声優
『Weeknight Storytime -超訳文学 夢十夜-』伊東健人&西山宏太朗インタビュー

貴重な1対1の芝居に10年来の付き合いのふたりが挑む。『Weeknight Storytime -超訳文学 夢十夜-』伊東健人さん&西山宏太朗さんインタビュー

結局、夢ってこういうことだよね

ーー『Weeknight Storytime -超訳文学 夢十夜-』の台本をご覧になった際の感想をお聞かせください。

伊東:1808年の100年後なのかな?というときもあれば現代のゲームの話があったりして、「結局、これは何時代なんだ?」と思わされました。でも、そこでぼやかさないことで輪廻というものを表しているのかなって。

ただこの作品、生まれ変わると言っても、死んですぐなのか、ちょっと時間を空けるのか、それとも過去に戻る可能性もあるんじゃないか。そういう可能性が上手いことぼかされていますよね。

ーーちょっとした会話が伏線になっていたりもしますものね。

伊東:そうですね。ゲームの話とか、ちょっとした遊びのような会話に聞こえますが、実は「今は現代の話なんだ」と認識させる良いスパイスになっていて。そういうふうに、いろいろなところで聞き手の意識を飛ばす仕掛けがあるからこそ、長く感じないんだろうなと思いました。

西山:第1夜でクラシカルな雰囲気を漂わせたと思いきや、第2夜からクソ坊主が始まるという(笑)。演じる身としてはその切り替わりが楽しかったですし、いろいろな旅を一気見している気分になって、これはお得だなと(笑)。1夜1夜のバラエティの振り幅もすごくて、聞き手の満足度が高いんじゃないかなって思いました。

ーー登場人物が良い味を出していますよね。

西山:この作品、登場人物が素直じゃないといいますか、曲者ばかりで物語の良いスパイスになっているんですよね。演じる身としてもこの曲者たちを演じてみたいなと思わされましたし、それだけのパワーがある脚本なんだなと。

ーー物語の幕開けとなる第1夜は不思議な雰囲気に包まれていました。

伊東:どこか神秘的な雰囲気でした。そもそも、この物語をふたりで喋るって変なんですよね。ふたりでひとりを演じているみたいで、演じる身としても異質さは感じていました。

西山:第11夜を終えたあと、またこの第1夜を聞き返してもらうと、いくつか伏線があったことに気付くと思うんですよね。ふたりとも同じ夢を見ていたんじゃないかなって。

伊東:全部ハッキリと言っていないのが良いところだよね。

西山:たしかに。個人的には、暗闇で声を揃えるところが難しくて印象に残っています。

伊東:あー。「せーの」と言うわけにはいかないし、顔の動きを見ることもできないからね。

西山:そんな緊張感が漂う中、どちらかが息を吸うタイミングに合わせてセリフを読みました。稽古のときは本当に合わせられるのか不安ではありましたけど、初日やリハーサルが上手くいったので、この調子で本番も頑張りたいです。

ーー合図もなしに声を揃えるのは大変ですよね。

西山:そうですね。ただ、ふたりが混じり合って、バラバラの人間が重なっていくようなところはこの作品の大事な部分ですし、ふたり芝居ならではの要素でもあるんですよね。そして、その要素の数々が第1夜の段階で表現されていたというのがまた面白いですね。

ーー第1夜はシリアスな展開を感じさせましたが、どんどんコミカルになってきて、第5夜では漫才のような掛け合いを楽しめました。

伊東:コントみたいでしたね(笑)

西山:そうそう。みなさんの緊張感がほどけているのが伝わってきて嬉しかったです。

伊東:このあたりから笑い声が聞こえたりしてね。そもそも、この物語の登場人物たちはギャグをやっているつもりではなく、至って真面目なんですよ。なので、こちらとしても真面目に演じていたところはあります。

ーーそのおかげで、どこかシュールなギャグ感が出ていたのですね。一方、第6夜はシリアスとも、コミカルともちょっと異なる物語でした。

伊東:1番中身がない物語でしたね(笑)。自分が暇な大学生だった頃を思い出しました。

西山:(笑)

