『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』音楽・馬飼野康二インタビュー|『忍たま乱太郎』アニメ化までの道のりを振り返る
当時を振り返り、アニメ化にまつわる裏話
──『忍たま乱太郎』のTVシリーズについて、アニメ化の提案を馬飼野さんがしたというのは有名なお話かと思います。当時を振り返って、原作を初めて知った時のお気持ちや感想について教えていただけますか?
馬飼野:以前にも何度かインタビューでお話ししましたが、私の娘が朝日小学生新聞を読んでいたのがきっかけです。
私は『落第忍者乱太郎』という作品をとても面白いと感じています。なぜなら、自分自身が落第しているというか、それに近い精神を持っているので、非常に共感できる部分が多かったからです。
尼子さんにお会いした時も「アニメ化できたら良いですよね」という話をしましたが、当時はまだそれは夢みたいな話でした。その頃、私は他のアニメーションにも関わっていたので、業界内にネットワークがあってプロデューサーさんやメーカーさんという業界の方々に話をしたところ、「こういう話は五分五分だよね」と言っていて。五分五分というのは大体、世の中的にはダメなんですよね……(笑)。
ただ、最初は1年間のアニメで、ここに至るまでの道のりは決して順調なものではありせんでしたが、色々な奇跡があって今に至ります。
──それでは改めて、尼子さんの作風の魅力についてお聞かせください。
馬飼野:尼子さんの面白いなと思うところは、名前の付け方です。例えば、私が通販で安いトースターを買って、パンを焼いたら火力が調節できなくてすぐに真っ黒に焦げてしまったんです。
その話をしたら、尼子さんは「黒古毛般蔵(くろこげぱんぞう)」という忍者を作ってしまいました(笑)。そういう設定をすぐ考えてしまうんですよ(笑)。
名前の付け方に遊び心がありますよね。稗田八方斎も、中華料理の「冷えた八宝菜」なんて不味そうですものね。
──ギャグが至るところに散りばめられていますよね。
馬飼野:そうなんです。だけど、歴史の勉強もされているから術に関しては嘘は描いていないんです。昔の忍者と忍術に基づいたリアルな行動を作中でも描いているので、そこはしっかり守っていて、あとはすごくふざけたことばかりやってはいるんですけれども(笑)。
──尼子さんとはよくお話されるのでしょうか?
馬飼野:尼子さんとは世間話を時々お電話でやり取りをしています。
30年前くらいからなんとなくそういう感じでおしゃべりしていました。さっきの黒古毛般蔵の話もそうですが、自分がモデルになった「魔界之小路(通称:魔界之先生)」というキャラは打ち合わせの時に、通販の商品を見るとつい買いたくなってしまうという話を尼子さんに話したら、すぐにネタにされてしまって。
「じゃあ、馬飼野さんといえば取り合えず通販で失敗する」とレッテルを貼られて(笑)。でもまぁ、本当にその通りですよ。
作中の魔界之先生はゴムボートを通販で買うのですが、それに穴が空いていて、敵地に行こうと思ったら、ブクブクと沈んでいってしまったというドジなエピソードがありました。そういうドジな忍者で、僕も実際にそういうところがあるんです。
──日頃から買い物をされる際は通販なのでしょうか?
馬飼野:そうですね。間違えて買ってしまうことも多いんですよ。例えば、普通サイズのコーヒーメーカーを買ったつもりが、実際に届いたら想像以上に大きくて驚いたり(笑)。
──(笑)。ありがとうございます。それでは最後に、これまでの『忍たま乱太郎』の歴史の中で特に思い出深いエピソードをお聞かせください。
馬飼野:『落第忍者乱太郎』で一番面白かったのは、お茶を飲んでいる時におばあちゃんの入れ歯がぽこんと取れたりしてしまう描写です(笑)。
だけど、そういうお話で子供たちが年寄りを馬鹿にしなかったり、悪人もそこまで悪者にしないとか。どこか優しい部分があって、人の良い部分を見つけて許しているから、『忍たま乱太郎』も、全体を通しても安心して子供たちに見せられるアニメ作品に仕上がっていると感じています。
[取材・文/笹本千尋]
作品概要
あらすじ
タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との決闘に向かった後、消息を絶ってしまった土井先生―
山田先生と六年生による土井先生の捜索が始まる中、担任不在の一年は組では、タソガレドキ忍軍の忍び組頭・雑渡昆奈門と、尊奈門が教壇に立つことに!
そんな中、きり丸は偶然、土井先生が置かれた状況を知ってしまうのだった。
一方、土井先生捜索中の六年生の前に突如現れたのは、ドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼。
その顔は、土井先生と瓜二つで―
忍たま達に立ちはだかる最強の敵を前に、今、強き「絆」が試される。
果たして乱太郎、きり丸、しんべヱたちは、土井先生を取り戻すことができるのか―??
キャスト
(C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会