『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』エラスマス・ブロスダウ監督、彌富健一さん、由良浩明さん鼎談インタビュー|「また違ったガンダム、また違った一年戦争の作品として楽しんでもらえれば嬉しいです」
2024年10月17日(木)より、いよいよNetflixで世界配信がスタートした『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』。
アニメイトタイムズでは、その配信に際して監督のエラスマス・ブロスダウさん、プロデューサーの彌富健一さん、アニメーションプロデューサー兼音響監督の由良浩明さんへのインタビューを実施しました。
海外のスタッフ陣との制作というこれまであまり見られなかった試みが実現するまでの経緯や、ジオン公国軍のイリヤ・ソラリを主軸としてガンダムというモビルスーツを恐ろしい存在として描いた理由などを中心に伺っています。
ぜひ作品の視聴前後にご一読いただければ幸いです。
『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の登場機体は積極的に取り入れたかった
――まずは、ガンダムシリーズの映像作品を海外の方たちと制作するこれまであまりなかった試みが実現するまでの経緯をお願いします。
彌富健一さん(以下、彌富):Netflixさんで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を日本以外で独占配信する契約をしていただくことになった際の打ち合わせがあったのですが、その当時Netflixさん側のプロデューサーだった櫻井さんから、「Unreal Engineでガンダムシリーズを制作したら面白いんじゃないか?」という提案がありました。
そこから本作の企画がスタートして、Unreal Engineでやるのならばとてもいい人がいるということでエラスマス監督を紹介してもらい、最初に色々と試しに制作してもらったところでいけるのではないかとなりました。
――ブロスダウ監督はこの試みが実現した際にどんな心境だったのでしょうか?
エラスマス・ブロスダウ監督(以下、ブロスダウ):僕自身も以前からガンダムシリーズのファンなのですが、ドイツ人の自分が監督としてガンダムシリーズに関われるなんて、最初は不安もあったのですが凄く嬉しかったです。それこそ、これは本当に現実なのかと信じられないくらいでした。
――先ほど『閃光のハサウェイ』の海外配信の話がありましたが、海外でのガンダムシリーズの現状はどのようなものなのでしょうか?
ブロスダウ:他のヨーロッパの地域はわからないのですが、ドイツではガンプラから入ってファンになることが多いです。そこから最初に触れたのが漫画のガンダム作品で、その後にアニメ作品という形でハマっていきました。
彌富:80年代くらいまではビデオを各国でローカル販売するのがやっとで、範囲的には狭いような状況でした。そこからネット配信という方法が確立されたことで、ガンダムシリーズだけでなく日本のアニメが世界の方々に見ていただけるようになっていった形です。
――ちなみに、ブロスダウ監督はシリーズの中でもどの作品を気に入っていますか?
ブロスダウ:『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ですね。この作品は一味違った視点で戦争の現実を見られますし、ジオン側、連邦側双方の心境が理解できるようになっているのが魅力的に感じました。
――ありがとうございます。また、本作の展開にあわせて『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』『機動戦士ガンダム MS IGLOO』の一挙配信が行われました。そんな2作同様に本作もミリタリー色が強い作品になりましたが、この作風は当初から決まっていたのでしょうか?
彌富:最初からガチの戦争ものを一年戦争の世界観でやりたいという構想がありました。『機動戦士ガンダム MS IGLOO 2 重力戦線』みたいなものを今のUnreal Engine 5の力でやったらどうなるのか、みたいなところが気になっていたんです。
――『機動戦士ガンダム MS IGLOO』からおよそ20年近くが経過しましたが、本作のCGはそれだけの大きな進歩が感じられました。こだわっている部分をお教えください。
ブロスダウ:クオリティの観点でいうと、今回は戦争物なのでモビルスーツの怖さやスケール感、リアリティを大切にして表現できるよう気を付けています。人物とメカのスケール感の違いは特に大切にしていた部分です。
――陸戦強襲型ガンタンクやザクタンク、グフカスタムといった『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』『機動戦士ガンダム MS IGLOO』のファンが嬉しいモビルスーツが登場することも嬉しいポイントでした。この辺りは意図したものだったのですか?
彌富:本作は『機動戦士ガンダム』で描かれたオデッサ作戦より前の出来事なので、宇宙世紀のタイムラインを踏まえると出せる機体には制限がある。その中からどの機体を登場させるのかは、協議した上で進んでいきました。特に『機動戦士ガンダム MS IGLOO』は本作以前にフル3DCGで制作されたシリーズ作品ということで、登場していた機体は積極的に取り入れたかったところがあります。