ついに『魔法使いの約束』に触れる時が来たわね──都志見文太先生つながりで『アイナナ』マネのライターが満を持して『まほやく』の賢者になってみた
2019年11月にアプリがリリースされた『魔法使いの約束』(以下『まほやく』)。2018年夏からどっぷり『アイドリッシュセブン』(以下『アイナナ』)の沼にハマっていた筆者は、当然『まほやく』の存在をアプリリリース前から知っていました。
胸を引き裂くようなストーリーに定評のある『アイナナ』を手がける都志見文太先生が執筆しているということで、『アイナナ』マネの間でリリース前から話題になっており、いざ配信が開始されると友人を含めみんな次々に『まほやく』沼に落ちていっていました。
しかし、私はまだ『アイナナ』熱が滾っていたことや『ヒプノシスマイク』やその他のコンテンツを追うのに手いっぱい。『まほやく』ストーリーを読んだ友人の悲鳴が度々聞こえてきていたため、気になりつつも実際に手を出すことはなく、その後もなかなか始める機会を掴めないまま、5年が経過してしまいました。
ところが、2025年1月からなんとアニメが放送されるというではありませんか。ついに『まほやく』の世界に足を踏み入れるべき時がきたのです。早速プレイしてみると、あっという間に『まほやく』の沼にどっぷり。というわけで、プレイした感想を綴らせてもらうことにしました。
※本記事にはネタバレが含まれますのでご注意ください。
ライタープロフィール
2018年のナナライディレイビューイングで『アイナナ』に沼落ちする。MEZZO”担、そーちゃん推し。小学生の頃から『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『黒執事』『家庭教師ヒットマンREBORN!』『おおきく振りかぶって』など様々な作品に触れて来た生粋のオタク。『ジョジョの奇妙な冒険』から『干物妹!うまるちゃん』まで守備範囲は結構広い。当然のように腐女子。
『まほやく』は他者との歩み寄りの物語だった
アイドルものにもかかわらず心がヒリヒリと痛むほどにリアルな人間模様が描かれる『アイナナ』。そんなストーリーを手がける都志見文太先生が、ファンタジー世界でどのようにリアルな物語を紡いでいるのかが私は一番気になっていました。
驚いたのは魔法使いが差別される存在であったこと。国ごとに程度の差はあるものの、多くの人間たちが魔法使いをどこか忌避しています。<大いなる厄災>から守ってくれているのになぜ……と初めは思っていたのですが、話が進むにつれて、月を退けられるほどの力を持つからこそ、人々は魔法使いを恐れていることに気づきました。
<大いなる災厄>から自分たちを守ってくれるときはまるで英雄のようにもてはやすのに、少しでも恐怖心を煽られてしまうと一気に不安に駆られ、手のひらを返して彼らを忌み嫌う自分勝手な人間たち。ファウストをはじめとした長く生きる魔法使いたちは、長い人生の間で何度もこのような仕打ちを受けているため、人間不信に陥っているのだと感じました。もちろんファウストは親友だった人間に火あぶりにされたことが決定的な出来事だとは思いますが、それ以前にも信じては裏切られるということを繰り返し経験してきただろうことは想像に難くありません。
私が印象的だったのは、第6章「魔法舎に火を放て」で恐怖心が極限まで高ぶった人間が魔法使いを襲うシーン。暴徒化した兵隊たちが魔法使いたちの話を一切聞くことなく攻撃を続ける様子は現実でもありうるような光景で、こうやって戦争や紛争に発展していくのだろうと感じるほどにリアルでした。<大いなる災厄>よりもよっぽど恐ろしいもののようにさえ思います。
また、我慢しきれずにやり返そうとしたファウストをスノウとホワイトが制止するシーンも強く印象に残っています。「我らが人を傷つければ大事になる。堪えるのじゃ。」この一言で、魔法使いたちが自分たちの持っている力の強さを自覚していること、そのうえで理不尽な扱いにも、攻撃にも、長年耐え続けていることがはっきりとわかり、彼らの長い苦しみに胸が苦しくなりました。このような場面はこの一度だけでなかったのでなおさらです。
ちょっと変わったところはあるものの、そのほとんどが人間と同じように心を持つ魔法使いたち。友達ができれば嬉しいと思うし、自分が作ったご飯を食べておいしいと言われたら喜ぶし、魔法使いというだけで嫌われれば悲しく思うし、自分への偏見で家族が嫌な目に遭えば申し訳なく思う。そんなところは普通の人間と変わりありません。
