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『ベルサイユのばら』とオスカルの魅力的なエピソードを語る──ベルサイユの「ばら」は誰のこと?

人々の心をとらえ続ける名作『ベルサイユのばら』の魅力はオスカルにあり! ──タイトルの「ばら」が指す人物についても考察

1972年に雑誌「週刊マーガレット」に連載され、その後宝塚歌劇団による舞台化やアニメ化により、長きにわたって愛された『ベルサイユのばら』(以降『ベルばら』)は、池田理代子先生による漫画原作の作品です。

史実である「フランス革命」を下敷きに、細部にわたるまでリアルに創作された本作は、激しい時勢に翻弄された当時のフランス国王妃であるマリー・アントワネットの生涯を描きつつ、連載当時の日本にはなかなかまれな存在であった「闘う美しき強い女性」の代名詞となるようなオスカルの存在が大人気を博しました。

そんな『ベルばら』は2025年、連載50周年を記念して新たに劇場版として生まれ変わります。

本稿では、50年以上という長きに渡って愛される作品となったこの『ベルばら』について、人々の心を奪った数々のエピソードの魅力を振り返りつつ、ベルサイユの「ばら」を指すのは一体誰なのかについても考察していきたいと思います。

『ベルばら』ってどんな作品? 

『ベルばら』ってよく耳にするけど、そもそもどんな作品なんだろう──そう思う方もいらっしゃるかもしれません。そんな方向けに、まずは『ベルばら』のストーリーについて、簡単ですがご紹介します。

時は「フランス革命」の起こる前、18世紀末。当時のフランス国王妃マリー・アントワネットを始めとする4人の人物たちが、フランス・ベルサイユを舞台とし、革命という激動の時代の波に翻弄されながらも、華麗に気高く生き抜いた様子を描いた物語です。

しかし、彼らの魅力をあますところなく描くだけにはとどまらず、権力などを笠に着ようとする人間の醜さや、女性同士の諍いまでもが表現されていたり、「フランス革命」に至るまでに湧き上がった平民たちの感情の昂りをリアルに描いているところも、本作の大きな魅力となっています。

そんな『ベルばら』は史実を元にしたフィクション作品です。

『ベルばら』を彩る4名をご紹介

それではメインの登場人物4名を簡単にご紹介しましょう。

マリー・アントワネット(CV.平野 綾)

まずは、2024年に開催されたフランス・パリオリンピックの開会式でも話題となったほどの歴史上の人物、マリー・アントワネット。

オーストリアから14歳という若さでフランス王室へ嫁ぎ、未来のフランス国王妃となったアントワネット。のちに起こった「フランス革命」で処刑されることとなった彼女が、フランスに足を踏み入れるところから、この『ベルばら』の物語は始まります。

劇場アニメ『ベルサイユのばら』でマリー・アントワネットを演じるのは平野 綾さん。『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒ役をはじめ、『DEATH NOTE -デスノート-』の弥海砂役など、人気作品のキャラクターを演じています。

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(CV.沢城みゆき)

未来のフランス国王妃となるアントワネットを警護することになったのはオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。オスカルはフランス王家に忠誠を誓う将軍家の娘として生まれたがゆえ、父の跡取りとなるべく軍人として男性のように育てられました。

そんなオスカルの生き様は、まさにばらのごとく華やかで激しいものとなり、”『ベルばら』といえばオスカル”が連想されるほどの大人気を博します。

劇場アニメ『ベルサイユのばら』でオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを演じるのは、沢城みゆきさん。『ルパン三世』の峰不二子役をはじめ、『鬼滅の刃』の堕姫役など、人気作品のキャラクターを多く演じています。

ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(CV.加藤和樹)

アントワネットとオスカル、2人の女性の人生を翻弄するかのように登場するのは、スウェーデンの伯爵、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。

アントワネットが身分を隠して参加した仮面舞踏会で、偶然出会ってしまったフェルゼン。その運命的な出会いを境に、2人は互いに心を通わせるようになります。

劇場アニメ『ベルサイユのばら』でハンス・アクセル・フォン・フェルゼンを演じるのは、加藤和樹さん。『B-PROJECT』の愛染健十役をはじめ、『イケメン戦国シリーズ』の伊達政宗役など、人気作品のキャラクターを演じています。

アンドレ・グランディエ(CV.豊永利行)

きらびやかな存在の3名に加え、この『ベルばら』に欠かせない人物……それが、オスカルの幼なじみでもあり、従者のような存在としてオスカルの影のように付き従うアンドレ・グランディエ。

