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- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
──第1話のアフレコはどのような雰囲気でしたか?
豊永:まるで同窓会のような雰囲気でしたね。皆さんが「お久しぶり!」と再会を喜んでいる様子が印象的でした。
東映アニメのスタッフの方々も『魔法つかいプリキュア!』の頃から携わっている方が多く、特に高橋李依ちゃん(キュアミラクル/朝日奈みらい役)はテンションがすごく上がってくださっていました。僕自身は今回初めての参加だったので、少し“転校生”のような感覚になりました(笑)。
でもありがたいことに他の現場で共演経験のある方が多かったので、とても温かく迎えていただきました。変なプレッシャーはなかったですね。むしろ、皆さんが過去の思い出を懐かしんでいる様子を横で見守りながら、ニコニコしながら頷いていました。青春を思い出しているような空気が心地よかったです。
さきほど僕の『フレッシュプリキュア!』のお話をしましたけど、それこそ高橋李依ちゃんは、『魔法つかいプリキュア!』を担当されていた頃は、デビューして数年というタイミングだったかと思います。駆け出しの時代の、思い出深い作品を再び演じられるというのは、声優として特別な経験だと思いますし、それが現場からも伝わってきました。
──ものすごく活気に溢れた現場なんだろうなと。
豊永:特に堀江由衣さん(キュアマジカル/十六夜リコ役)が現場の雰囲気を作られるのがとても上手で。高橋さんや早見さん、齋藤彩夏さん(モフルン役)の、ムードメイクをされているんだなっていう印象がありました。
僕自身はアイルというキャラクターの目線で現場を少し俯瞰的に見ていたので、その団結力や温かさを改めて感じましたね。
それと、皆さんが前シリーズの『魔法つかいプリキュア!』をサブスク配信で見返しているのが印象的でした。アフレコの合間合間で「あ、ここ、こんなセリフだったっけ」「こんな展開だったっけ」と確認しながら、それを今回の『MIRAI DAYS』にどうフィードバックするかを話し合っていて。その姿を見て、本当にみんなが『まほプリ』を愛しているんだなと感じました。感動しましたね。
──個人的には『まほプリ』は、キャスト陣だけでなく、ファンからもすごく愛されている印象があります。熱がすごいというか。
豊永:それだけ多くの方に熱を持って愛されているという事実自体が素晴らしいことだと思いますね。
──さまざまな現場に参加されてきた豊永さんから見て、『まほプリ』の現場カラーについて、どのように感じましたか?
豊永:プリキュアシリーズを1年間ともに過ごしてきた仲間たちがもう一度集っているわけじゃないですか。そこの絆の強さって、昨今の1クール作品ではなかなか出せないものだと思うんです。
スタートの時点からもう出来上がっているんですよね。みんなでゼロから作っていく感じではなくて、イチを100にしたものを、さらに200にしていこうぜみたいな空気感。そこに僕らが新メンバーとして入ることで、さらに掛け算になっていったら良いなと。そういう臨み方を僕はさせていただいていました。
──今回の『MIRAI DAYS』では、どんなところに注目してもらいたいですか?
豊永:さきほどの発言と重複してしまいますが、『魔法つかいプリキュア!』を子供の頃に見ていた方々が、それぞれの成長を経た中で、また『まほプリ』の世界に触れて、懐かしさや感動を味わってもらえたら嬉しいです。
やはり、自分が好きだったシリーズを大人になってから観られるというのはものすごいことだと思います。その気持を存分に堪能しつつ、それぞれの見方で楽しんでいただければいいと思います。たとえば、「モフルンが可愛い」「懐かしい」という感覚だったり、自分の中の思い出を投影しながら物語を楽しんだり。それぞれのスタイルで味わってほしいですね。
現段階で言えることは少ないのですが、アイルはとにかく振り回していくキャラクターなので……そこにみらいちゃんたちがどう立ち向かっていくかを楽しみにしていただきたいです。
──豊永さんならではの解釈が、きっとアイルというキャラクターにより深みを与えているように感じました。
豊永:ありがとうございます。アイルという役を僕が演じるという意義については考えていて。それはどの役をいただいても考えることではあるのですが、今回もその意味をすごく考えました。僕にしかできない表現をアイルくんに重ねることで、よりアイルくんが色づくんじゃないかなと。
アイルは少し謎めいていて、ヒールっぽいポジションにいるキャラクターです。そのため、僕自身がアイルの“理解者”でいてあげたいなという気持ちもありました。そういった解釈が表現としてプラスされて、より魅力的に感じてもらえたらなと。それは、演じたあとにあらためて感じたことでもありますね。
──本作に参加されたことで、豊永さんとして得たものはありましたか。
豊永:それを言うとネタバレになってしまうんですよ(笑)。だから「あります!」「でも言えません!」とだけ言っておきます。でもその得たものって、僕自身だけじゃなくて、みらいちゃん、リコちゃん、ことはちゃん、ひーちゃん、モフルン、そして見ている視聴者の方にも届くものがあると思います。
