『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』シリーズ構成・冨岡淳広さんインタビュー|「この作品を通じて、特撮好きとアニメ好きの間に“絆”が生まれると良いですね」
大切なのは“コマの外”
──本作の脚本を書くうえで、注力したポイントをお聞かせください。
冨岡:基本的には原作に沿う形のシナリオ作業ですから、全体をどう映像に転化していくか、飽きさせない画作りにするかを考えていました。注力というほど大げさなものではなく、そこは仕事として普段から自然にやっていることなんです。
ただ、この作品に関しては、常にキャラクターが動いている画面を意識しました。そういった場合、現場にいるキャラクターで何をするかという話になります。コマには描かれていない外の動きを考える、脚本としてはそういう部分にも気を遣っています。
──描かれていない部分に想像を膨らませる訳ですね。
冨岡:漫画を読んでいると自動的に分かってくるんですよ。イドラが難しいことを言っている横で、優雅にお茶を飲んでいるテルティナ、それを見守るロゥジー。それだけでも画面が持ちますし、映像的にも飽きなくなると思います。屋敷の中ならそういう芝居ですし、屋外の場面であれば「上空に鳥が飛んでいる」というシチュエーションも作れます。
──それが映像全体にメリハリを生むということでしょうか?
冨岡:はい。私は“演出(絵コンテ)のリズム”という言い方をしています。演出サイドがそのリズムを想像するタネを作るイメージです。脚本って台本とも言いますよね。文字通り、お芝居をするための“台”なんです。原作が小説でも漫画でも、あるいはオリジナル脚本でも、「どういう画と動きなら、お客さんが飽きずに観てくれるか」を考える必要があります。先ほども言ったように、そこで大切なのは“コマの外”です。同じ文章でも、脚本と小説とは全く別もの。脚本家の仕事を一言で言うなら、演出さんに「こういう画が欲しい」と伝えることです。
ちょっと脱線しますが、私はアニメの脚本では、擬音を沢山書いています。ジャンプする時の擬音が「バッ、と跳び上がる」か、「ビヨ〜〜ンと跳び上がる」かで聞いた印象は違いますよね。剣で斬った時に「ザシュッ」か「ドスッ」か。それだけでもアクションが変わってくるんです。これは『ポケットモンスター』という作品を長く書いているうちに身についた、自分なりのお作法と言いますか。演出サイドにイメージを伝えるための手法として、擬音でアクションや事象の規模を書き分けるようにしています。
仲間と作る方が面白い。それが私の絆です
──第01話の映像をご覧になった感想を教えてください。
冨岡:何より冒頭のツカミがしっかりしていましたね。そのうえで、原作のコマを大事にしながら、動きの芝居が付けられていますので、メリハリと主人公の熱さの塩梅がいいと感じてます。
──中吉先生と冨岡さんもちらっと出演されていましたが……?
冨岡:あれは監督の遊びです。加えて、中吉先生にとっては初めての経験なので、先生を引っ張るためにブースに入ったところもあります。
──そういった楽しんでいる雰囲気は視聴者にも伝わると思います。
冨岡:制作側の楽しい雰囲気が視聴者に伝わって、翌週も観てくれると良いですね。「第01話からフルスロットルじゃん!」って。それこそ第01話のアバンでは、原作で2ページほどの部分を大きく膨らませています。このパートで「本気で、誰もが知る特撮変身ヒーローの型をアニメでやりきろうとしている」という思いも伝わるはずです。いつも観ているような“あるある”とアニメ的な脚色がどちらも含まれていますから、色々な人がニヤリとしてくれるのではないかと思います。
実は後半のエピソードでも、アニメならではの要素が幾つかあるんです。むしろ第01話のアバンに匹敵する仕掛けがエスカレートしていきます。
──お話を伺っていて、「冨岡さんは仲間(チーム)でのモノ作りを何より重視されているんだな」と改めて感じました。最後に、ご自身にとっての“絆”についてお聞かせください。
冨岡:ひとりで考えていると、一本調子になりそうな気がするんですよ。川口監督から「キズナファイブの描写を足したい」と言われた時、率直に「確かにそこをもっと推す方が作品の特色が出る」と思ったんです。ひとつの番組の中で異世界の話と「キズナファイブ」の話が楽しめる、2度美味しい感じになる。作品を広げていくことも私のミッションのひとつだと思っていますし、他の人のアイデアは否定せず、リスペクトして受け入れるというスタンスで仕事をしています。仲間と作る方が面白い。それが私の絆です。
──そういったマインドはいつ頃出来上がったのでしょうか?
冨岡:若い頃はバラエティ番組の制作スタッフだったので、そこで学んだことが今、活きています。
当時はバブル景気で、TVのテンションがとにかく高かった時代。毎週ネタ会議があって、ディレクターやプロデューサー、放送作家さんなどたくさんのスタッフがネタを持ち寄ってきます。私もそのネタだし役の一人でした。色々な人のアイデアを作品に取り入れるのは、その経験からなんです。バラエティ番組にはクイズのコーナーもあれば、街の名物を紹介するコーナーもある。本当に色々なタイプのネタが揃っています。そういう意味では、根っこがバラエティ気質なのかもしれません。様々なアイデアを纏めてひとつの番組にする流れを見ているうちに、仲間大事、絆大事。そういう気持ちでモノ作りをするようになりました。
無理やり繋げてしまうと、『異世界レッド』もアニメ的な演出と変身ヒーローもののケレン味が融合している作品なので、実はバラエティなんですよ。双方の良いとこ取りで作られているんじゃないかなと。この作品を通じて、特撮好きとアニメ好きの間に“絆”が生まれると良いですね。
[インタビュー/小川いなり]
作品概要
あらすじ
その野望に立ち向かう、絆で結ばれた5人の戦士たちがいた。
そのヒーローの名は、《絆創戦隊キズナファイブ》!!
キズナファイブの5人は、遂にゼツエンダーとの最終決戦へ。
壮絶な戦いの中で傷付いていく仲間たち。
4人の想いを背に、《キズナレッド》は単身《絶縁王》へと挑む。
激戦の果てに敵と相打ちになるレッド。
命を落とした―――かに思われたのだが、気が付くとそこは《未知の世界》だった!
異世界でも困った人々を救うため、真っ赤なヒーローは冒険者となり今日も戦う!
《異世界×戦隊ヒーロー》でおくる、絆の最強英雄譚!!
キャスト
(C)中吉虎吉/SQUARE ENIX・異世界レッド製作委員会