劇場版『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』エグゼクティブプロデューサー・塚田英明さん×監督・椛島洋介さんインタビュー|鳴海荘吉/仮面ライダースカルの格好良さを追求した、新生「ビギンズナイト」ができるまで
大嶋凪は“冴子絡みの男”のエピソードZERO!?
ーー今作の鍵を握る鳴海荘吉というキャラクターを描くうえで意識したことはありますか?
椛島:劇場版で鳴海荘吉を描くにあたって、塚田さんからお誘いいただいて、吉川晃司さんのライブに招待していただいたんです。
塚田:吉川さんに直接会っていただきました。
椛島:イラストもお渡しして(笑)。今作の荘吉の声は津田健次郎さんにやっていただきましたが、翔太郎と同様に佇まいやお芝居など、声を伏せても吉川さんの鳴海荘吉に見えるところをまずは目指しています。
実は吉川さんとお会いした帰りの電車の中で、鳴海荘吉というキャラクターが突然降りてきたんですよ。
特にアントライオン・ドーパント戦で変身する直前までの流れで、「なぜ彼が探偵業を休業したのか」「なぜそれを撤回するのか」という感情が繋がり始めました。小さな翔太郎が必死に頑張る姿を見て、それまでの自分に腹が立ったというか。そういう荘吉の内面が見えてきて、シーンの方向性が感情に寄せた演出にガラッと変わったんです。吉川さんとお会いできたことがきっかけになって、荘吉により深く入り込めたと感じました。
よく見ると、すごく人間味溢れるキャラクターなんですよね。(塚田さんに向けて)そういった荘吉の性格作りって、どういう考えで作られたんですか?
塚田:そもそも『仮面ライダーW』は、主人公の左翔太郎がハードボイルドになりきれない“ハーフボイルド”である、そんな彼がある瞬間だけハードボイルドになれるという物語です。そんな中で鳴海荘吉には、ハードボイルドをきっちりやってもらう。そうすることで「翔太郎は彼を目指している」という象徴としてのキャラクター像になっています。
作品を始める時にハードボイルドのお手本にしたものとして、劇中にも出てくる小説「ロング・グッドバイ」(レイモンド・チャンドラー著)はもちろん、松田優作さん主演の『探偵物語』もそのひとつです。僕自身、お茶目でユーモラスなところが『探偵物語』の好きなポイントだったので、それを荘吉も体現しているのかなと。あとは、吉川さんの素の部分も滲んでいると思います。彼の場合はそこまで崩さないですが、コーヒーを淹れるのが下手というのは良いですよね。
ーー劇場版のオリジナルキャラクターである大嶋凪についても、話せる範囲でお伺いできればと思います。
椛島:冴子様にコートをお掛けになっている方なので……どういうことなんでしょう(笑)。
塚田:どこまで秘密にするか、難しいですね(笑)。実写では園咲霧彦、井坂深紅郎、加頭順が“冴子絡みの男”として登場していました。今回の大嶋はそのエピソードZERO的なキャラクターであり、その中でもこれまではいなかったタイプにしたかったんです。
デザインに関しても、今回はストレートなイケメンが良いかなと。僕が今まで見た男性の中で、一番顔立ちが綺麗だなと思ったのは、『仮面ライダーフォーゼ』で朔田流星/仮面ライダーメテオを演じていただいた吉沢亮くんなんですよ。
椛島:本当に吉沢さんを意識して、蛯名(秀和)さんに描いていただきました。キャラクターとしても立たせないと、登場させた意味がないと思うんです。現場でも楽しみながら作り上げたキャラクターですし、声を担当していただいた福山潤さんとは20代の頃からの付き合いなので、いつか絶対に出てほしいと考えていました。バッチリなお芝居を入れていただいて、尚更キャラクターが立っていると思います。
塚田:福山さんは『デカレンジャー20th』でもご一緒したばかりで、本当にありがたいです。
ーー最後に上映を楽しみにしているファンに向けて、一言ずついただけますでしょうか?
椛島:鳴海荘吉/仮面ライダースカルの格好良さをひたすら追求した作品です。誠実に作りましたので、じっくり楽しんでください。
塚田:『風都探偵』や『仮面ライダーW』をまだ観ていない方もいると思いますが、今回の劇場版では始まりの物語を描いているので、この作品から入っていただいて問題ないです。
単体で楽しんでいただける作品を目指していますし、最後に吉川晃司さんの主題歌が気持ち良く流れて、そこに集約する満足感を感じていただけると思います。初めての方も是非よろしくお願いします。
[インタビュー/小川いなり]