なんて言うんでしょうか……。子どものころに考えていたシンプルなもの、たとえば、夢、希望、ワクワクドキドキといった感覚を思い出しながらも、大人になったからこそ、もっと深く考えられるものがあると思うんです。それがきっと、いま、オトナプリキュアをやる理由だと思うんですよね。そういう思いを制作サイドから感じました。その思いをしっかりと、僕らは画面の向こうの人たちに届けなきゃいけないなと。それが使命だなと思っていました。
……また最終話までオンエアーしたら取材してください(笑)。
──ぜひ(笑)。最後にもうひとつおうかがいさせてください。豊永さんにとっての『プリキュア』はどういう存在でしょうか。
豊永:子どものころは、通ってこなかったんですよ。なのでプリキュアという存在を意識したのは大人になってからでして。本当に個人的なところで言えば、父親としてプリキュアシリーズを見ていて。娘が楽しみにしているもの、という感覚なんですよね。
だから、どのシリーズに対しても言えることなのかもしれないのですが、保護者のような目線で微笑ましく、「頑張れ!」と応援したくなるような存在です。
それとプリキュアシリーズ全体でいうと、基本的には“王道”を展開する作品だと思っています。ただ、その中で描かれる練度/密度はとても作り込まれていると感じます。それがプリキュアシリーズの強さであり、多くの人の心を引きつける理由なのかなと。そして、大人になればなるほど泣ける作品だとも思いますね。
──本当にそうなんですよね。私も横にいる子どもを差し置いて号泣してしまいます……。
豊永:そうなんですよね。ちびっこたちは純粋に楽しめる作りなんですけど、そこに至るまでの背景が作り込まれているから、それぞれのキャラクターの思いや、さらにはセリフに込められた深い意味を考えながら見られるような大人たちが泣くんですよね。
僕自身も『映画プリキュアオールスターズF』を娘と見に行ったのですが、クライマックスシーンで娘が特典でもらったフレンドリングを光らせている横で号泣していました。そういう構図でしたね(笑)。
大人になればなるほど、童心に帰ることのできる作品なのかなと思っています。素直にそう思える作品って、すごく貴重だし、大切にしたいし、これからも続いていって欲しいなって。
──そういう角度から見ると、『MIRAI DAYS』はどちらのエッセンスも入っていて、まさに絶妙なバランスですよね。
豊永:今回の『MIRAI DAYS』は、まさに“狭間”を描いた作品だと感じます。小さい頃にプリキュアを応援していた世代が少し背伸びをして成長した今、この作品を観ることでいろいろと考えさせられることがあると思います。大人ほど達観していない状態で見るからこそ、いっぱい考えることができると思うんです。
純粋に楽しむ子どもたちと、深く考える大人たち、その両方に訴えかける力を持っているところがプリキュアシリーズのすごさであり、今回の『MIRAI DAYS』の魅力なんじゃないかなと。
[文・逆井マリ]
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。
ABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネット「ANiMAZiNG!!!」にて毎週土曜深夜2時より放送中!
好奇心が旺盛で不思議なことが大好きな朝日奈みらいは、中学 2 年生になる春休み、魔法つかいの少女・リコと出会う。
奇跡と魔法に導かれて、リコと共に伝説の魔法つかい「プリキュア」に変身!
みらいが大切にしているクマのぬいぐるみのモフルンや、「リンクルスマホン」から生まれた妖精のはーちゃんとも手を取り合って、「魔法界」と「ナシマホウ界(人間界)」というふたつの世界に迫った混沌を退ける。
しかしそれはみんなの別離を伴うものだった。
数年後に奇跡的な再会を果たしたみらいたちは、それぞれの世界で、それぞれの未来へ向かって歩み始める。
みらいはナシマホウ界で大学生に。魔法界に戻ったリコは、魔法学校の先生に。モフルンは変わらずみらいの隣に。そして、はーちゃんは遠いところから世界を見守る存在に――。
だが、そんななか、魔法界とナシマホウ界に新たな災いが現れて......?
新たな災いの兆しをきっかけに、数か月ぶりの再会を果たしたみらいとリコ。
謎の敵を退ける一方で、ふたりは自分たちの過去、そして未来と向き合うことになるのだった――。
「キュアップ・ラパパ!」の魔法の言葉で、ワクワクもんの物語がいま再び動き出す!
原作:東堂いづみ
キャラクター原案:宮本絵美子
シリーズディレクター:浜名孝行
シリーズ構成:村山 功
キャラクターデザイン:袖山麻美
音楽:高木 洋
アニメーション制作:東映アニメーション・スタジオディーン
オープニング主題歌:「Dokkin◇魔法つかいプリキュア!!Part3~MIRAI DAYS~」
歌:北川理恵
作詞:森雪之丞
作曲:奥村愛子
編曲:高木 洋
エンディング主題歌:「キセキラリンク」
歌:キュアミラクル(CV:高橋李依)・キュアマジカル(CV:堀江由衣)・キュアフェリーチェ(CV:早見沙織)
歌詞:六ッ見純代
作曲・編曲:高木 洋
高橋李依 堀江由衣 早見沙織 齋藤彩夏
豊永利行 他