ロボットアニメ界の巨匠対談が実現!大張正己さん&山根理宏さんインタビュー|アニメーターとしての40年を通して感じたロボットアニメを取り巻く環境の変化とは
ロボットアニメを中心に、数多くの作品を生み出してこられた伝説的なアニメーターとして知られる、大張正己さんと山根理宏さん。『勇者エクスカイザー』から始まった、90年代を代表するロボットアニメである『勇者シリーズ』に深く関わった存在でもあり、近年でも大きな話題を呼んだ『勇気爆発勇気爆発バーンブレイバーン』(大張さんは監督、山根さんはスペルビアのメカデザイン)など、多くのヒット作を生み出されています。
そんなお二人も、共にアニメーターとしての活動40周年を迎えられ、大張さんがプロデュースした山根さんの画集「リヒロトマサヒロ」も2024年10月2日に発売されています。
また、大張正己さん、山根理宏さん、椛島洋介さんによるトークイベント「ブレイブ☆ラヴァーズ」が不定期で開催されており、2024年10月27日には、大張さん・山根さんの活動40周年を記念し、これまでの『スーパーロボット大戦』シリーズのプロデューサーを務めて来られた寺田貴信さんをゲストとして招いた特別な回となる「リヒロトマサミ」が、新宿ロフトプラスワンで開かれていました。
今回アニメイトタイムズは、その会場内にて大張さん、山根さんのお二人にインタビューを実施。これまでの活動40周年にまつわる様々お話を伺うことができました。
山根さんにとっての大張さんは憧れの存在だった
──画業40周年を迎えられたご心境はいかがでしょうか?
山根:なんか40年って感じは全然しないですね。気持ちはまだ10代の頃のままというか(笑)。
大張:自分としてもそんなつもりないんですけど、「子どもの頃に『ダンクーガ』(※超獣機神ダンクーガ)見てました」とか、「『テッカマンブレード』(※『宇宙の騎士テッカマンブレード』)を見てアニメーターになりました」とか、今業界で一緒に仕事してるアニメーターの人たちに言われて、40年経ったと気づく感じでしたね。山根さんと同じで、つい最近みたいな感覚です(笑)。
──お二人が初めて一緒になったのはどの作品だったんでしょうか?
大張正己:確か『鋼の鬼』(※『大魔獣激闘 鋼の鬼』)ですね。そのあと僕が始めて監督をやった『バブルガムクライシス』のPART6の時に入ってもらったりして。プライベートではもっと前から会ったりしてましたけど、仕事で一緒になったのはその時が始めてだったと思います。
──お二人共これだけ長くアニメーター、とくにロボットアニメをやられていると、やっぱり戦友みたいな関係性なんでしょうか。
山根:いや、僕からすると、仲間というよりは憧れの人ですよ。
大張:いやいや、そんな……(笑)。
山根:実際、僕が完全にメカにシフトしたきっかけの人なんです。実は僕は元々はメカ系の人間ではなくて、大張さんの絵を見て「俺もああなりたい」と思ったので。
──それにはどういった理由が?
山根:なんだろう。ロボットアニメって、すごく戦闘シーンにスポットが当たるじゃないですか。
大張:アニメーターが目立つジャンルなんですよね。
山根:そう。当時はキャラものの方は、そこまでアニメーターにスポットが当たるイメージがなくて。対してロボットアニメの見せ場って、やっぱりロボットの戦闘シーンなんです。それなら完全にメカにシフトしてやった方が、自分が目立てるんじゃないかと思ったのが理由です(笑)。
──確かに。いわゆる“勇者パース”なんかもまさにそうだと思いますが、ロボットアニメにおける印象的な作画や演出って、今でも語り継がれていたりしますよね。
山根:そうですね。やっぱり、そういう見せ場みたいなシーンをやりたいっていう想いが強かったので。
──長らくロボットアニメに携わられて、制作環境も当時とはまったく違っていると思うのですが、今と昔でとくに変化を感じている部分はありますか?
大張:映像表現の違いという部分はもちろんあります。元々はすべて手書きだったわけじゃないですか。今は3DCGも使えて、今の僕の作品とかはCGと手書きの両方を使うハイブリッドでやっているんですけど、一番大きい変化は、手でメカを描けるアニメーターが減っていることかもしれないですね。
山根:そもそも、昔と比べるとロボットアニメの作品自体が減ってますからね。それでも、僕はたまにメカモノの仕事もやったりしてますけど、それまで一度も書いたことがないのに、 突然「ロボット描け」と言うのは、ちょっと今のアニメーターの子たちには酷かなと思います。僕らの頃は、もうほぼそれしかなかったから(笑)。
──確かに、ロボットアニメが放送していない時期なんて、ほとんどなかったですよね。
大張:そう。だから僕らからすると、どの作品をやるかも選び放題でした。ただ、その分僕らにとっての“メカ”みたいに、ボディアクションとかエフェクトとか、いろんな分野に特化したアニメーターっていうのが増えてきている印象があります。
でも、それも結局根本は僕らと同じなんじゃないかと思うんですよね。「目立ちたい」っていう(笑)。
──(笑)。やっぱり、皆そこの気持ちが大きいんですね。