〈受け取ってばかりだった〉ことは、ちゃんと受け取ったあとじゃないと絶対に気づけないもの。その一行だけでも成長が伝わってくる──2nd Album『跡暖空』高松燈役・羊宮妃那さん、千早 愛音役・立石凛さんがMyGO!!!!!の変化を語り合う【インタビュー】
「受け取ったあとじゃないと、受け取ってばかりだったこと自体に絶対に気づけない」
──そして、その劇場版の取材で羊宮さんには少しお話を伺っていますが、改めて『跡暖空』のリリースに向けての今のお気持ちをお聞かせください。
羊宮:発売までにいろいろとありすぎて。特に劇場版「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の前編・後編が公開され、稼働がたくさんあったので、あっという間だった気持ちがありつつ……楽曲のレコーディングも、一つひとつがそれぞれ濃密な世界観を持っていて、燈ちゃんの成長とはまた違った、新しい角度の表現が感じられる内容になっているなって思っています。
──燈ちゃんの成長とは違った、新しい角度の表現というのは、具体的にはどのようなものでしょうか?
羊宮:そうですね……少し説明が難しい部分もあるのですが、燈ちゃんが成長したからこそ歌えるというよりは、それぞれの楽曲そのものがMyGO!!!!! らしい世界観を持っていて、燈ちゃんがその世界観に向き合って歌う、というイメージです。
ただ成長して歌えるようになったという話ではなく、バンドとしてのMyGO!!!!! が編み出した曲に燈ちゃん自身も合わせていくようなイメージ。そういう意味で、これまでとは少し違った印象を受けましたね。
──立石さんはどうですか?
立石:1st Album『迷跡波』をリリースしたのが約1年前で、それからずっと密に活動してきたので、私もあっという間だったなと感じています。今回のAlbumは前作からさらに進化した内容になっていて、新しいMyGO!!!!! の一面が見られる曲が揃っています。早く皆さんに聴いていただきたいという気持ちでいっぱいです。
──立石さんが個人的に、MyGO!!!!! の成長を特に感じるポイントがあれば教えてください。
立石:それこそ、燈ちゃんの歌の成長はとても印象的です。羊ちゃんが演じる燈ちゃんが、どんどん進化しているのが伝わりますね。例えば、1st LIVEの映像を今改めて見たら、当時とは全く違うだろうなって思いますし……。
羊宮:うんうん。
立石:「迷星叫」(まよいうた)も聴き慣れてしまっていますが、改めて聴いたら全然違うんだろうなって。普段は楽器を演奏する立場ですが、Album全体として聴くと改めてそういったことを感じますね。
──それぞれの曲の歌唱レコーディングでは、どのような意識で臨まれたのでしょうか? 曲ごとに違いがありそうですが。
羊宮:おっしゃる通り、曲によって違いはあるのですが……レコーディングを重ねれば重ねるほど、できる表現が多くなっていくゆえに、どこまで抑えるべきか、あるいは、どこまで感情を爆発させるべきか……そのバランスがすごく重要だなと感じていました。
最初の頃の燈ちゃんは、叫びが徐々に強くなっていきましたが、今は叫ばなくても届ける力を持っているからこそ、叫んでいるだけではなくなっていて。その都度「ここはどれくらいまで上げましょうか?」「サビはどれくらい爆発させていいんでしょうか?」と相談しつつ、その力加減をディレクションしていただきました。
こんなにもキャラクターの心情に沿って歌わせていただけるレコーディング現場ってなかなかないんですよね。基本的には、楽曲を作るにあたってのこだわりポイントに沿って、リズム感や、聴いていての気持ちよさとか、そういったものをメインにディレクションを頂くことが多いのですが、MyGO!!!!!のレコーディングでは逆にそういったディレクションの方が少ないくらいです。
──Albumの幕開けを飾る「歩拾道」(スピード)は羊宮さんがこれまでの曲の中でも特段好きというお話をされていて。ぜひ詳しく伺いたいなと。
羊宮:本当に大好きです! 歌詞を読めば読むほど、燈ちゃんがどんな景色を見て、どんな気持ちでそこにいたのかが伝わってきて、本当に心に響くものがあります。例えば、〈運ばれる電車の中も 雲を連れる飛行機も 急かされてしまうスピードに 心が千切れそう〉という言葉には、燈ちゃんの心情をすごく感じます。
燈ちゃんにとって、周りが進んでいるスピードってものすごく速く感じるんですよね。でも、それって実は多くの人が感じることなんじゃないかなと思っていて。誰しも「ちょっと待って! そのスピードは速すぎる!」って感じる瞬間があるんじゃないかなって。でも、待つことも、待ってということもできないですし。そもそも人それぞれのスピードがあるよなって思いました。
それと〈ずっと 受け取ってばかりだった〉というのも……ちゃんと受け取ったあとじゃないと、受け取ってばかりだったこと自体に絶対に気づけないもので。周りが言ってくれる言葉たち……例えば、小さいころに大人によく言われる「勉強しなさいよ」って、当時は聞きたくない言葉だったと思うんです。「私のために言ってくれているんだ」なんて子どもの頃には絶対に思えないですよね(笑)。
でも、あとになってそれが自分のためになっていることに気づくんですよね。それって、自分がそこの立場にならないと〈ずっと 受け取ってばかりだった〉にならなくて。そして、その立場になったからこそ、今度は〈やさしさを 誰かへと手渡せる人になりたい〉と想っている。この1番の歌詞のなかだけでも、燈ちゃんが“気づくことができたこと”が伝わってきて、もう本当に良くって!(笑)
──素晴らしい解釈! 燈ちゃんのその心情に、共感する人も多いと思います。
羊宮:確かに周りが忙しなく動いていると、ついていけなくなって、それによって視野が狭まっていくもののように感じるのですが……自分なりのスピードで、自分なりの道のりで、自分なりの足取りで見てきたからこそ、それを受け取れているんだなって思います。
――そんな歌詞も相まってか、声色も明るく、どこか温かみもあって。そういった曲はこの2nd Albumから増えていますよね。
羊宮:MyGO!!!!!の中で「温かい曲」として印象があるのは、私の中では「端程山」(パノラマ/M-5)だったんですね。ただ、「歩拾道」はそれとはまた違った温かさがあるなと、私は感じています。
──立石さんは「歩拾道」はどういう印象がありましたか?
立石:MyGO!!!!!の曲にしては珍しいテンポ感の曲だなというのが第一印象でした。私たちはコーラスとしてレコーディングに参加させてもらっていて。普段は仮歌を聴いて練習してからレコーディングに臨むことが多いのですが、今回はレコーディング現場で初めて羊ちゃんの歌声を聴いて、それに合わせてコーラスを作るという形だったので、「歩拾道」に限らず、毎回「羊ちゃんがどんな風に歌っているんだろう」と楽しみにしていました。
そして、その声に合わせたディレクションをいただいていて。例えば、「ここは羊宮さんが感情的にコーラスを歌っているから、ここのコーラスは同じくらい感情的になってもいいよ」「1番よりも2番のほうが羊宮さんの表現がより強調されているから、それに合わせてコーラスも少し変化をつけてもいいんじゃないかな」とか、そういったディレクションがありました。完成したものを聴くと「ああ、こんな感じになっていたんだ!」と、毎回感動しますね。