『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』音楽・馬飼野康二インタビュー|『忍たま乱太郎』アニメ化までの道のりを振り返る
2013年に刊行された『小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』(原作・イラスト:尼子騒兵衛先生/小説:阪口和久先生/朝日新聞出版刊)の劇場アニメ『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』が2024年12月20日(金)より全国公開となります。
アニメイトタイムズでは映画公開を記念して、「勇気100%」をはじめとする数々の劇中音楽を手がける馬飼野康二さんへインタビューを実施しました。全42曲ある劇中曲の制作裏話や『忍たま乱太郎』アニメ化までの道のりを改めて振り返ります。
※本インタビューは本編のネタバレを含みます※
劇中曲で重要だったダンスナンバー「ドクタケ忍者隊の曲」
──『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』の制作が決まった際のご感想や、ストーリーをご覧になった時の感想を教えてください。
馬飼野康二さん(以下、馬飼野):最初に映画の話を聞いたのは、2023年11月あたりだったと思います。
過去に映画化された作品と似たような感じなのかと想像していました。しかし、絵コンテができ上がり、話が進むに従って、今回はかなりテイストが違っていて、やや緊張気味になり、色々と楽曲制作についても考え出しました。
──劇中の音楽制作において、意識された点や大切にされたことについてお聞かせください。
馬飼野:今回は、プロデューサーの御手洗さんや音楽プロデューサーの高石さん、藤森監督をはじめとするみなさんが「こういうものを作りたい」という具体的な方向性が最初からあって、明確なビジョンを持っていました。
だから私も作曲家として、それに応えられるようにすることを第一に考えましたね。それは職業作家として当たり前のことなのですが、スタートラインはそんな感じの気持ちでした。
──劇中の「ドクタケ忍者隊の曲」は非常に勢いのあるナンバーですが、どのように作られたのでしょうか?
馬飼野:最初に監督からロックテイストのダンスナンバーにしたいという要望があり、デモテープを作成し、AタイプとBタイプの2種類を制作しました。
最初に作ったAタイプは、ミュージカル風でロック調ではなく、監督から「別の曲調も検討してみたい」と言われました。それでBタイプとしてロックを基調にした別のタイプの曲を作りました。おそらく、監督の方で画のイメージがあったんだと思います。
歌唱も間宮さん(稗田八方斎役・間宮康弘さん)が担当するということで、キーの調整や声のキャラクターを生かしたメロディーを考えましたね。声優さんはキャラクター的に音域が限られていることが多いので、制約がある範囲の中でレコーディングで歌っていただきました。
音楽制作の順序ですが、絵コンテを元に打ち合わせをしました。絵コンテにはまだ動きがないので、本当はもっと詳細な画ができてから作業を進めたいという気持ちはあったのですが、アニメーションの場合は制作に時間がかかるし、待っていたら音作りができなくなってしまうので。
──全42曲あるうちのどの曲から制作を進めていかれたのでしょうか?
馬飼野:一番初めに作ったのは先ほどお話ししたダンスナンバーです。それが2月頃で、早く作らなければならない状況で。その後、4月から6月くらいまで休憩のような感じで少し間が空きましたが、その間イメージデモはなんとなく作っていて、6月頃から再び本格的に作業を再開しました。
御手洗さんにも『順番通りに作るのですか?』と尋ねられたことがあるのですが、曲を順番通りに作るわけではなく、その時の気分で進めました。「朝起きて気分が清々しい時は明るい曲、気分が暗い時は別の曲を作る」、と冗談混じりに返した記憶があります(笑)。
どちらかというと一番期待されているサスペンス系の曲を後回しにすることが多かったです。普段のTVシリーズ『忍たま』の楽しいシーンの雰囲気に近かったり、その延長線にある曲から先に作ることが多かったですね。子供が宿題を後回しにするみたいな、そのようなノリでした(笑)。
──後回しにされていたというサスペンスやかっこいい曲を作る時は、どのようなイメージから組み立てて行ったのでしょうか?
馬飼野:正直、自分にとっては苦手なジャンルかもしれません。そこは御手洗さんから具体的な音作りの希望があったおかげで、救われた部分もありました。
テクノ系の音楽やスピード感のある効果音的な音作りが重要でした。また、“忍者らしさ”を表現するために、太鼓やドラムのような音のイメージのリクエストがあったりもして、忍びの雰囲気を出しました。
──本作のテーマ曲「勇気100%」についてもお話を伺わせてください。
馬飼野:今回は、「なにわ男子」が歌うということで今までとキーの設定が違います。
これまでは子供たちが歌うため高めのキーでしたが、今回は少年や青年が歌えるくらいのキーにしました。そのため、聴いた印象は子供から少し大人、あるいは青年へと成長したようなイメージになるかと思います。