音楽
カノエラナがED主題歌を担当した『アクロトリップ』の魅力を語る|「リバーシブルベイベー」リリース記念インタビュー

カノエラナさん 6thシングル「リバーシブルベイベー」リリース記念インタビュー|『アクロトリップ』ED主題歌となっているリード曲は、自身の趣味を貫いた“超元気なアニソンの理想形”

 

苦手なダンスに挑戦したMVや、これまでなかった雰囲気のジャケットにも注目!

――MVのダンスも印象的でした。

カノエ:曲調からして「踊らなきゃね」というのはスタッフさんとの話の中でもあって。「めっちゃカラフルで、場面展開が多い感じで、お菓子の箱などカラフルなものがいっぱいあるイメージで」と伝えてできたのがあのMVです。

まず、私は踊るのが苦手なので「どうしよう?」と。ダンスの先生が一生懸命教えてくださったし、事前にしっかりしたダンス動画も送ってくださったので、大きな鏡がある美容室で髪を整えてもらいつつ、必死に練習して本番に挑みました。

撮影前日に「Animelo Summer Live(アニサマ)2024 -Stargazer-」に出演して、めっちゃ体が疲れた状態だったので、すごく眠くて。人生で初めて「メガシャキ」を飲みました(笑)。

――カノエさんが悪のボスみたいな感じで、人形たちに囲まれている中、一人だけ全身タイツの人が混じっているのがシュールで。

カノエ:私から「登場人物はたくさんいたほうがいいんですけど、生身の人間じゃないほうがいいです」とお伝えして。今までのMVで共演しているのも人間じゃない、着ぐるみさんなどが多くて。「リバーシブルベイベー」もそういう系の曲だと思ったので、リアリティよりも二次元寄りにして、『アクロトリップ』と整合性をとるようにオーダーしました。

映像のトーンも明るいですが、最初と最後は悪の組織感が出ているところも作品に繋げたかったところもありますし、「好きだよ」という要素も手をつないだりして、ちゃんと入れていて。作品に寄り添いつつ、カノエの曲としても成立していて、いろいろな要素を組み合わせながら、きれいにまとまったMVになっていると思いました。

――映像にいろいろな加工も施されていて、ポップな仕上がりになっていますね。

カノエ:「ポップだけど二次元的に」というのを大事にしていて。「私の顔なんてわからなくていいので、とにかくガチャガチャさせたいです」と。

――情報量がすごく多いMVですね。

カノエ:「どこを切り取っても絵になるような、不思議なMVにしたいです」というオーダーもしました。

――サビでカノエさんが踊っている振りは楽しく、誰でも振りコピしやすそうですね。

カノエ:でもライブで踊るには大振りすぎるという(笑)。今後、小さい振りバージョンの動画をアップしたいと思っているので、皆さんもライブで一緒に踊ってほしいなと思っています。

 

 

――ジャケットはアート作品のような、おもしろいイメージですね。

カノエ:デザイナーさんが今まで作ったもののリストがあって、それを見たらとても素敵だなと思って。その感性を活かすためには、私の要素はあまり入れないほうがいいのかなと。「衣装のイメージと何かガチャガチャしたものを置きたい」くらいのオーダーでした。バックや全体的な色合いは衣装が決まった後にお任せで、私がアーティストさんに触れた、みたいな新しい感じのジャケットになったんじゃないかなと思います。

――カノエさんの顔が映る鏡がコンパクトだとすると、『ひみつのアッコちゃん』を思い出して、魔法少女つながりかなと思いました。

カノエ:自分自身ではあるけど、自分自身ではないところが鏡のおもしろいところで。楽曲も何かになりたいとか何かをやめたいという相反するリバーシブルな部分を表現したくて、こうなったのかなと思います。

 

自身の内にあるギャルマインドに気付き生まれた「COCO♡ギャル」。ライブでは裏ピースをみんなにやってほしい!?

