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『ふれる。』長井龍雪&田中将賀インタビュー

映画『ふれる。』長井龍雪監督&田中将賀さんインタビュー|「毎回作り終える頃には良い関係だと思えるんですよね」互いに本気でぶつかり合う作品づくり

青春三部作を手がけた長井龍雪監督、岡田麿里さん(脚本)、田中将賀さん(キャラクターデザイン・総作画監督)の3人の最新作であるオリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』が、絶賛公開中です。

幼馴染の小野田秋、祖父江諒、井ノ原優太はそれぞれの気持ちを口にせずとも、心で繋がっていました。「ふれる」と呼ばれる不思議な生き物の力で――。

アニメイトタイムズでは、公開直前のタイミングで長井監督&田中さんへのインタビューを実施。公開前の心境や、制作の裏話などを伺いました。

「ふれる」は元々人型だった!?

──再び長井監督、脚本の岡田さん、キャラクターデザイン・総作画監督の田中さんの3人で作品制作が実現するまでの経緯や実際に決まった際の心境をお聞かせください。

長井龍雪監督(以下、長井):『空の青さを知る人よ』の制作が一段落したタイミングで、「次は何をする?」という軽い雑談から入りました。スペインの映画祭に行った時にその話が出たのですが、プロデューサーの方もいらっしゃったので「一緒にやりますか?」みたいな流れになりまして。割と緩く始まったと思います。

 

 
田中将賀さん(以下、田中):実を言うと、前作を制作している段階から次回作の話は少し出ていて、終わったあとに「じゃあやりましょうか」という感じでスタートしました。なので、あまり改まった雰囲気ではなかったです。

──今作では、東京・高田馬場を舞台に3人の青年の共同生活が描かれ、これまでとは違った雰囲気の作品になっています。このあたりの設定はどのように形作っていったのでしょうか?

長井:前作で秩父を舞台にした高校生の物語に区切りがついたので、今回はそこから一歩進もうという考えがありました。“上京”というワードは早い段階から出ていたので、それならやっぱり舞台は東京だろうと。青年3人が主軸となったのも、今までは女の子がメインになることが多かったので新たなチャレンジとして決めました。割とこれまでとの対比でどんどん決まっていった気がします。

舞台となる場所に関しても、これまでは山に囲まれた景色が多かったので、「海を出しますか」というところから始まって、島を舞台にすることは後から決まりました。

田中:上京してくるという部分をブレさせる気はなかったので、最初はその景色をどうするのかの一点だけみたいなところはありましたね。

 

 

──岡田さんに伺ったところ、これまでも海を出す案は出ていたとか。

長井:表現方法の難しさに悩まされていたのですが、近年のCG技術の発展でようやく実現できそうという話になったんです。

田中:制作に入っていただいたサブリメイションというCG会社さんが、とても良い波を作ってくださったんです。遠慮なく海岸線でキャラクターたちのお芝居を見せられるなと。作画で波を描いていた時代は、いかにして波打ち際のシーンをうまく描くかに苦心していました。

──秋たちの上京後の舞台を高田馬場に設定した理由とロケハン時のエピソードも伺えますか。

長井:僕が東京に出てきた頃の友人が西武新宿線沿線に住んでいたり、上京のイメージと高田馬場という場所が紐づいているところがあったんです。

改めてロケハンをしてみると良い意味で下町感があって、都会過ぎない中にも東京を感じる部分があるというか。

田中:ロケーションとして色々な表情があるのは魅力的でした。ただのビルや住宅街だと、どこを切り取っても絵にならないものですが、何度か登場する公園はロケーションも含めて「ここで良かったな」と思っています。

──秋、諒、優太のキャラクターはどのように作り上げていったのでしょうか?

長井:最初に岡田さんから「3人の男の子」という設定が出てきたので、お酒を飲むシーンも入れたいし、年齢層はちょっと高めにしようと。物語の主軸に「この3人の関係性が環境によって変わっていく」というテーマがあったので、秋がアルバイト、諒が社会人、優太が学生というバランスで、それぞれの生きている環境をバラそうという意図もありました。

 

 
そうやって文字設定を詰めていく中で、田中さんにそのイメージでキャラクターたちの絵を描いてもらって。その絵を脚本にもフィードバックして、制作を進めていった形です。

田中:最初に描いたのは少年時代の3人、企画段階における人型の「ふれる」でした。同世代の中にひとりお兄さんがいるようなイメージだったので、僕の中には『スタンド・バイ・ミー』のイメージがあったんです。3人プラス1をセットで見てもらうという工程をその都度やっていました。

秋の大人しそうに見えて、口下手で先に手が出てしまうみたいなキャラクター性は割と最初の方からあって。いつ頃決まったのかはもう覚えていないのですが、そのキャラクター性を踏まえつつ、中性的な雰囲気で描き上げました。

そこから諒と優太も考えていったのですが、秋の持っている要素ではない部分をふたりに振り分けて、個性や見た目をバラしていくような流れでしたね。これは僕がキャラクターを作る時のパターンになっています。諒は一番分かりやすくて、自分の中で手を付けやすいキャラクターでした。そして、秋と諒にない要素は全て優太に込めました。

 

 

──キャスティングについてはいかがですか?

長井:秋は言葉面だけ見ると真面目で大人しそうというイメージが先行して、オーディションではそこに引っ張られる方が多かったんです。けれど永瀬廉さんの演じる秋には日常感というか、リアルに居そうな感じが滲んでいたのが良かったなと。

諒も言葉だけだと先輩感があるので、その通りに演じてくださる方は多かったのですが、坂東龍汰さんの場合はお兄ちゃんというか、包容力を感じさせてくれたのが決め手になりました。

優太に関しては、アニメっぽいキャラクターだったので一番苦労しました。この子にハマる人はいるのかなと不安だったのですが、前田拳太郎さんはアニメのお約束が分かっている方だったので、ばっちりハマってくれたと感じました。

──先ほどの「ふれる」は元々人型だったというお話には驚きました。どのような経緯でハリネズミのようなキャラクターになったのでしょうか?

田中:ハリネズミのような形になる前は、一度シャチにもなっています。最終進化系としてあの形に収まったんです。どこから出てきたアイディアなのか定かではないのですが、ハリネズミ的な形にしようとなった時、その場のイメージで描いたものがほぼ一発採用になりました。「ふれる」という存在は、設定がハッキリしないと形にできないキャラクターだったんです。その存在が揺れ動く度に姿形が変わるので、かなり難産だったと感じています。

 

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