伊東:すべての言葉に意味がないんですよね。

西山:そうそう。会話をしているけど、頭の中では「ラーメン食べたいなぁ」とか違うことを考えているような感覚だったんじゃないかなと。

伊東:でも、彼らは今の大学生っぽいけど、おそらくちょっと前の時代なんですよね。運慶とか普通知らないですから。

ーーそして第10夜。難しい言葉がありつつ、徐々に夢から覚めていくような内容でした。

伊東:深いのか深くないのか、辻褄が合っているようで合っていないような。結局、夢ってこういうことだよね、と思いました。

西山:これもフワッとしていましたが、最後に本人たちがすごく良い言葉を言っていたように、『夢十夜』の最後にぴったりなお話だと思いました。ここと第11夜を聞いて、また第1夜に戻ってもらえば、ループものみたいな楽しさがあるんじゃないかなって。

伊東:我々が同じ演目を2回やる意味がこのお話にありましたね。2回目の人にとってはまさに「この話、どこかで聞いたな」みたいな気分を味わってもらえるでしょうし。

ーー今回、役が逆になるということで、なにか挑戦したいことはありますか?

伊東:同じ内容ではあるものの、演じる人物の心情が全く別物になるので、「これは男2のほうがやりやすかった」とか、逆に「ここはスラスラ読めるな」みたいに、両方演じたからこそ自分の本質に触れられるところがあるんじゃないかなって。その噛み砕く作業を楽しめるように本番に挑もうと思っています。あと普段は小さい子を演じることはほとんどないので、そういうところはやりやすい、やりづらいを抜きにして楽しみたいですね。

西山:今回はテンポや空気感をお客さんの反応を感じながら、しかも、ふたりっきりで作り上げていくところは、どこかセッションみたいだなって。加えて、BGMを使わず、声だけで物語を想像してもらう仕組みになっているので、こちらとしてもわずかな情報でどうやってイメージを膨らませてもらえるかは挑戦になりました。しかも1回限りの公演なので、それぞれの回でしか生まれない表現を楽しんでほしいです。

ーー最後に、公演を観てくださった方へメッセージをお願いします。

伊東:この作品は何回も見返してもらうことで見えてくるものがあります。二人芝居を2週間にわたって演じることで、新しい空気を作り出せたんじゃないかと思います。新しい空気を感じながら楽しくやらせていただきました。ありがとうございました。

西山:今回、ひとり20役を演じていますが、それだけいろいろな人物を見てもらえるのは演じる身としては嬉しいことです。また、みなさんからの反応があって作品が完成するなということを本番を通じて感じました。またこういう機会があったら遊びに来てください!

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様々な名作文学を現代的な表現でアレンジし、“朗読劇”というエンターテインメントに落とし込む企画「超訳文学」。その最新公演は夏目漱石の名文学『夢十夜』を原作とした朗読劇『WeeknightStorytime-超訳文学夢十夜-』。原作と同じく夢なのか、現実なのか、曖昧だけどどこか心地の良い物語の数々が、現代的なアレンジが加えられた新文学として生み出されました。演じるのは伊東健人さんと西山宏太朗さん。ふたりきりの舞台は貴重で、しかも、全2回の公演はそれぞれ役が逆になるという朗読劇としても珍しい仕掛けが特徴的です。今回、2024年10月8日に開催された第2回公演の様子をレポートします。「百年は、もう来ていたんだな」ステージに明かりが灯ると、席に着いた伊東さん、西山さんは“僕”に扮し、「こんな夢を見た」と僕が見たありのままの光景を語っていきます。第1夜は夢だけどどこかリアリティを感じさせる不思議で曖昧な物語です。僕の前には死にかけの女性がひとり。そんな状況で僕は、焦るわけでもなく淡々とその光景を言葉にしていきます。異様な情景を想起させるものの、その女性も女性で、僕に対して「お墓の傍で待っていてください。また逢いに来ますから」と意味深な言葉を投げかけ...

Weeknight Storytime -超訳文学 夢十夜-

原作
夏目漱石『夢十夜』

公演日時
2024年10月1日(火) [開場] 19:00〜 [開演] 19:30〜
2024年10月8日(火) [開場] 19:00〜 [開演] 19:30〜

会場
アニメイトシアター(アニメイト池袋本店 B2F)

脚本・演出
村井 真也

キャスト
伊東 健人
西山 宏太朗

公式サイト

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