方をしている人なのかもしれません。
――周りからはすごく強くて悩みがないような人に見えるから、「あの人は大丈夫だろう」と思われがちになっちゃうのかも。
平川:彼女のエネルギーや光が強すぎるから、なかなか心の内まで気づいてくれる人がいないのかもしれないです。そこにスッとハマったのが、圭介だったんじゃないかな。
悠木:たぶん、貴恵より優しい人でなければ、彼女の痛みには気づけないんだと思います。その優しさを持っていたのが、圭介だったのかも。
平川:彼女も圭介という夫がいたからこそ、吐き出せる場所があって、バランスを保ちながら本当に笑顔でいられたのかなと思います。
――いい夫婦ですね。
悠木:ですね!
――演じる悠木さんのお芝居については、どのように感じていましたか?
平川:現場でどれだけ支えてもらったか分からないくらい、精神的に頼っていました。悠木さんのお芝居って、言葉に乗っかる想い、心の重みや厚みが本当に絶妙なんです。キャラクターがかけてほしかったであろう温度感の圧で言葉をスッとかけてくれるんですよね。だから何の迷いもなく、次のセリフを出すことができました。紡いでくれたセリフをしっかりと聞いて、それに返すことだけに専念ができる、背中を預けられる役者ですね。
悠木:ありがてぇ……。平川さんと共にアフレコという戦場に立てて、光栄です!