ドランとセリナの大きな成長とともに、“等身大”の姿が見られた最終回──アニメ『さようなら竜生、こんにちは人生』ドラン役 武内駿輔さん&セリナ役 関根 瞳さん【連載インタビュー第8回】
カラヴィスの目論見を打ち破り、見事に現実への帰還を果たしたドラン。新たな決断はセリナとの行き違いを引き起こしてしまいましたが、二人の想いを伝え合うきっかけにもなりました。
大団円の最終回を迎えたTVアニメ『さようなら竜生、こんにちは人生』。本作をより楽しむためのリレーインタビューも今回が最終回。最後までよきパートナーであったドラン役の武内駿輔さんとセリナ役の関根 瞳さんの対談をお届けします!
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二人が寄り添い合ったからこそ、お互いに成長することができた
──まず、第11話から振り返っていきたいと思います。愛するベルン村がなくなることになり、ドランが大きなショックを受けていましたね。
武内駿輔さん(以下、武内):僕もたまにああいう夢を見るんですよ。仕事で失敗する夢とか。
関根瞳さん(以下、関根):(笑)。
武内:本当に嫌だよな、こういう夢……と思いながら見ていました。でも、強敵のカラヴィスにふさわしい攻撃でしたね。肉体的な攻撃よりも精神的な攻撃のほうが、心が折れやすいことをよくわかっている。なんとか乗り越えることはできましたが、弱さを的確に突いてくる非常に手ごわい敵だったと思います。
関根:夢の中のセリナは「私も村を出ていきます」みたいなキャラだったので、私も心苦しかったです。いつも冷静で、誰かに手を差し伸べる側だったドランさんが追い詰められ、それを乗り越えようとする……。ドランさんの揺れ動く心が見られ、村や家族への深い愛情がわかるシーンでもあるので、心苦しさもありつつ、大きな見どころだったなと思いました。
武内:今の人生がどれほど彼にとって大切なものなのかが顕著に表れたシーンでしたね。
──そのドランが復活する契機となったのがセリナの声でした。実際のセリナというよりはドランの心の中のセリナなのかもしれませんが、やはりセリナという存在が救いになったのでしょうか?
武内:そうですね。あそこで聞こえるのが両親や村人の声ではなくセリナの声だったのは、やはりセリナがかけがえのない存在になっていたからだと思います。ドランは、自分自身を人間でありながらも前世の記憶がある特殊な存在だと認識しているからか、孤立感のようなものがあった。だからこそ、似た境遇のセリナが寄り添ってくれて、ある種の仲間意識、家族のような感覚を持つようになり、声が聞こえてきたのだと解釈しました。
関根:セリナは最初からずっと変わらない優しさがあり、ドランさんだけではなく、クリスさんも含め、みんなを一つにしてくれる存在でした。ドランさんもそういう印象を持っていると思ったので、私もセリナの優しさを意識するようにしました。
──第12話では、ドランがベルン村を出て魔法学院の試験を受けることを決意しました。
武内:学校に通うというのは、竜生のときには絶対に味わえない感覚ですし、マグル婆さんのもとで勉強をしはじめた頃から知らず知らずに芽生えていた希望なのかなと思います。
誰かに教えを乞うことの素晴らしさというんでしょうか。何かを学び、発見する楽しさがどんどん積み重なり、より大きなものに挑戦してみたくなった。それがすごく人間らしいなと感じましたし、ドランがどのように人格を形成してきたかがわかるシーンでした。
関根:私は、ドランも16歳の普通の少年なんだなと思いました。私たちでいう、「もっと本格的に学びたい、東京に進出したい!」みたいな感覚じゃないですか?(笑)
武内:確かにね(笑)。
関根:大きな成長も感じましたが、ここにきて等身大の16歳っぽさを感じられたのが嬉しかったです。
──上京といいますか、立身出世を願う若者みたいな感じはありますよね。
