迷いや葛藤さえも力に変えていくのがMyGO!!!!!──『劇場版「BanG Dream! It's MyGO!!!!! 後編 : うたう、僕らになれるうた & FILM LIVE」』高松燈役・羊宮妃那さん、長崎そよ役・小日向美香さんロングインタビュー
「まだこんなにもエモい曲を出せるんですか!?」
――では劇場版の話に戻れたらと思います。さきほどFILM LIVEで“ああ、これだ!”という流れがあります、とおっしゃっていましたが、それについてもぜひ教えてください。
小日向:ぜひ語らせてください(笑)。FILM LIVEは最初に「処救生」(こきゅう)がくるじゃないですか。そこで前編の楽奈ちゃんの居場所の話を綺麗に回収して、次の「音一会」(おといちえ)でみんなへのありがとうの気持ちを伝えて。で、最後に「壱雫空」(ひとしずく/TVアニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」のオープニングテーマ)が流れた瞬間に、私は気づいたんです。
MyGO!!!!!のアニメって「壱雫空」から始まっていたし、最初にこの曲が流れることで救われていたんだなと再確認しました。映画を観ている中で「なにか足りないものがあるなと思ったんですが、それは「壱雫空」を一度も聴いていなかったことなんですね。その思いがFILM LIVEの最後で回収された時に総集編とは思えない素晴らしさにとても衝撃を受けました。
これまで総集編っていくつか観たことがあるのですが、アニメを見返さなくてもストーリーを見返すことができるという意味で総集編を見ることが多かったんですけど、MyGO!!!!!の映画はそうじゃないと。アニメとは違った新たな視点で物語を楽しめる総集編で、時系列を整理することでキャラクターの見え方が変わっていく。完全に新しい作品を観るような新鮮さがありました。また、エンディングテーマの「歩拾道」(スピード)も良いんですよね。めっちゃ泣ける。
羊宮:「歩拾道」良いよね……。
小日向:良いよね! はやく映画館で聴きたい! MyGO!!!!!はただでさえエモーショナルな曲が多いのに「まだこんなにもエモい曲を出せるんですか!?」とビックリしました。
羊宮:分かる……。いっちばん大好きな曲なの!
小日向:分かる〜! 私も今日ずっと聴いてた!
羊宮:自分が歌った曲をこんなに自分が歌ったと思わずに聴けたことが初めてで。それくらい「大好きだ〜!」って。
小日向:うんうん。「端程山」(パノラマ)もMyGO!!!!!のみんなが歩んできた道を感じさせる曲なんですが、「歩拾道」はMyGO!!!!!を総括するような、その先も感じられる楽曲で、初めて聞いた時にとても感動していました。
――「自分が歌ったと思わずに聴けた」ということは、レコーディングの時とはまた違った感情なんでしょうか。
羊宮:そうなのでしょうか。なんだかわからないんですけど、完パケ音源(※完成品の音源のこと)を聴いたときに泣いていました。この曲を聴くと、これまでの道のりが思い出されるんです。それはアニメの燈ちゃんたちの物語はもちろん、自分たちがMyGO!!!!!として歩んできた道のりも含めて、いろいろな思いが込み上げてきます。涙の理由は一つではなく、いろいろな感情が溢れてきたのだと思います。
小日向:曲調自体も泣けるような雰囲気があるんですけど、そこに燈ちゃんの温かな歌声が重なることで泣きそうになります。もう一つ私の泣きポイントは、最後のサビに入る直前の〈止めたくないんだ ah〉でみんなの声が一気に上がるところです。イヤホンで聴くとより分かるんです。そこで大号泣しました。なんかみんなの歌声が重なって共に歩んでいる感じがして……。
羊宮:分かる〜!
小日向:ね! 本当に感動的でした。もちろん燈ちゃんの歌声もとっても素敵で。もう何度でもそう言いたくなってしまうくらい。
羊宮:ありがとう。ぜひ早くみんなに聴いてほしいなあ……。
――劇場でも、イヤホンでも、両方で聴いてもらいたいですね。
羊宮:はい。この曲は、音楽だけでも心に響くので、しみじみと聴いてほしいです。歌詞も音楽も良すぎて。レコーディングでは、いつもよりも温かさを増して歌わせていただいております。MyGO!!!!!の良さのひとつに、100%前を向いているわけではないところもあるので、前を向きすぎないその絶妙なバランスが難しいところではあったんですけど、自分の中ではこれだ!と100%思えるものが出せたなと思っています。
――MyGO!!!!!のタイトルは難解なものが多いですが、「歩拾道」についてはどう思いましたか?
