冬アニメ『もめんたりー・リリィ』阿部菜摘子さん(河津ゆり役)×村上まなつさん(霞れんげ役)インタビュー|第2話で描かれる衝撃と別れ──ふたりが語るその真意とは
第2話の収録について振り返る####――アフレコ前に起きていたこと
――ここで改めて、自身が演じるキャラクターについて、紹介いただけますか?
阿部:私はゆりの「人との距離の詰め方」がすごくいいなと思っていました。演じる前に、キャラクターのイメージを共有していただいたとき、「奥手な子にも、寄り添える心の豊かさを持った子です」という話をされていたんです。そのときは、それをお芝居にするのは難しそうだなと思いながら演じていたんですけど、実際に完成した第2話までを見たら、そういうところに落ち着けていたというか。そういうキャラクターになっていたなと思いました。
河津ゆりは第2話で亡くなってしまったんですけど、このあとも、みんながゆりのことを思い出してくれるので、その中で第1話だけではわからなかった部分なども見えてくると思います。
――お芝居だけでなく、画も含めて、ゆりというキャラクターができていたなと思います。続いて、霞れんげです。
村上:短くまとめてしまうと、人見知りの女の子なんですけど、料理が好きで、それに対してはめちゃめちゃ真剣だし、すごくテンションが上がる子なんです。ずっとひとりぼっちだったんですけど、ゆりたちと出会って、ちょっとは心が開けてきていたんです。友達と言えるくらいには。
でも、友達になったと思ったところでゆりちゃんを失ってしまって……。れんげだけでなく、ほかのメンバーも、ゆりちゃんがいたからまとまっていたというか、ゆりちゃんがいたから、みんなで前を向いていられたんです。それなのにゆりちゃんを失ってしまったので、さぁこれからどうする?というところで、今までオドオドしていたれんげが変わるきっかけにもなるんですね。なので、このあと成長していくところがれんげの魅力だと思うので、その成長過程を見て、れんげをもっと愛していただけたらなと思っています。
――まさに奥手な子だけど、ゆりが入ってきてくれたことで、変われたところがありますからね。「友達」というワードが出てきましたが、第2話の物語と収録はいかがでしたか?
阿部:ゆりは芯が強く、いつも堂々としてとても元気のある子ですが、傷ついた状態で亡くなる間際にあれだけ言葉を残しているので、演じるのが難しくて。だから、死ぬ瞬間ってどんな感覚なんだろうと囚われて、すごく考え込んでしまったんです。
ですが収録の数日前に、とあるきっかけでその雁字搦めになっていた考えからすっと抜け出ることが出来たんです。人は亡くなる瞬間だけ、急に変わったりするわけじゃなく、それまでと地続きというか。言い方は変ですが、その人本人のまま亡くなっていくんだと。だから、ゆりも、ゆりのままで良いんだなと思えたんです。
ゆりはずっとみんなのことを心配しているんですよね。えり姉に「手、汚しちゃったね」とか。みんなとこれから何食べたい何したいってセリフも、死ぬとわかっているから、残るみんなに託すというか。悲しんで落ち込み過ぎないように、最後まで思いを持って言っているんだなと思ったので、それが伝わったらと思いながら演じました。
第2話の収録は、みんなの声が入っている映像に、あとはゆりだけという感じだったのでひとりでの収録でしたが、本番では不思議と一発で映像とも他のみんなの声ともタイミングがぴたっと合って。経験を経て生まれたものが、きっと何かしら乗っかったおかげ……であって欲しいなと思います!(笑)
村上:アフレコのとき、ゆりの声は聞いていなかったので、完成前の、みんなの声が入った段階のものを見させていただいたんですけど、そのときグッと胸に来るものがあったんです。その理由が、今わかりました。本当に魂がこもっていたんだなと思います。
ゆりは性格が前向きで明るいんです。もともとそうなんだと思うんですけど、みんなにそれを求められているから、明るくしている部分もあったのかなと勝手に思っているんです。本当は死ぬときってツラいし悲しいし、泣き叫んでもいいと思うのに、ゆりはそれこそみんなの心配をしたり、最後まで明るくいようと思っていた。それを実際にやっているところがすごく健気だし、そこにゆりの強さを見た感じがしました。本当に最高のシーンでしたし、その分、本当に悲しいシーンでもありました。泣いて悲しんでいるみんなとゆりの対比がすごく印象的でした。
――ゆりは、友達を失いたくないから友達を作らないというキャラでしたよね。
阿部:そうですね。でも本当は望んでいたんじゃないかなと思います。過去に友達とはぐれて失ってしまったという経験があったからですけど、葛藤しているというよりは、気づかないようにしていた感じがしていて。
もうずっと一緒にいるし、友達だとわかっていたけど、いなくなると悲しいってわかっているから、それに気づかないようにしている。まだ友達になっていないと思い続けようとしているみたいに感じました。
村上:ゆりちゃんは、明るい“けど”っていうのがすごくある子だと思っていて。明るいけど、傷つきやすい。だから明るいままでいたいという思いもあって、それこそみんなも明るくいてほしいと思っているんですよね。
そうやって自分が傷つかないように、自分が落ち込まないようにっていろいろな予防線を張っていて、それが逆に胸が苦しくなるというか。もっとみんなを頼っていいのになって思ったんです。傷ついた思いを出したって、きっと周りのみんなは受け入れてくれるはずなのに、それができないゆりちゃんがもどかしかったんですけど、最後の最後に、みんなも「友達だよ」って言えたんですよね。ゆりちゃんは死んでしまったけど、友達ではないと言い続けていたことで、みんなとの間にあったちょっとした距離とか壁が、最後の最後に本当になくなったんだな、という感じがしました。
――では最後に、今後どんなところを楽しみにしてほしいか、メッセージをお願いします。
阿部:思い出に焦点を当てている回もあるので、そこで今までこうだったんだなっていうのをより感じてもらえると思います。あと、何でこの機械たちが出てきているんだろうとか、わからないことがまだいっぱいあると思うので、最後まで楽しんで観てほしいなと思っています。
村上:オリジナル作品なので、このあとどうなっていくのか、どういう結末になるのかは誰も知らないんです。だからこそ、アニメを楽しむだけでなく、謎解きというか、考察を楽しんでいただけると嬉しいなと思っています。アニメを見ていて自分が気づいた違和感とか、ここはこうなんじゃないかっていうのを周りの方と共有していただけたら、よりこの作品を楽しんでいただけるんじゃないかなって思っています。小っちゃな違和感が、後々「うおー!!」ってなったりするので、楽しんでください。
[文・塚越淳一]