関根:ドランさんを送り出すベルン村の皆さんもすごくよかったです。もしかすると村の人たちもわかっていたのかもしれないですね。ドランさんが自分のことよりも村のことを大事にするあまり、何か溜め込んでいるんじゃないかって。ずっと村にいてほしい。でも、ちゃんと送り出すことが彼のためであり、今後の村の成長のためでもある、と。ドランさんだけではなく、村全体、村人全員の大きな成長が見られた気がしました。
──ただ、ドランが村を出ていくというのはセリナにとってはショックな出来事でした。
関根:送り出したい気持ちと一緒にいたい気持ちの両方があるんだと思います。セリナはもともとベルン村の住人ではないですし、残るにしろ、ついていくにしろ、やはり人間ではないラミアということで、どこにいても邪魔になるのではないかって。その複雑な気持ちもまたセリナの優しさなんです。
しかも、セリナもドランさんも寂しいからといって、自分の気持ちを優先するタイプではないので、お互いを思いやるからこそすれ違ってしまう。私としては、ドランさんとセリナは何かで繋がって導かれているんだから、離れたとしてもまた会えるはずだよと思っていました。安心してていいんだよって、強い確信がありましたね。
武内:ただ、セリナの出ていくタイミングが切ないんですよね。
関根:ドランさんのことが好きだと気づいたところで、ですからね。でも、「女の子~!」って気持ちになりました。ラミアとか関係なく、普通に恋をしている等身大の女の子なんだって。切なくもありましたが、とてもかわいらしくも見えました。
──ドランへの手紙を読むシーンは、どのようなお芝居を意識されたのでしょうか?
関根:すごく悩んだシーンでした。トーンが低すぎて寂しい感じになると後を引く感じになってしまいますし、かといって明るく割り切った別れというわけでもないので……。試行錯誤しながら現在の形になりました。自分でもすごく気に入っているシーンです。
──そして、ドランは旅立ったセリナを竜の姿になってまで追いかけていきました。
武内:恋愛としてセリナに何かを伝えたいというよりも、仲間なんだからちゃんと話をしたい、誤解を解きたいという真摯な気持ちがあったんだと思います。
関根:再会してからのやりとりもすごくよかったです!
武内:先ほどもお話ししたように、竜生と人生を生きるドランと人間とラミアの間で生きようとするセリナは、似たような立ち位置にあります。そこで生きるセリナを見て、ドランが感化されたところもありますし、二人が寄り添い合ったからこそ、お互いに成長することができた。その意味でもドランの中でセリナの存在がどんどん大きくなって、これからも一緒にいろいろなことを乗り越えていきたいという素直な気持ちが表れたんだと思います。
関根:ドランさんは終始まっすぐでしたよね。セリナもまっすぐな子ですけど、ドランさんは言っていることと思っていることに違いがないじゃないですか?
武内:そうですね。言ったことがそのまま思ったことですから。
関根:変わらないところがすごいですし、逆にセリナはやっぱり気を使ってしまうんです。ドランさんを思うからこそ、気持ちを抑えなきゃ、私は魔物なんだからって。ドランさんは一人で行ったほうがいいし、自分も怖がられなくて済む。でも、自分が一緒にいたいと思っている相手から、「一緒に新しい世界を見たいんだ」なんて言われたら……ぜっっったいに嬉しいんですよ!!
一同:(笑)
関根:たとえ一緒に行けなかったとしても、そう思ってくれることが嬉しいですし、やっぱり感情が溢れてしまいますよね。あのシーンは喜びと涙とで、さじ加減の難しいシーンでしたが、武内さんに引っ張っていただけました。
武内:とんでもないです。ドランとしてはセリナに真摯な心で接しているので、嘘偽りなくというイメージでした。言動に他意はなく、その言葉が持つ意味をそのまま伝えるドランらしさが出たシーンです。
──そのあと、セリナがドランからの愛の告白だと受け止めたところもかわいかったです。
関根:そういうところも女の子だな~と思いました(笑)。でも、それぐらいわかりやすいアクションがないとお互いに全然進まない二人というのは微笑ましかったです。