秋アニメ『ネガポジアングラー』第12話 上村 泰(監督)×岩中睦樹(佐々木常宏 役)振り返りインタビュー|「釣りって何が面白いの?」という答えを常宏なりに見つけていた
毎週木曜22時よりAT-X・TOKYO MXほかにて好評放送中のオリジナルTVアニメーション『ネガポジアングラー』。自身も大の釣り好きである上村泰監督が、『BLUE GIANT』・『幼女戦記』を手掛けたNUTとタッグを組んでお届けする、「釣り」を題材にしたアニメとなっています。
不幸続きな青年・佐々木常宏が「釣り」を通じて、様々な出会いや経験を積んでいく様を描く本作。アニメイトタイムズでは、毎話ごとに上村監督と佐々木常宏役の岩中睦樹さんにたっぷりとお話を伺ってきましたが、いよいよ今回が最終回となります! 12話の感想はもちろん、作品全体の振り返りや制作秘話など、色々な質問をぶつけていますので、作品とあわせて最後までじっくりご覧ください!
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この先もずっと釣りをしていくんだろうなって思える素敵なラスト
――いよいよラスト、最終話のお話を伺っていきたいと思いますが、まずは1クール駆け抜けた今の心境を教えてください。
**岩中:もう本当に感無量というか、常宏に感情移入しすぎて、終わるのが寂しい気持ちにはなっています。
上村:正直まだ客観的になれないんですよ。本当にこの間作り終わったばかりなので。僕は作品に入り込んで作るタイプなんです。だからまだ作品から抜け出せていないというか、ぼーっとしています(笑)。
――最後にハナちゃんとの会話で「またいつか釣りしような」からのCパートで爽やかなラストとなりました。
岩中:この先もずっと釣りをしていくんだろうなって思えるような素敵なラストだったなって思います。
上村:とても嬉しいです。そういう風に思ってもらえるようなラストをちゃんと描きたいなと思っていたので。
実は一番最後のラストカットって、制作当初は竿を振って終わっていたんです。ズバっと振り切って終わる、みたいな。演出家としてはキレが良くていい感じに終わるんですが、でもそこで物語もスパっと終わっちゃう気がしてしまって。なので、振り返ってアウトしていく方が、『ネガポジアングラー』は終わってしまうかもしれないけれど、この先も常宏たちは釣りをしていくのかなとか、常宏たちのこれからは続いていくんだなっていう終わり方にしました。
岩中:最初に余命2年って言われているから「どういう終わり方するんだろう?」って思っていたんですけれど、あの終わり方を見ると安心できました。ちゃんと地元に帰って治療して、今後もきちんとやっていくんだろうなって、すごく希望を感じられるような終わり方でした。
――Cパートを見ていたら、貴明はバイト辞めていましたが、あれはあの後戻らずにそのまま辞めちゃったって感じなんですかね?
上村:貴明は大学4年生っていう設定だったんで、在学中はバイトを続けていたと思いますが、卒業して釣具メーカーに就職したんではないでしょうか?ピンク髪ですけど(笑)。
一同:(笑)。
上村:学生時代のバイトって結局短いじゃないですか。長く居ても3年とか4年とか。でもその短い期間のコミュニティでも仲良くなって、その後もずっと続いてたりすることもありますよね。貴明たちもそういう感じで2年間過ごしていたのかなって色々想像して頂ければと思います。
2年後だとハナちゃんも高校卒業しているんですよね。でも、ハナちゃんって(卒業後)どうしてるんだろうってよく考えるんですよ。
――大学に行かずに釣り三昧とかなんでしょうか。
上村:なんとなくですが、おばあちゃんに無理やり大学行かされてる感じもするんですよね(笑)。1回もエピソードとして出せませんでしたが、貴明は海洋系の大学に行っているという設定でした。
――じゃあハナちゃんもそういった釣りに関する勉強をしているのかもしれませんね。常宏と貴明の関係性もだんだんと変わっていきました。
岩中:常宏と貴明の2人が喧嘩していましたけど、一緒に釣りをしていたらいつの間にか2人共笑っているというのがいい関係性ですよね。
上村:やっぱりランカーサイズのシーバスを目の前にしたら仲良くなりますよ(笑)。
――喧嘩してる場合じゃないですね(笑)。
岩中:貴明の「絶対俺がすくってやる」ってセリフがとても好きなんですよね。(救うと掬うの)2つの意味に感じられて好きです。でも、貴明も常宏を通して弟を見ていたじゃないですか。常宏に優しくしてあげたり、救ってあげることで自分を救っているような感じになっていたけれど、最終回でちゃんと常宏を常宏として見るようになったとか、そういうのはあったんですか?
上村:貴明がずっと常宏の向こうに弟を見てるなって描き方は意識していました。でも岩中さんがおっしゃったように、常宏は常宏なんですよ。なので常宏をちゃんと見るようになることが、貴明が自分に向き合うことなのかなって思いますね。
――では恒例ではありますが、好きなシーンを挙げて頂ければと思います。
岩中:ありすぎて難しいですけれど、2人で雪を見に行くところかなぁ。
上村:ここでまだ常宏が空気読めないから、雪投げちゃう(笑)。
岩中:「釣りって面白いな」って常宏が言って貴明が涙するところがあるじゃないですか。もうここが良すぎて。
上村:結局「釣りって何が面白いの?」っていう1話からの問いを、常宏は常宏なりに1つ答えを見つけていて。シンプルに「釣りって面白いな」っていう言葉に帰結していますが、そこには文字面だけじゃない色々な意味を含めて、あのセリフになったのかなって思います。
釣りの面白さって人によって違うので何が正解とかはなくて……別にこれは釣りに限らず“野球って何が面白いの”とか“サッカーって何が面白いの”とか人それぞれ違うと思うので、常宏なりの……というよりも『ネガポジアングラー』としての“釣りの面白さ”っていうのを感じてもらえたらいいなって思っています。
――監督の好きなシーンはいかがですか?
上村:12話はほんとに選べないですね。Aパートというか最終話は“ガチで釣りをする”……竿を準備して、糸を通して結んで、投げて釣り上げて喜ぶ……というのをきちんと描写したいとは最初から思っていました。
ドラマ的な意味では岩中さんと同じくBパートの雪のシーンとか、ハナちゃんとのお別れシーンも良いですよね。あの別れ方もすごくハナちゃんらしくてカッコいいと思うんです。湿っぽくない、でもちゃんと思いは伝わるっていう良いシーンだと思います。