これまでの3名たちとは異なり、アンドレだけが平民の身分。それゆえにさまざまな軋轢や苦悩が生まれており、オスカルの人生を語るにあたって、彼なしでは何ひとつ語り尽くすことは出来ません。

劇場アニメ『ベルサイユのばら』でアンドレ・グランディエを演じるのは、豊永利行さん。『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のポップ役をはじめ、『ユーリ!!! on ICE』の勝生勇利役など、人気作品のキャラクターを多く演じています。

思わず憧れる!! 美しく強きオスカル

『ベルばら』の具体的なストーリーは知らずとも、例えば宝塚歌劇団での公演などで「オスカル」が人気であることをご存じの方も多いのではないでしょうか。

オスカルといえば、「男装の麗人」として認識している方も多いはず。その人物像は、クセがありながらも美しいブロンドの髪、凜々しい顔立ち、すらりとした立ち姿など魅力的な要素ばかり。

さらには屈強な百戦錬磨の軍人男性たちを相手にしてもひるむどこか立ち向かう気の強さ、そして気持ちだけでなく技術まで上回り勝利してしまうかっこよさ……! 
 


 
家柄もよく、美しさと強さを兼ね備え、女性同士で馴れ合うなど眼中にもない潔さ。民衆の貧しさに心を痛め、自身の「貴族」という身分を越えてフランス国民のために闘おうとするオスカルの熱く気高き姿は、原作連載当時から令和となった今もなお、多くの女性の心をわしづかみにしています。
 
原作の連載が始まったのは1972年、昭和でいえば47年──日本は戦後の「高度成長期」と呼ばれる時代でもあり、日本人の多くは「男は仕事、女は家庭」という認識が一般的な時勢でした。
 
外で働く夫を支える妻、という構図が「当たり前」とされていた時代に、男性と肩を並べ、激しい時代の流れに抗うオスカルの生き様は、女性にとって憧れや理想的な存在に映り、読者・視聴者の女性たちをとりこにしたのでしょう。

一夜だけドレスをまとったオスカルの思いが切ない

女性でありながら男性同様に育てられ、男性優位な世界の中で、剣で身を立てていたオスカル。そんなオスカルが恋した相手は、フランス国王妃であるマリー・アントワネットと心を通わせる伯爵・フェルゼンでした。

フェルゼンの友人として振る舞っていたオスカルでしたが、ある夜、たった一夜だけ美しいドレスに身を包み、「女性として」舞踏会に参加します。名を隠し、フェルゼンのリードで、ほんのひとときだけのダンスに身を投じるオスカル。

男性並みに生きることを選んだオスカルが初めて知った「愛」であり、愛する男性と夢のような時間を過ごすために、刹那の時間だけでも女性であることを選んだ瞬間でもありました。

それは、これまでの自身の人生をひっくり返してしまうような選択でしたが、そうすることで叶わぬ情熱を胸に秘め、フェルゼンへの思いを断ち切ることとなったオスカル。

ドレスを着て舞踏会へ行くことを無邪気に喜ぶばあや(マロン)の様子や、きらびやかな舞踏会に映えるオスカルの美しいドレス姿──そんな華やかな状況の中、最後の思い出にするため臨むオスカルの儚さもまた、多くの女性たちの共感を集めているポイントなのでしょう。

身分を超えた愛の行方も熱い

そんなフェルゼンへの思いに身を焦がしていたオスカルを悲痛な思いで見守っていたのは、幼少期からの友人でもあり、身分制度的にはオスカル(主人)の従者のような立ち位置であるアンドレでした。

年齢も近く、幼少期から友人としての関係性も築いていたアンドレは、ずっと影のようにオスカルを一番近くで支えていました。オスカルを思う気持ちがいつしか「愛情」へと育ったアンドレでしたが、あまりに近すぎる関係性ゆえに彼の気持ちに気づけないオスカル。

さらには、貴族のオスカルと平民のアンドレという関係性も、2人の行く末に影を落とすことに──! 当時のフランスでの貴族と平民は、結婚はおろか求愛することも叶わぬほどのゆるぎない身分制度があった時代でした。

こうした身分制度が、2人の「愛」を困難にしただけではなく、貴族に対してふくらみ続けた平民の不満がやがて憎悪となり、「フランス革命」へと時代を押し流していきます。

激しく変化していく時代に翻弄され続ける2人の愛と運命。それもまた美しく尊く、まさにベルサイユに咲き誇った「ばら」のような輝きをもたらしているかのようでもありますね。

女性同士の諍いもリアルで見応えあり!