私が印象に残っているのは、クロエがプレゼントしたスカーフを返されてしまったシーン。友達になったはずの人間からの仕打ちに涙する彼がかわいそうで私も涙が出たのですが、それ以上に、彼が魔法使いでなければたくさんの友人に囲まれて幸せに暮らしていたのではないか、とそんなパラレルワールド的な世界が想像できたからでした。明るく社交的なクロエは、魔法使いに対する偏見がなければたくさんの人が集まってくるくらい魅力的で好かれる人物だと思うのです。彼が魔法使いや人間に関係なく多くの友人と幸せに暮らす日々を願わずにはいられません。
また、正体を隠して料理屋を営んでいたネロが、魔法使いと知られただけで店をたたまないといけないと思ったことも悲しかったです。彼は自分の料理を食べておいしいと言ってほしいだけなのに、偏見のせいでその純粋な想いが叶わなくなってしまうことを考えると胸が痛みました。
私が感服したのは人間と魔法使いだけではなく、魔法使い同士の偏見も描かれていた点です。幼いミチルが北の魔法使いを悪者だと一括りにして批判し、個人を知ろうとしていないところは魔法使いに対する人間の偏見と全く同じ。そのことに無自覚なミチルの幼さと危うさが今後の嵐の目になりそうでヒヤヒヤしています。慕っているフィガロが元々北の魔法使いだと知った時、彼は考えを改めるのか、それとも裏切られたと思うのか……。ルチルをはじめ周囲の魔法使いたちが彼を良い方向に導いてくれることを願うばかりです。
リアルな差別や偏見がはびこる世界でも、希望の光が描かれるのが都志見先生の物語。初めは魔法使いを嫌っていたドラモンドやクックロビンが、魔法使い個人と関わったことで考えを改め、終盤では彼らの味方をするようになりますが、これこそが差別や偏見に対抗する手段だという都志見先生の解答だと私は感じました。きちんと歩み寄って相手を知れば差別も偏見もそうそう生まれないのではないでしょうか。
さらに、中央の都で魔法使いたちが派手に民衆を救ったことで、魔法使いたちは一躍ヒーローに。加えて、王子であるアーサーが最強の魔法使いであるオズを育ての親と堂々と紹介したことで、人間と魔法使いが共存する世界への第一歩を踏み出したように感じられました。
もちろん簡単に解決するような問題ではないことは重々承知しています。人間と魔法使いの間の差別や偏見はこの世界に古くからある根深い問題であり、両者の共存は双方が長年望みながらも成就できていない課題なのでしょう。それはきっと私たちの生きる現実世界にも当てはまるもの。『まほやく』の「賢者」となった今、私にできることは他者を怖がる前に相手を知るために一歩近づいてみることだと思うのです。
推し魔法使いが決められない……だと?
1部を読み終え、ひとまずのハッピーエンドで心を満たす私。しかしそれと同時に衝撃的な事実が浮き彫りに。
「推し魔法使いが決められないんだが……?」
21人も魔法使いがいるのに、確固たる推しが決められていないんです。そんなことある? と思ってしまうのですが、それもそのはず、魔法使いたちがみんなそれぞれに魅力的なのです。というわけでここからは、魔法使いたち一人一人の魅力について綴っていきたいと思います。筆者の赤裸々なメモをそのまま掲載していますので、生の感想をお楽しみください。
オズ
最強の魔法使いとしての絶対的で重厚な存在感が格好いい。言葉ひとつひとつに重みがあって、彼が口を開くと緊張感があるのも好き。一方で、アーサーへの深い深い愛情が感じられるところに人としてのぬくもりがあって、この人が最強の魔法使いでよかったと思った。
アーサー
生まれながらにして王の素質を持つ男! 自分を捨てた母親を憎まないなんてどこまで出来た人間なんだ君は……。民衆を導く王子なのに、オズを前にはしゃぐ姿はまるで飼い主が大好きな子犬のようで愛しくなってしまう。魔法使いと人間の架け橋となってくれ……。
カイン
最初から賢者をサポートしてくれてありがとう。魔法ではなく鍛錬で剣術を磨いた努力家なところが本当に格好いいです。男前な兄貴肌なのに全体的に大雑把なところに八乙女楽を感じずにはいられない。
リケ
最初は頑なだった表情が少しずつ解れていってるよね。どんどん自我を芽生えさせていくリケが楽しみで仕方ない。たくさんおいしいもの食べて楽しいことを知ってほしいけど、今まで自分が置かれていた状況がどういうものか気づいたときどうなるのか……心配でもある。
