ただの下女がここまで成り上がれた理由。第2期で冴えわたる推理に変化が? 冬アニメ『薬屋のひとりごと』第2期インタビュー:猫猫役・悠木碧さん&壬氏役・大塚剛央さん
大人気後宮謎解きエンタテインメント『薬屋のひとりごと』のTVアニメ第2期が2025年1月10日より連続2クールで放送中! 第1期から続く未解決の謎が後宮を不穏な空気に包む中、猫猫と壬氏の前に新たな難事件が立ちふさがります。(※初回放送は23時40分から)。
今回、放送を控えた本作について猫猫役の悠木碧さん、壬氏役の大塚剛央さんにインタビュー! 第1期の振り返りはもちろん、第2期が待ち遠しくなるお話の数々を伺っています。
“猫っぽい選択を取れれば勝ち”
──第1期の印象的なエピソードをお聞かせください。
大塚剛央さん(以下、大塚):すごく悩むところなんですけど、特に印象残っているのは第3話「幽霊騒動」です。芙蓉妃という中級妃と名もなき武官の恋を描いていて、最後の描き方もあくまで推測の範囲だからこそ「そうだったら良いよね」という想像の余地があるお話なんですよね。個人的にも全てを語りきらない展開が好きなので、そういう意味でも印象的に残っています。
悠木碧さん(以下、悠木):私も悩みますが、第19話「偶然か必然か」で猫猫が殴られるシーンは役者として印象的です。猫猫はどの程度のアドレナリンを出して痛みを耐えているのか、ダメージを受けながらも猫猫自身はどのくらい思考を働かせているのか、もっと言えば、そうなってしまうことは猫猫の想定通りなところとか、その状況をよく考えながら演じました。お話としても、壬氏があの場になぜいたのか、という部分なども含めて印象深いです。
──視聴者目線でもすごくショッキングなシーンでした。
悠木:とてもショッキングな描かれ方でしたね。私は猫猫のことを猫だと思っているので、完成した映像を見たときは思わず「やめて、いじめないで〜」と声が出てしまいました映像もアフレコの段階のものからより激しく描写されていた気もして。
──たしかに、スタッフの気合いが伺える描写でした。
悠木:そうですね。もとの小説や漫画でもしんどそうな描写をされていましたけど、アニメではアクションが付いたことでよりショッキングさが増していました。
──最後の壬氏が猫猫を抱きかかえて歩いているシーンもアニメならではの表現になっていました。
悠木:そうそう。
大塚:壬氏にとっての“ひとつの覚悟”みたいなものが伺えました。僕としても印象に残っています。
──改めて、どんな感覚でそれぞれのキャラクターを演じていますか?
悠木:あらゆる選択肢に対して、“猫っぽい選択を取れれば勝ち”みたいなところはありますね。気ままさと少しの情と打算を組み合わせると猫っぽい、つまりは猫猫っぽくなるなと思っていて。普段は場を引っ掻き回すけど、牛黄のためにゴロニャンするときもあれば、飼い主に対してまったく情がないわけではないからたまには撫でさせてあげたり(笑)。その配合のバランスは猫猫ならではのブレがあったりもするんですけど、猫っぽさを意識することで彼女らしさが表現できたんじゃないかなと思っています。
──ある意味、“猫”を演じているような?
悠木:そうかもしれませんね。壬氏との関係においても、人間としての愛情のような感情を向けられることもあるけど、猫猫としてどう受け取るのかが難しいところでした。ただ、この考え自体がヒントにもなっていて、ある種の飼い主と猫のような関係なんだなと。若干、主導権が猫にあるところ、ある程度のことなら許されちゃうところとかそうですよね(笑)。
あと、誰からも気にされていない下女だからこそ、いろいろな噂を耳にするわけですけど、そこが後宮を自由に歩き回っている猫みたいですし、それゆえに解ける謎があって。本当にその名の通りの人物だなと思います。
──飼い主である壬氏についてはいかがですか?
大塚:第1期のアフレコが始まる前、長沼(範裕)監督、音響監督と原作の先の展開までを見据えた話し合いをしています。具体的なシーンを挙げると、“齢24の壬氏を演じている”というところは、先々の“壬氏は何者なのか”という部分を踏まえて演じていたりして。それに加えて、みなさんとのお芝居の中で「この段階で子供っぽさを見せていいんだ」とか、都度都度、発見していくことが多かったです。
2倍速で見ている人にも伝わるように“文字を整理”
──猫猫は数々の推理を見せてくれましたが、中でも印象深いものを挙げるとしたら?
悠木:すべての謎が繋がっていく第19話です。そこから壬氏を助けに行く流れはストーリー的にも気持ちが良いですし、猫猫的にも、お芝居的にも最高潮だったんじゃないかなと思います。ただこの作品、最後にそれぞれの謎が繋がるものの、一つひとつの謎は各話数で解決しているんですよね。演じる身としてはその謎が最後に繋がっていることを視聴者に覚えてもらえるような芝居を構築しなくてはいけないので、感情とかの前に、文字を整理する作業に取り組んでいます。そういう意味では第19話はそれらの伏線が回収されたということで、一旦ではありますが肩の荷が下りた瞬間でもありました(笑)。
──文字の整理ですか。
悠木:「このワードは後々出てくるので、覚えておいてくださいね」みたいな気持ちで、音を立てることを意識していました。2倍速で見ている人にも伝わるようにと。そもそも猫猫は感情がブレることがなく、物事に対するリアクションは割とダウナーなので、聞き手がどう綺麗に聞こえるのかの調整をしないといけなくて。そこで文字を整理するわけですけど、猫猫は語りが長いこともあって大変なんですよね。それでも長い語りこそ整頓してあげないと観にくくなってしまうので足を引っ張ってはいけないんだという覚悟で演じていました。
──第2期でも推理はキレキレですか?
悠木:キレキレです(笑)。台本の6ページ綴で喋っていたりしますから。私としても、それができると期待されていると思って演じているので、より良いものを出したい気持ちがあります。やっぱりこの作品、視聴者の方も第1期を通して、「前のお話をちゃんと覚えておかないと」と思ってくれているところが大きいんですよね。ある意味、そこは視聴者の方との絆みたいなものかもしれませんね。
──壬氏は猫猫にグイグイ迫る姿が印象的です。大塚さんはふたりのやりとりで印象深いものはありますか?
大塚:10話の蜂蜜を手につけて迫るシーンが印象的です。
悠木:あぁ!(笑)
大塚:きっと、あそこの壬氏はやりすぎだなと自覚しているんです。だからこそ玉葉妃に怒られた途端に逃げていたわけで(笑)。それでも彼は常に猫猫を求めている節があるので、演じるにあたっても猫猫だけにしか見せない態度みたいなものを改めて心がけようと思ったりしました。
──デフォルメされた絵柄なども相まって、より可愛く描かれているシーンもありました。
大塚:例えば口を尖らせて拗ねてみたり、逆に目を合わせずに素っ気無い感じとか、子供っぽさにもいろいろな表し方があるんです。そこはアフレコの際に絵の情報やディレクションをもとに都度調整しながら演じています。
悠木:テストで掛け合う時の、あ大塚君の演技プラン100%の壬氏も私はとても好きで、あれが世に出ないのはもったいないなと思います。ただ、スタッフさんとしてもきっと壬氏の描き方はこだわっているポイントなんですよね。ディレクションを受けてのチューニングもまた素晴らしく、本当に尊敬しています。さしてディレクションをちゃんと出してくれるスタッフさんが描く作品は、キャラクター一人ひとりの見せ方が定めやすいので真摯にそれを受け止めて演じていました。