羊宮:あくまで私の解釈なのですが……サビに〈羽なんかない僕は この足で這っていくだけ〉という言葉があって。飛行機や鳥、乗り物のように、速く進む手段はいくらでもあるじゃないですか。でも私たちには羽がなくて、ただ自分の足で一歩ずつ歩いていくしかない……。それでも、この道でこのスピードだからこそ拾えるものがあるんじゃないかと思いました。
で、そこに「過惰幻」(あだゆめ)とのつながりも感じるんですよね。「過惰幻」では〈どうして 飛べそうなんて 思ってたんだろう〉って歌っているんですよ。それはどうして幸せなところにいけると思ったんだろうといったニュアンスだと、私は感じていたんですね。
小日向:うんうん!
――ああ、なるほど!
羊宮:羽があることがいつでも正しいことではないし、飛べたからといって幸せであるとも限らない……。険しい道のりの中でも、自分の足で歩いた先に拾えたものが燈ちゃんたちの宝物になったんじゃないかなと思います。あくまで羊宮の解釈ではありますが……。
小日向:誰よりも歌詞に向き合っているのは羊ちゃんなので、そんな羊ちゃんの解釈は正解に1番近いのではないかなと思っているよ。
羊宮:ありがとう!!
――小日向さんはどのように分析されていましたか?
小日向:私は「歩拾道」という漢字から、燈ちゃんが石を拾っていたりとか、『ガルパ』であれば羽を集めていたりだとか、そういうシーンを思い出しました。バラバラになってしまった欠片をもう一度拾い集めてひとつにしていく――それが燈ちゃんであり、それこそ楽曲の持つ力でもあると思いました。
また、MyGO!!!!!は星とも関わりが強いように感じているのですが、一個一個の星のような、奇跡のような欠片を拾い集めて、またみんなでひとつの道を歩んでいくといった意味なのかなと捉えていました。MyGO!!!!!の物語を象徴するような曲というか。それこそ総集編のような一曲だと思っています。
――それが劇場版のエンディングで、12月18日(水)に発売される2nd Album『跡暖空』では1曲目に据えられたオープニング的ポジションという。『跡暖空』についても現時点でお話できることをぜひ教えていただけたらなと。
小日向:もう収録は全部終わったんです。私が感じたのは、MyGO!!!!!ってもともとポエトリーが強みになったり、テンポが速めのパンク・ロックといったスタイルが特徴的なバンドだと思っていたんです。でも今回のアルバムでは曲の幅がすごく広くて。MyGO!!!!!にはこんなにも未知の魅力がたくさんあるんだと驚きました。前作の1st Album『迷跡波』は名刺のような作品でしたが、今回は……なんていうんだろうな。より幅広い音楽性を見せるアルバムだと思っています。
羊宮:もしかしたら……2nd Albumから初めて聴く人は、MyGO!!!!!の多彩さに驚かされるかもしれません。「どれが主軸なんだろう?」ってくらい。
小日向:確かに! 本当にそれくらい幅の広い作品になっています。
羊宮:「それもそうだな」と思ったのが、レコーディング中、曲ごとに「こういう燈ちゃんにしましょう」といったディレクションがあって。いろいろな燈ちゃんがいると言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、その歌詞と向き合ったときにどういう燈ちゃんになるか、というのを大切に歌っているんです。
例えば4曲目の「霧周途」(ミスト)に関しては……最近の燈ちゃんは叫びを抑え気味にして、想いをしっかり伝えることを意識していましたが、この曲では逆に、生き様そのものを表現するかのようにとにかくいっぱい叫びました。戦闘モードともいえる歌い方で、熱い想いが伝わる力強い一曲になったと思います。
小日向:めっちゃカッコよかった! 燈ちゃんの歌い方はいつにもまして勇ましかった気がする。「霧周途」はそよちゃんも叫ぶところがあるんですが、今までにないくらいの声の圧で。ここまでガッツリみんなが叫ぶような楽曲はなかったなって。
羊宮:人間って自分も知らない自分がいるじゃないですか。それがちらっと見える瞬間もあって、ちょっと妖しげでもあるというか……。曲によってそれぞれ「生きている世界線」がちょっと違っていて、1st Albumとは違うなあ、面白いなあって思います。
小日向:このアルバムが皆さんの元へ届くのが純粋に楽しみです。MyGO!!!!!のいろいろな魅力に触れてもらえるというのがなによりも嬉しいです。