![安田現象&種﨑敦美が紐解く『メイクアガール』の“心(こころ)”【インタビュー】](https://img2.animatetimes.com/2025/01/fe782379946cd773cca7675f7566bbbc67807680a041a7_34831210_0c6e266b5d41db1f7d879454890d456690e807cd.jpg)
個人制作の経験を活かした映画作り。“おばあちゃんのお手玉”のような安田現象作品の原点ーー長編アニメーション『メイクアガール』安田現象監督&種﨑敦美さんインタビュー
SNS総フォロワー600万人超のアニメ作家・安田現象監督による、初の長編アニメーション『メイクアガール』が2025年1月31日より全国ロードショー!
舞台は現在より少し先の時代。科学少年「水溜明」が“人造人間のカノジョ”「0号」を作り出したことで予測不能のサイバーラブサスペンスが動き出します。
公開を前に、安田監督と0号役・種﨑敦美さんの対談が実現! 個人制作の経験を活かした制作体制、様々なキャラクターを演じてきた種﨑さんが「難しかった」と語る0号の演技についてお話を伺いました。
“おばあちゃんのお手玉”のような温かさ
──公開を控えた今のお気持ちをお聞かせください。
安田現象:やっぱり感慨深さみたいなものを感じますね。この作品は、もともとは自主制作のショートアニメでしたが、自分のアニメ作家としての進路を決定づけて、そこから商業作品の1本目のきっかけを作ってくれました。ショートアニメを作っていた頃を思い返すと、ここまでの規模になるとは思っていなかったので、今はただただ感慨深いです。
種﨑:2024年2月の生配信で監督が制作までの経緯をお話されていたとき、「待ってました!」とか、「やっと観れるんだ!」というコメントで溢れていて、本当に沢山の方々が待ってくださっていたんだなと。生配信の時はまだまだ公開は先のことだと感じていたのですが、あれから数ヶ月経ち、ついにみなさんに観ていただけるんだなと嬉しい気持ちです。
──その生配信では安田監督の過去作品も観られていましたね。改めて、安田現象作品にはどんな魅力があると感じられましたか?
種﨑:それぞれの作品に思い入れがあって、作るまでにいろいろなことを考えられたんだろうなと感じました。いくつか観させていただく中で、なにか共通するものを感じていたんですけど、なかなか言語化が難しくて。だけど最近になって“おばあちゃんのお手玉”という表現が浮かんだんです。よくわからないと思われそうですが(笑)。
安田:懐かしいみたいな?
種﨑:ノスタルジックというか……でもそんなに格好良い言葉ではなく、温かいものを感じるような。「それぞれ違う作品なのに、どれも“温かくて可愛い”と感じるのは何でなんだろう?」と思っていたんですけど、それは監督がひとりで心を込めて作っているからなんじゃないかなって。だから“おばあちゃんのおはぎ”でも良いです。
安田:個人的にも、ノスタルジックは趣味に通ずるものがあります。そこに可愛さを入れることで魅力に繋がっていたのなら嬉しいことです。
個人制作の経験を活かした少人数のワークフロー
──本作は短期間かつ、少人数のチームで制作に臨んだと伺っています。具体的にはどんな手法が用いられたのでしょうか?
安田:とにかくいろいろな工程を省略するという力技のオンパレードです。自分のこれまでの仕事を振り返っていくと、最初に「2分半のフル3Dアニメを3ヶ月で作って」と言われた時「かなりの無茶振りだな」と思ったんです。
でも、どうにか完成させることができて。次に「2ヶ月で4分のものを作って」と言われた時は「さすがに無理だ」と思いきや、これもなんとかなりました。さらに「1ヶ月半で4分の作品を作って」と言われましたが、やっぱりなんとかなったんですよね。
その中で、「やる必要のないことはやらない」という選択をし続ければ、その先に少ない稼働でも作品を作りきることができる、という気付きがありました。そして今回、その経験をチーム単位で運用して長編アニメの制作フローに落とし込んでいます。
──今回は複数人が参加するということで、チームの指揮役も担われたと思います。実際に監督を経験された感想をお聞かせください。
安田:ひとりで作る場合、シーン毎の「力を入れる・入れない」を言語化しないで済みますし、スケジュールも自分ひとりが「頑張る・頑張らない」ですべてが完結します。自分以外の人たちとひとつの映像を作るにあたって、チームで運用できるフローを作って共有したり、スケジュールが遅れたとしても状態維持できるようにしたりと、作ることそのもの以外の環境作りの大変さに気付かされました。
でも、自分では発想しなかったであろうものが上がってきたり、自分より上手なキャラクター表現を見られる素敵な瞬間が沢山あって。制作を通して、「これがチーム制作の面白さなのかも」と実感する場面が何度もありました。
今回のチームメンバーは、もともと自分の作品が好きで「一緒に作りたい」と言ってくれた人たちなんです。でも、僕は“自分の思い描いているもの通り”には作ってほしくないので、彼らの中にあるクリエイティブを活かす形にしています。任せるところはお任せして、彼らの中から生まれるクリエイティブをしっかりと発揮していただいて。ちゃんとベクトルを共有すれば、その後は信頼することも大事なんだと勉強になりました。