『ファイナルファンタジー』ファン感涙の懐かしさを感じられるRPG『FANTASIAN Neo Dimension』をレビュー|長谷川育美さん演じるツンデレ王女・シャルルの健気すぎる可愛さも語りたい
2024年12月5日に発売予定のNintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/PC(Steam)『FANTASIAN Neo Dimension』。2021年にApple Arcadeで配信された『FANTASIAN』をベースに、フルボイス化を始めとした新要素を追加した作品です。
『FANTASIAN』といえば、『ファイナルファンタジー』(以下、FF)シリーズの生みの親である坂口博信さんが手掛け、歴代『FF』シリーズの音楽を担当してきた植松伸夫さんがタッグを組んで開発されたRPG。
今回、買い切り用のタイトルとして『FANTASIAN Neo Dimension』とタイトルを一新、Apple Arcade以外の様々なプラットフォームへの展開が行われた形ですが、『FANTASIAN Neo Dimension』では、パブリッシングをスクウェア・エニックスが担当しています。
言うまでもなく、スクウェア・エニックスといえば『FF』シリーズの権利元で、坂口さんと植松さんがかつて在籍していた会社でもあります。独立したクリエイターが開発したゲームが古巣から発売されるというのはかなり珍しいですし、坂口さんのゲームがスクウェア・エニックスからまた発売されるというのは、90年代のスクウェアのゲームで青春を過ごした世代でもある自分にとって非常に嬉しいニュースで、かなりインパクトのある発表だったのを覚えています。
坂口さん時代の『FF』シリーズファン感涙のゲーム
そんな『FANTASIAN』なんですが、坂口さんが関わられていた、とくにSFC後期~PS時代の『FF』シリーズの雰囲気に近いなと感じたのがプレイした時の第一印象。
本作は、3Dのフィールドを自由に歩き回れるタイプのRPGなのですが、そのフィールドは手作りの実物のジオラマをスキャンする形で制作されており、ミニチュアの世界の中に入り込んで冒険をしているかような不思議な体験ができます。
ジオラマで作られた、実写のようなのにどこかファンタジックなフィールドの中でフル3Dモデルのキャラクターを操作するのは、フィールド上のキャラクターがちょっと浮いているような、いい意味でのアンバランスさみたいなのを常に感じられるのが面白いところなんですが、この時に自分が思い出したのが、プレイステーションで発売された『ファイナルファンタジーVII』のグラフィックでした。
『ファイナルファンタジーVII』のマップは、3Dモデルをレンダリングした静止画で作られているので、実質的な作りとしては2Dに近い場所が多く、レンダリングが入っているのもあって3Dキャラクターと結構見た目の差があり、ちょっと浮いているような印象があったんですよね。
本作のジオラマのフィールド内を歩く本作3Dのフィールド画面は、カメラとキャラの距離感とかも含め『FFVII』の頃の『FF』に近め。一方で、『FFVII』にあった3Dのカメラアングルを活かした演出のようなものはなく、基本常に見下ろしの視点でゲームが進むので、そのあたりはSFC時代の『FF』に近くもあります。
以前に坂口さん自身、本作を「『FF6.5』的なゲーム」と表現されているのを見かけたことがあるのですが、まさに『FFVI』と『FFVII』の間に『FF』のナンバリングタイトルが出ていたら、本作のようになっていたんじゃないか……みたいな妄想を膨らませてくれます。
また『FF』ファンにとってとくに嬉しいのが、『FANTASIAN Neo Dimension』で追加されたバトルBGMの変更機能です。本作では販売元がスクウェア・エニックスであることを活かし、『FF』シリーズとのコラボが行われており、『ファイナルファンタジーXVI』、『ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ』、『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』、『ファイナルファンタジーVII REMAKE』、『ファイナルファンタジーVII REBIRTH』、『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』の全6作品の戦闘BGMを切り替えて流すことができます。
本作のオリジナルBGMは植松伸夫さんなのでそちらの出来も素晴らしいですが、ちょっと気分を変えたい時に『FF』シリーズの楽曲を流すとめちゃくちゃテンションが上がって楽しいです。しかも1曲だけではなく、通常戦闘、ボス戦闘など場面に応じて自動で作品ごとのBGMを切り替えてくれる仕様なのも嬉しい。
また、今回はシナリオを坂口さん自身が担当していることもあってか、主要キャラクターから街の人の口調など、台詞のテキスト部分もあの頃の『FF』っぽさを感じられる台詞回しになっています。
一方で新鮮だったのが、主に主要キャラクターの過去のエピソードが描かれる際に挿入されるノベルパート。自分は過去の回想シーンって「早く話を先に進めてくれ」と思うことが結構多いタイプなんですが、本作はこのノベルパートの完成度が非常に高く、一個一個のストーリーが心にジンと来るようなものが多くて、ショート・ショートの小説を一本読み終えた時のような満足感を味わえました。
完全に進行が止まってがっつり文章を読むパートに入るので、RPGとは相性が悪そうに見えるんですが、どれも長さがちょうどいいくらいの尺で統一されていて、そのシーンだけのイラストも豊富かつ特別感があるので、「テキストを読むのがダルい……」みたいなことに一切ならないように作られているのが素晴らしかったです。つい世界観に引き込まれるノベルパートは、本作の大きな魅力の一つになっています。