ドランの“余裕”を大事にしながらも、熱い戦闘シーンにたかぶってしまう──秋アニメ『さようなら竜生、こんにちは人生』ドラン役 武内駿輔さん【連載インタビュー第5回】
好評放送中のTVアニメ『さようなら竜生、こんにちは人生』が、いよいよ新章突入! エンテの森を訪れたドランたちはエルフたちと協力して魔族に対抗することに。強大な敵を前に、ドランたちはどのような戦いを繰り広げていくのか!?
本作をより楽しむためのリレーインタビュー、第5回は主人公・ドランを演じる武内駿輔さんが登場。最強の竜から辺境の村人へと転生したドランをどのようにとらえ、どのように演じているのか。作品の見どころとあわせて語っていただきました。
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二つの種族の人生を歩んできたドランの魅力
──物語も折り返し地点を越え、ついに魔界の四騎士たちも登場しました。ここまでのドランを振り返っての感想はいかがですか?
武内駿輔さん(以下、武内):物語が進むにつれて、人としての生――“人生”を送っていたドランが“竜生”の頃の力を徐々に解放するようになり、神としての立場で物事に関わるシーンが増えてきたなと感じます。
セリナたちに対しても今まではリードしてあげるお兄ちゃんという節があったと思いますけど、魔界門が開いてからは戦いを率いる一人のリーダーとして、ドランも意識的に自分の立ち振る舞いを変化させているのかなと感じました。
──非常に頼れる存在として描かれていますよね。
武内:そうですね。のちのちセリナやクリスたちと三人になり、等身大の青年に戻ることもありますが、戦いが続くと神としての立場やリーダーとしての立ち振る舞いのほうが印象的になりますね。
──ここまで演じられて、ドランのどんなところに魅力を感じましたか?
武内:思ったことを率直にその場で口に出せる素直なところですね。裏表がなく、相手の気持ちを察してあげることもできる。それに加えて、特にセリナのような人間以外の種族に対しては、“竜生”をまっとうした生き物の先輩として、相手のことを考えたり、思いやったりするところが面白いです。人間としてはまだまだ若いところがあるので、コミュニケーションを取りながら学んでいくポイントが多々ありますけど(笑)、ところどころ最強の竜としての視点が入るのが印象的でした。
──そういった眼差しが入るのは、やはり上位種だったからなのでしょうか?
武内:竜だったからといって、自分が他の種族より優れていると考えているわけではないと思うんです。むしろ、「共存」を自身のテーマにしているから、種族を越えた視点で世界を見て、手を取り合おうとしているように感じます。セリナを気にかけたり、魔物の生息域を気にしたりと、常に人間以外にも考えが及んでいるんです。それが二つの種族の人生を歩んできたドランの魅力なんだと思います。
──ドランが広い視点で物事を見るときと、人間のイチ青年としての視点で、演じ方のニュアンスも変えているんですか?
武内:そうですね。確かに、自分を取り巻く環境や種族のことを考えているときは、人間としての感情を前面に出すというよりも起こっている現象を前に冷静に対処しているイメージがあります。一方で、魔法学院に行くかどうかを悩むようなときは、自分はどう思うか、相手はどう思うかを気にしているので、そういった違いは意識するようにしています。
──キーレン戦や魔族との戦いなど、戦闘シーンも多いですよね。お芝居はどんなことを意識されていますか?
武内:ドランは全体としても“余裕”を大事にしているんですけど、特に戦闘は必死にならないように気をつけています。どんなに相手が強敵であろうと、ドランの底は見えない。そういった圧倒的な力を余裕として表現したいなと考えていました。
ただ派手な戦闘シーンは、僕自身の気持ちがたかぶって頑張ってしまいがちになるんです(笑)。ドランは戦闘においても常に周囲に気を配り、誰かに危機が迫ったらすぐに対応できるようにしているので、竜の力を解放するときも僕が精一杯になりすぎないように冷静な視点を意識するようにしました。
──武内さんというと太めの声をしたキャラクターを演じることが多い印象があったので、ドランの柔らかいお芝居はすごく新鮮に感じました。
武内:だいぶ調整はしましたけどね(笑)。どうしても力を抜いて楽なところで喋ると、かなり声が太くなってしまうんです。その辺は音響監督の阿部(信行)さんと相談しながら細かく調整していきました。
──8月の先行上映会でもおっしゃっていましたが、阿部さんは言葉のニュアンス、音のニュアンスをかなり大事にされる方だとか。
武内:サウンド感、音色にはすごくこだわられていました。なぜそこにこだわるのかというと、お芝居についてわかりやすく説明するために「こういう音色がほしい」という形で伝えていたからだと思います。ドランの等身大の青年感もそうですけど、例えばアイリだったら「小さな子なので、常に上を見上げるような視点や無邪気さがほしい」といった形で、音や音の出し方のディレクションをされていました。