『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』製作・ストーリーのフィリッパ・ボウエンさんインタビュー|神山健治監督はピーター・ジャクソン監督を思い起こさせる部分があるーー歴史的大作が日本のアニメになった理由
映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の公開から20年以上の月日が経ち、最新作がついに公開となります。2024年12月27日(金)、アニメ映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』がついに公開。
物語の舞台はその名の通り、ローハン。ヘルム王が統治する時代、主人公のヘラと幼馴染であるウルフとの戦いが描かれます。
まだファンの誰もが見たことがない物語は、一体どのようにして生まれたのでしょうか? 今回は来日していたフィリッパ・ボウエンさんへインタビューする大変貴重な機会を得ました。
ボウエンさんは映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の脚本を務め、本作でも製作・脚本として関わっています。
映画公開前に、ファンの気になる様々な質問に答えていただきました。
インタビューバックナンバー
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──まず感謝をお伝えしたいのですが、私は子供の頃に『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の映画を観て、ファンタジーの世界にどっぷりと魅了されました。その影響で、このような仕事をするようになったのです。本当にありがとうございます!
ボウエン:それは嬉しいお話ですね。私たちの作品を通じて、あなたが今の道を見つけたのだとしたら、本当に光栄です。こちらこそありがとうございます。
──短い時間ですが、よろしくお願いいたします。まず、この作品の舞台をロヒアリム(ローハン)の戦いにすることになった経緯を教えていただけますか?
ボウエン:まず、この映画の企画が始まった時点で、最初はどのような形にするか、具体的な構想はありませんでした。そうしたら、誰かが「アニメでやってみたらどうですか?」と提案してくれました。その時は「いやいや、それは違う」と思われるのではないかと思っていましたが、実際にはそれがこの物語を考え始めるきっかけになりました。突然、すべてが可能性を持つように感じられたのです。アニメーションという形式が物語の選択に影響を与えたのです。
この物語が私の心に浮かんだのは、日本映画の伝統、特に忠誠や名誉、家族の絆、一方で裏切りや人間の弱さといったテーマがこの物語に自然にフィットするのではないかと直感的に感じたからです。また、戦争の影響やその後の余波、暴力の連鎖がどのように断ち切られるのかというテーマも、日本映画の中でよく描かれている要素だと思います。
さらに、日本の物語が美しく描くもう一つの要素は、優雅さや慈悲、人間性の瞬間だと思います。それらが、この物語に合うと感じたのです。だからこそ、アニメという形式で、しかも日本の素晴らしい制作陣によってこの物語が語られることが適していると感じました。
──では、ヘルム王という人気キャラクターを描く際、特に気をつけた点は何ですか?
ボウエン:良い質問ですね。ヘルム王を描く際には、彼が単なる戦士王ではなく、欠点を持つキャラクターであることをしっかり表現する必要がありました。彼は偉大で英雄的な王ですが、同時に自分の力と状況の支配に過信し、致命的な過ちを犯してしまいます。また、彼は家系が息子たちによってのみ続くと信じており、娘であるヘラの役割は自分に守られるべき存在だと考えています。
ヘルム王のその信念が、父と娘の間に深い対立を生むのです。ヘラにとって、父が考える守護とは、自分を遠くの地に嫁がせることを意味しますが、それは彼女にとって最悪の悪夢です。彼女は故郷を離れたくもなければ、誰かと結婚したいとも思っていません。この父と娘の葛藤は、監督の神山さんが特に興味を持ったテーマでもありました。
ヘルム王は最初、自信過剰で戦士としての面だけが強調された王として描かれています。しかし、物語が進むにつれて、彼は全てを失った中で初めて娘であるヘラの本当の強さを理解し始めます。彼女を新たな視点で見るようになり、そこで父親として、また一人の人間としての成長を遂げるのです。この変化はとても美しいと思います。