冬アニメ『全修。』スタッフ連載インタビュー第1回:山﨑みつえ監督|「演出面白いですか?」って聞いたら「右向け右、って言ったらみんな右向くんだよ、おもしれえだろ」って言われて
株式会社MAPPAのオリジナルTVアニメ『全修。』が、2025年1月5日よりテレ東系列ほかで放送スタート。本作の主人公は高校卒業後アニメーターとなり才能を開花させ、あっという間に監督デビューを果たした新進気鋭の天才監督・広瀬ナツ子。初恋をテーマにした劇場ラブコメ作品のコンテ作業中に意識を失った彼女が目を覚ましたとき、目の前に広がっていたのは、子供の頃に夢中になったアニメ映画『滅びゆく物語』の世界でした。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力、そしてアニメ業界のお仕事に迫るインタビュー連載を展開! 第1回は山﨑みつえ監督にお話を聞きました。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』と『カウボーイ・ビバップ』を見て、アニメ業界も面白そうと思い足を踏み入れた山﨑監督が思う、アニメ監督の役割とは?
ナツコの机は実際の女性アニメーターさんたちの机を参考にしてます
──オリジナルアニメ『全修。』放送がスタートしました。改めて、本作がどのような物語なのか教えてください。
山﨑みつえ監督(以下、山﨑):天才アニメーター兼新人監督・広瀬ナツ子が、9歳の頃に好きだったアニメ映画『滅びゆく物語』のなかに転生して、映画のキャラクターの運命を変えていく話です。
──原作がない(=誰もが初見)という、オリジナルアニメの第1話を制作するうえで特別意識することはありますか?
山﨑:原作ありのものはすでに原作で情報が提示されているので、取捨選択するだけでいいんですけど、オリジナルは取捨選択前段階の「こういう設定で、こういうふうに面白くしたい」を詰め込んだあとに情報を削りつつ分かりやすくする作業になるので、原作ありよりも決めることが多かったです。
設定も美術さんに100枚以上描いてもらいましたし、(キャラクター原案・世界観設定の)辻野さんや(キャラクターデザイン担当の)石川さんにもイメージボードを何枚も描いてもらいまして、大変助かりました。楽しかったですけど、没も色々あったので大変な作業でした。
──本作の第1話を制作する際にこだわった点や、山﨑さん自身が印象に残っているシーンを教えてください。
山﨑:ナツコの机は、実際スタジオを歩き回って見せてもらった女性アニメーターさんたちの机を参考にしてます。ドリップコーヒー、かわいい文具、お気に入りのチビキャラ飾ってたり、頭痛薬があったり、ゴミがぐしゃっとなってても気にしてなかったり、机の壁には終わったリテイク表や、もう終わった予定のポストイットなどが貼ってあったり。ナツコが使っている鉛筆はMITSUBISHIの2Bなのですが、それは私が2Bを使っているからです。
スタジオコンコンは40年ぐらい続いている古いアニメスタジオのつもりです。昔のポスターが貼ってあるなど、あるあるのスタジオの様子を見てもらえると嬉しいですね。今後のヒントが写っていたりします。
──タイトルの『全修。』もインパクトがあります。こちらはどのような意図で付けられましたか?
山﨑:業界的にぞっとする単語で目を引いて、よいと思いました。ナツコは大切で大事にしてきたアニメを「修正」することに抵抗があるので、どうやって「全修。」に至るのか、お話で楽しんでもらえたらいいなと思ってます。
──山﨑さんは実際、「全修(オールリテイク)」となった経験、もしくはオールリテイクをお願いした経験はありますか?
山﨑:ありますよ。つい最近だと『進撃の巨人』で……。勉強になりました。自分が演出チェックでレイアウト全修(描き直し)するのは「やむなし」と判断した場合ですが、残念ながら毎話数1カット以上はありますね。