オスカルやアントワネットという美しい女性たちや、華やかな貴族生活にきらめく舞踏会。美しいドレスに輝く宝石など色とりどりにまばゆい本作で、実はリアルに描かれているのが「女性同士の醜い争い」。そんなところも、『ベルばら』になくてはならないスパイスとなっています。

少女という年齢でフランスに嫁ぎ、次期フランス国王妃という大きすぎる権力を得てしまったマリー・アントワネット。その権力と財力という甘い蜜に惹かれ、アントワネットをそそのかそうとする貴婦人たち。
 


 
アントワネットに取り入ろうとするどころか、お互いの足をひっぱり合ったり、貶めようとするなど、きらびやかな世界とは裏腹な醜さで欲望のままに行動する女性たちの姿は、いつの世でも誰しもが心当たりのある人物像のよう。
 
美しさや身分の高さだけにこだわったり、貧しい身の上ゆえに権力や財力を得てなりあがろうとする女性たち。きれいごとだけでなく、こうした薄暗い感情を描いているところも、この作品のおもしろい部分でもありますね。

ベルサイユの「ばら」とは結局誰のことなのか

タイトルでもある「ベルサイユ」の「ばら」というのは一体誰を指すのだろう──原作だろうとアニメだろうとミュージカルだろうと、本作に触れたことのある人の中にはそうした疑問を持ったことがある方も多いのではないでしょうか。

事実、原作の池田理代子先生からこの疑問に対する明確な回答は出ていない状況です。しかし、集英社『ベルサイユのばら』コミック第9巻のあとがきには、池田先生の言葉で「この作品の主人公は3名」であることが明かされています。

その3名とは、マリー・アントワネット、オスカル、フェルゼンです。
そうしたことから、この3名が「ベルサイユ」に咲いた「ばら」である、と言えるのかもしれません。

しかし、原作連載当時はその3名を主人公として描いていたのかもしれませんが、『ベルばら』が大ヒット作品となり、本作に触れる分母が増えるに従ってアンドレを推す声も確かなものとなっていたことでしょう。

連載50周年を迎えた今となっても、多くの読者・視聴者たちの中で本作は愛しく育まれており、むしろファンの中ではメインの4名こそが「ベルサイユ」を舞台にそれぞれの「ばら」として咲き誇った人物として、多くの人の心に光という「華」を植えたのかもしれませんね。

最後に

長く愛されることは、幾ばくの年月を経ても人々に再会をもたらせてくれるもの……! 

2025年1月公開の劇場アニメ『ベルサイユのばら』は、これまで『ベルばら』を愛して来た方々にも、今回初めて出会う人々にも、「懐かしく」て「新しい」作品として映ることでしょう。

筆者も、リアルタイムで観ていたというよりは、アニメ再放送で触れた世代ではありますが、オスカルの苦悩やアントワネットの心情の移り変わりなどに対して、年齢を重ねるごとに自身の心持ちが変化していくのを感じています。

時代を重ねているからこそ感じられるその変化も楽しみつつ、新しい『ベルばら』に会いに行きたいですね。

個人的には、建造物としてのベルサイユ宮殿の美しさや、ロココ様式できらびやかに描かれるドレス細部の繊細さなどにもぜひ注目していただきたいです。

また作品を通して、改めてフランスの歴史を学び直したくなるこの機会、ぜひ劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
 

 
 
[文/おかもとみか]

2021夏から駆け出した新人ライター。大人になってから乙女ゲームに触れたことがきっかけで、男性声優さんに興味を持ち、本格的にアニメを見始めた文学部出身のオトナ女子。初めての乙女ゲームは『ときめきメモリアルGirl's Side(1st)』。作品などの聖地巡礼やコラボカフェも好き。ミドル層の男性声優さんやKiramuneレーベルについての記事を書くことが多いです。

この記事をかいた人

おかもとみか
2021夏デビューのオトナ女子新人ライター。ミドル層の男性声優さん関連記事を書くことが多いです。

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作品名 ベルサイユのばら(映画)
放送形態 劇場版アニメ
シリーズ ベルサイユのばら
スケジュール 2025年1月31日(金)
キャスト オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹
アラン・ド・ソワソン:武内駿輔
フローリアン・ド・ジェローデル:江口拓也
ベルナール・シャトレ:入野自由
ルイ16世:落合福嗣
ジャルジェ将軍:銀河万丈
マロン:田中真弓
ナレーション:黒木瞳
スタッフ 原作:池田理代子(集英社「マーガレット・コミックス」刊)
監督:吉村愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之 KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
主題歌 「Versailles - ベルサイユ - 」絢香
公開開始年&季節 2025アニメ映画

(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
映画『ベルサイユのばら』公式サイト
『ベルサイユのばら』公式Twitter
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