――カップリングの「COCO♡ギャル」は、パワフルでギャルマインドにあふれた曲ですが、どうしてこのような曲を作ろうと思われたのでしょうか?

カノエ:「秘密鹿江倶楽部」という怪しい名前のファンクラブをやっているんですが、ファンクラブの中の配信で、私が急にギャル口調になり出して、「世の中、みんなギャルテンションになれば楽しくね」とか「マイナスも全部プラスに思えなくね」という話から、皆さんのコメントとのギャルの掛け合いが始まって(笑)。そこから「ギャルの曲、今度作るわ!」と。「リバーシブルベイベー」がCDとしてリリースされるということは、あと2曲収録できるので、「ギャルの曲作りたくて。入れていいですか? 絶対におもしろい曲にするので」と予告した上で作って、カップリングとして入れました。

この曲も昔ながらのカノエを知っている方だったら、「リバイバル・カノエじゃん!」というテンションになるのではないかなと思います。

――サウンドもアッパーでパンチがあって、最初はギターが効いていて、途中で無国籍風になったり、ソウルっぽさを感じたり、アゲアゲだけど不思議なサウンド感で。

カノエ:この曲は「リバーシブルベイベー」にはなかった、ライブでのやりやすさやみんなとの掛け合いのしやすさ、アゲアゲのテンション感をメインに作りました。

――歌詞に「ココロにギャル♡飼ってこーぜ」や「マインドギャルやってこーぜ」とあるように、どんなにストレスやむしゃくしゃすることがあっても、ギャルになった気分で乗り切っていこう、という元気になれるチアソングになっていますね。

カノエ:私はギャルではありませんが、悪いことや嫌なことがあってもご飯を食べて、寝て起きたら忘れてしまうタイプなので、実はギャルマインドだったことに気付いて。「だったら私にもギャルの歌が書ける」と。声色はローテンションギャルですが、ノリノリな感じの曲になりました。

――韻を踏みまくったり、高速ラップがあったり、言葉遊びがあるのもカノエさんらしいです。

カノエ:ただのギャルではなくて、和をたしなんでいるギャルみたいな(笑)。そういう要素は入れたかったし、私のコンセプトとして和風要素がずっとあって、要所要所に和風のテイストをちょこちょこ入れてきたので、今回もバッチリ入っています。あとラップっぽいパートは毒づいているところをわざとラジオボイス風に汚す工夫もされています。

――この曲はいい意味でガチャガチャしていますね。

カノエ:ガチャガチャしています(笑)。歌詞と曲と私自身のキャラクターの整合性をとらないと気が済まないので、結果、いっぱい盛り盛りにしたくなっちゃうところはあります。

 

 

――この曲を聴くと「カノエさんって陽キャなのかな?」と思う人がいるでしょうね。でもインタビューで何度かお話ししていますが、陽キャっぽい要素はまったく感じなくて。

カノエ:グレーゾーンを行く感じで(笑)。もう1曲の「人間やめたい」を聴くと、カノエのことがどんどんわからなくなるという(笑)。私がいったい何色なのかを皆さんに見つけてほしいですね。

――この曲もブラスが効いているので、「リバーシブルベイベー」と地続きで違和感なく聴けます。

カノエ:1枚のシングルの中で、あまりボコボコしないようにしています。でもロックさはこの曲のほうがあるので、テンションで持っていくよ~んという感じでしょうか。

――レコーディングも「リバーシブルベイベー」よりパワーが必要だったんじゃないですか?

カノエ:「リバーシブルベイベー」のほうがカラフルな表情で歌っているので振り幅が多いけど、この曲はギャルと私のテンションの幅くらいでしたし、テンション高い系のギャルじゃなく、私に近かったこともあって。自分が許せるギャル度合いを何テイクかやって、「今のはちょっとテンションが高かったので違いますね。もっとダウナーなんです。このギャルは」みたいな(笑)。それ以上はいってはいけないというラインをずっと探っていました。

自分がいつも思っている「何とかなるっしょ!」というところを出せばいいんだという感じでレコーディングに臨んでいました。

――お気に入りのフレーズは?

