私も中途半端な役作りで臨むわけにはいかない――挑戦し続けるいのりの熱意で自身もスケートをリスタート|『メダリスト』春瀬なつみさんインタビュー【後編】
つるまいかだ先生によって講談社「アフタヌーン」で連載されている漫画『メダリスト』。本作のTVアニメが、2025年1月4日(土)よりテレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠で放送中です。
アニメイトタイムズでは前回に引き続き、結束いのり役・春瀬なつみさんへインタビューを実施。前編では作品との出会いや、本作のスケートシーンの振付を担当している鈴木明子さんから得た、氷上のいのり像について伺いました。
後編では、放送直後の第1話で印象に残ったシーンやアフレコ現場でのエピソードについて語っていただきました。
スケートを通して生まれるドラマも魅力のひとつ
――第1話で、春瀬さんが印象に残ったシーンをお教えください。
春瀬なつみさん(以下、春瀬):やっぱり、いのりがお母さんにスケートをやりたいと涙ながらに訴えるシーンです。司先生の中にある迷いもいのりの言葉で固まったと思いますし、きっとご覧になった方の中にもはっとさせられた方がいたのではないかなと。
実際に演じる時は何度も何度も試行錯誤しましたし、絵が付いたことでいのりの一生懸命さが増していて印象に残りました。
後は司先生がいのりにフリーレッグを教えてくれるところ。氷に触れていない方の足を高く引き上げると綺麗に見える技なのですが、それが本当に綺麗で……。司先生は筋肉が美しいスケーターで、この場面からはそのスタイルの良さや足の長さが伝わってきました。
私はフリーレッグ(※)も、フリーレッグで氷に触れていない足が綺麗に伸びている選手も大好きなので、本当に綺麗でお気に入りのシーンです。
※氷面に接地していない方の足
――演技に関してのディレクションはありましたか?
春瀬:物語が進むにつれていのりの成長が目覚ましいので、それにあわせて演じていくぞと意気込んでいたのですが、今の演技だと成長しすぎだと指摘が入ることがありました。最初がとても暗かった分、成長度合いを調整するのが難しかったですね。
やっぱりいのりは本格的にスケートを始めてから3ヶ月くらいしか経っていないので、どんどんしっかりしていくものの、成長させすぎないよう気を付けないとなと思いました。
――スケートを習う前後でも少し印象が変わったように思えます。
春瀬:あそこでいのりにとってひとつ成功体験ができましたし、司先生という太陽のような存在が現れたことで自分も同じくらい元気になれたのかなって思っています。
スケートができる喜びでいっぱいなのもそうですし、司先生がスケートで自分を認めてくれた、お母さんもやっていいと言ってくれた。そんな成功体験のおかげで変化が窺えたのかなと。
――ここからいのりとお母さんとの関係性も変わっていきそうです。
春瀬:いのりは同年代の子たちと比べて成長が遅かったので、序盤の転ばぬ先の杖を用意するかのような言動や行動も愛ゆえではあるんです。自分ができないと思っている部分が娘の成長にも重なって、できないと責められているような感じがしてしまっているのかなと。
お母さんは完璧主義で、自分にできるところまではやるみたいな意気込みを持っていて、子育ても完璧にやりたい。だけどいのりをちゃんと育てられていない感覚があって、そのフラストレーションからつい口を出してしまうようなところがあって。
いのりの気持ちもお母さんの気持ちもわかるんですよ。お母さん的には手のかかる子だと思っているから心配だし、無自覚に現状を決めて子育てをしてしまった。一方、いのりはそんなお母さんにスケートをやりたいと言う前からできないと壁を作ってしまった。
お母さんはいのりを助けたいと思っているからこそなのですが、いのりとしては絶対に譲れないことだったので、親子関係が今後どうなるのかも注目していただきたいです。
愛情をもって接しているからこそ、つい余計な一言が出てしまって、それが結果的にいのりの自信を奪うことに繋がってしまった。もったいない状況ではありましたが、これからどう変わっていくのか……ですよね。
――また、先にフィギュアスケートをやっていたというお姉ちゃんの存在も気になります。
春瀬:個人的にはお姉ちゃんより、いのりはお母さんに似ていると思っています。お姉ちゃんは言わなくても何でもできるタイプなので。先に生まれた子が手がかからなかっただけに、お母さんもいのりは何でできないんだろうと考えてしまったのかもしれません。
いのりとしてもお姉ちゃんと自分を比べたり、憧れている部分があります。姉妹なのでライバルではないですけれど、自分とお姉ちゃんを比べてしまうのが自信を失うことに繋がってしまったのかもしれない。
だけどお姉ちゃんは本当にいのりのことが大好きで、家族のことが大好き。みんながみんな家族想いの素敵な人たちなんです。今はまだすれ違っているけれど、スケートを通してひとつになっていけるところも魅力なんじゃないかなって思います。
――ちなみにアフレコ現場では印象的なエピソードなどありましたか?
春瀬:瀬古間さん役の村治学さんがスケートに興味を持ってくださって、会う度に「このDVDを買ったんだけど、この選手凄いね!」みたいな話をしていました。すると他のみなさんも興味を持ってくれたんです。それでみなさんから色々な質問をもらったのですが、私もわからなかった時は一緒に考えたり。そういう時間も楽しかったですね。