大バズ超カロリーグルメ漫画はどうやって生まれた? | 『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』第1巻発売記念! まるよのかもめ先生インタビュー
第1話が公開されるや否やXで日本のトレンド入りし、各話公開する度に劇中の描写が話題になる漫画。それが2024年1番話題になった漫画と言っても過言ではない『ドカ食いダイスキ! もちづきさん(以下、もちづきさん)』(ヤングアニマルZERO&ヤングアニマルWebにて連載中)。「次にくるマンガ大賞2024」Webマンガ部門第8位&特別賞「冷凍食品はニチレイ賞」を受賞し、LINEスタンプやコラボカフェも決まるなど、正にドカ食いの秋が到来しています。
本稿では、10月29日(火)に第1巻が発売されたことを記念して、作者・まるよのかもめ先生にインタビューを実施! 『もちづきさん』の誕生秘話や影響を受けた作品、SNSで話題になった「もちづきさんのカレー」が生まれるまでの経緯など、様々な話を伺いました。読めば貴方も“ドカ食い”したくなること間違いなし!
OLが密室でどうやって狂っていくんだろうと考えた結果の「もちづきさんのカレー」
──第1巻の発売おめでとうございます。連載開始から話題を集めている『ドカ食いダイスキ! もちづきさん(以下、もちづきさん)』ですが、そもそも「ドカ食い」をテーマにするというのはどんなきっかけで生まれたのでしょうか?
まるよのかもめ(以下、まるよの):担当さんとの打合わせの際に「グルメ漫画を描くのが良いのではないか」という話になり、「みんなが好きそうで、暗に見たがっていそうなテーマって何だろう?」と考えた時に「ドカ食い」が良いんじゃないかと浮かんできたんです。私自身の気持ちを乗せやすいテーマでもあったので「いっちょこれでやってみっか」くらいの気持ちでネームを切ってみました。
──そうすると先生も食べることはお好きなんですか?
まるよのかもめ:はい、大好きです。
──第1話以降も様々なシーンがSNSで話題になりましたが、特に個人的に衝撃を受けたのが水と麦茶を半分ずつ紙皿に注いだだけの料理「もちづきさんのカレー」です。どうしたらこんな料理を思いつくのでしょうか……?
まるよの:あれは食欲に抗い続けるOLが密室でどうやって狂っていくんだろうと考えた結果です。きっと会社の給湯室にあるもので精一杯あがくんだろうと考えた時、給湯室には紙皿やコップとかお茶があるはずなので、それを駆使して何か美味しい食べ物の幻想を見るんじゃないかと考えたんです。
ヤングアニマル担当(以下、担当):第3話は完成するまで結構時間がかかりましたよね。
まるよの:そうですね。あの「もちづきさんのカレー」は最後の最後にひねり出したアイディアだったと思います。
担当:「もっとクレイジーにしてほしい」という要望を伝えて、それで最終的にあの形になりました。
──その結果、「もちづきさんのカレー」が読者に強烈な印象を残したので苦労が報われましたね。
まるよの:あそこで頑張って良かったです。
『でんぢゃらすじーさん』に出会ったことは私の人生のターニングポイント
──『もちづきさん』が愛される理由の一つに「「ある」のがいけない!」「血液が塩水になりそう」「真っさらに枯渇しきった体が…不健康で満たされていく…‼」といった強烈なパンチラインの数々があると思います。こういったセリフの引き出しが凄いですね。
まるよの:皆さんに良い反応をいただけたフレーズほど、実は、パッと閃いたものを採用していることが多いです。
──パッと閃いたのがあのパンチラインというのは驚きです。もう一つ『もちづきさん』が愛されているところに、漫画全体の勢いもあると思います。「大丈夫」と言った次のページでダメになっているような、この漫画の構成やスピード感を作る上で何か意識していることはありますか?
まるよの:展開的な話だと、読者の期待通りに話が進む気持ちよさと、その期待や予想が裏切られた時の驚き、この2つのバランスが上手く合わさると面白い漫画になるんじゃないかと思っています。コマ割りやページを開いた瞬間のインパクトでも、そういった要素をしっかりと出せるように意識して描くようにしていますね。
──以前、雑誌の企画で伊藤潤二先生の『長い夢』を挙げられていました。伊藤潤二先生の漫画も独特のスピード感がありますが、影響を受けている部分はありますか?
まるよの:伊藤潤二先生の作品は凄く好きなので、多分あると思います。先生の作品はギャグとホラーが紙一重のようなところもありますよね。そういったところは先生から影響を受けて自分の作品に反映されているような気がします。
──言葉は悪いですが、グルメ漫画としては異様に語彙力がない味の感想も個人的に大好きで、例えば「しょっぱくてうまい」みたいな直球の表現とか最高です。
まるよの:ありがとうございます(笑)。ご飯を食べた時のファーストリアクションって、むき出しの感情の方が正直だと思うんです。
例えばテレビ番組の食レポでも、一口目を食べて「美味しい」じゃなくて「これはこういう材料でこう調理しているから」なんて説明されたら、ちょっと嫌じゃないですか。だからこそ一番最初に感じるむき出しの感情を言わせているので、もちづきさんの語彙力も自然に失われているんです。
──ということは、むき出しの感情を言う時にセリフが手書きになっているのは、正にそれを表しているんですね。
まるよの:この吹き出しのセリフを大きく手書きにするという手法は、私の尊敬する漫画家の曽山一寿先生が『絶体絶命でんぢゃらすじーさん(以下、でんぢゃらすじーさん)』でやられている手法なんです。
曽山先生は毛筆みたいなタッチで吹き出しいっぱいにセリフを書かれるじゃないですか。きっと曽山先生も手書き特有の勢いや拙さを意図してやっているんだろうと思って、そのアイディアを参考にさせていただいています。
──曽山先生のお名前が出ましたが、まるよの先生はコロコロコミックが好きだったんですか?
まるよの:私はずっとコロコロ(コミック)一筋の小学生時代を過ごしていました。多分それが今の自分の感性に影響していて、『でんぢゃらすじーさん』に出会ったことは私の人生のターニングポイントだったと思います。