カノエ:「さぁ!さぁ!声出してこー」です。自分でも気に入っていて、聴いていても思わず「ふふっ」とほくそ笑んでしまいます。「ギャルのカノエはそんなに声出してないじゃん」というツッコミもありそうですが、裏ピースで「みんなでアゲていこうよ、イエー!」みたいなところが好きです。ライブでは「裏ピースピースピース」のところをみんなにやってほしいです。ちゃんと目を伏せて(笑)。

あとこの曲は、初期の頃にずっと一緒にレコーディングをしていた浅野(尚志)さんにアレンジしていただいたので、すごく思い入れのある曲になりました。昔は私の曲を聴いていたけど、最近聴いていないんだよね、という方にも聴いてほしいです。

 

誰もが持つやり場のない気持ちをアコギで弾き語った「人間やめたい」

――先ほども少しお話にありましたが、もう一つのカップリング曲「人間やめたい」は、前2曲と対照的にフォークソングっぽい、しんみりした曲です。

カノエ:結構前からあった曲で、私のファンクラブ内のラジオ番組で、「人間関係って難しいな」という話になったときに一番最後に歌う曲でした。「この曲の歌詞がめっちゃ好きだ」という声をたくさんいただいていたこともあったし、リクエスト曲を募ると割と上位にきていたので、いつかどこかのタイミングでCDに収録したいという気持ちがずっとありました。「とんでもなくうるさい2曲の後にこの曲がきたらいったいどうなるんだろう?」という反応や反響を知りたかったので、今回収録しました(笑)。

あと、タイアップなどでは明るく歌っていますが、弾き語りのライブをしたり、弾き語りで歌っていることをより多くの人に知ってもらうための名刺代わりの曲になればいいなという想いもあります。

 

 

――歌声といい、アコギの音といい、歌詞といい、“深夜4時感”がありますね。音のない深夜に考えが行ったり来たりして、どうしようもないときの感じみたいな。

カノエ:この曲で歌っていることは、私だけではなく、たぶん皆さんも思っていることじゃないかなと。わざわざ言葉に出すほどでもなく、「人間やめてぇ」と独り言をつぶやくくらいの深夜、そしてもう朝方になるんじゃないかというときの、表しようのない、行き場のない想いを全部曲に閉じ込めてみたらどうなるのかな、という曲です。

――落ち込んでいる深夜に聴いたら泣いてしまうかも。

カノエ:でも最後に折り合いをつける、じゃないですけど、「このままでもいいかもしれない」と思えるような、自分を救うための曲でもあるので、自分のマインドがめっちゃ入っていて。常に「床になりたい」とか「花になりたい」とか、人ではないものになりたがる自分ではありますが、「人生を結構楽しんでいるじゃん」というところに落ち着くのは私らしさがすごく出ているなと思います。

――そのような歌詞をアコギ一本で歌っているので、60~70年代に流行ったフォークを思い出しました。

カノエ:両親の音楽の影響を強く受けていることもあって、フォークなど昔の曲をよく聴いていました。両親はいろいろなジャンルやアーティストの曲を聴いていたので、私も自然と聴いていました。誰のどの曲というのは幼い頃だったのでわかってはいなかったけど、フォークソングの欠片みたいなものを持っていたし、制作しているときも「こういう歌にはこういう曲調が合うだろうな」とポロンと自分から出てきた、昔ながらっぽい曲、自分のルーツの部分を入れたい気持ちもありました。

今回の3曲を並べてみると、ルーツ的なものがちゃんと入れ込まれていて、カノエを知るためにはいいシングルになったんじゃないかなと思います。

――「人間やめたい」はお父さんどころか、おじいさんが聴いたら懐かしんだり、ハマってしまうかも。

カノエ:そういう曲をライブで歌うのが好きなので、「そういう曲入れて何が悪いんだ!」みたいなテンションです(笑)。

 

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