スノウ・ホワイト
『黒執事』が好きな私が大好きなビジュアル。なのに中身がおじいちゃんなのが堪らなく魅力的。子供のフリしてる2人が可愛すぎる。頬っぺた膨らませるのも可愛すぎる。何だかんだ強者なのもツボです。
ミスラ
The おもしれー男。捉えどころがなくて、容赦もなくて、自分勝手。だけど、チレッタのことは喜ばせたいと思って約束までしちゃったんだよね……。チレッタとの関係と人格形成の過程がめちゃくちゃ気になってる。
オーエン
最も私の情緒を揺さぶった男。目玉抉り取るような倫理観壊れた人物だったのに急に出てきた赤ちゃん人格に激しく動揺してしまった……! 元の底知れない恐ろしさのあるオーエンもいろんな表情と声色で迫ってくるところが好きだった。素のオーエンは一体どちら……。
ブラッドリー
盗賊団のボスだったはずなのにどこか可愛く感じてしまうのはなぜなのか。自分でブラッドリー様とか言うし、くしゃみで飛んでっちゃう厄災の傷もユニークで憎めない。ご飯で懐柔されるところなんてもはや幼児。
ファウスト
暗い性格に反して彼を慕う魔法使いが多いところに本当の人間性が現れてるなと思う。境遇から人間不信で消極的になってるけど、本当は仲間思いで人を信じたいんだよね……。明かされてない部分もあるけど、その心境を思うと涙が出る。
シノ
まず圧倒的にビジュアルが好み。可愛い顔してるのに大鎌使いなところもいい。気が強いけど、恩義のあるブランシェット家とヒースクリフへの忠義というか、思いがとにかく純粋で、自分の大事な人のために行動する一途さにはビジュアル以上に心を打たれました……。
ヒースクリフ
いい子なんだなというのがひしひし伝わる。人と関わるのは苦手だけど、賢者の魔法使いとして頑張ろうとしてるのがわかる。ファウストを先生と慕う姿もかわいかった。シノとの関係も含め、今後成長が見られそうな予感がしていて楽しみ。
ネロ
四葉環の見た目をした二階堂大和のような男。口先では文句を言いながらも何だかんだ面倒見が良くて、リケを可愛がるところに惹かれました。リケがどんな環境に置かれていたか気付きながらも、真実を知らせることはせずにただおいしい料理を提供する優しさが好きです。
シャイロック
色気の暴力。彼特有の言い回しも大好きで彼がしゃべるたびにドキドキワクワクしました。澄ました顔の裏でムルへの凄まじい愛憎を抱えているのかと思うとたまらなくなります。彼がどれだけムルが大好きで大嫌いなのかもっと詳しく知りたい。
ムル
無邪気な猫みたいなムルも紳士的な哲学者のムルも好きだ! <大いなる厄災>を愛しすぎてて、魔法化学兵器を生み出してしまって……と他にもいろいろやらかしてそうだけど、そんな謎多きところも魅力に感じられてしまう。
クロエ
魔法使いたちの中で一番純粋な子なんじゃないかと思ってる。社交的で友好的でおしゃれが好きで、一番普通の青年。人懐っこいところがとにかくかわいい。将来はたくさん友達作って幸せに仕立屋さんを営んでほしい。
ラスティカ
おっとりしていて温厚だけど結構謎が多い。彼の花嫁探しとは一体……花嫁見つけたら鳥籠に閉じ込めようとしててちょっと怖い。かと思ったら悲しむクロエの慰め方があまりに紳士的でびっくり。過去に何があったのかもっと知りたい。
フィガロ
飄々として掴みどころがないずるいイケオジすぎるフィガロ。ずるいと思っててもその余裕たっぷりな感じに惹かれてしまう自分が悔しい。なんで隠居生活してるんだよ……。明かされていない過去が気になりすぎる。ちなみにいくつなんですかね貴方……。
ルチル
ビジュアルが大好きな子その2。穏やかで本当にいい先生だ……と思ってたら箒にまたがるとスピード狂になるトリッキーなところが最高に好きでした。両親が亡くなってからも兄として頑張ってきたんだろうな……。彼も人と魔法使いの架け橋になれるポテンシャルがあると思う。
ミチル
ルチルとフィガロを慕う姿、リケと仲良く過ごしてるところが微笑ましい。けど危うい部分も多くてこれからの精神的成長が楽しみ。予言の子の謎が全く明かされてなくて、不穏だけどワクワクしてしまう。
レノックス
格闘タイプの羊飼いが斬新すぎて好き。本人ずっと仏頂面なのに腰にかわいい羊がずっといるギャップ萌え。しかも羊に蘇った死者を食ませるという謎魔法も面白すぎた。羊って草食ではないんですか?