
「柴犬」のような栞奈と、“人間そのもの”があまり好きではない中禅寺先生。二人のささいな距離感の変化に注目|TVアニメ『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』前田佳織里さん&小西克幸さんインタビュー
京極夏彦先生の「百鬼夜行」シリーズの前日譚にあたるスピンオフ漫画『中禅寺先生物怪講義録 先生が謎を解いてしまうから。』(漫画:志水アキ/脚本:田村半蔵/Founder:京極夏彦 講談社「コミックDAYS」連載)。
本作のTVアニメが2025年4月7日(月)よりテレ東・BSテレ東・AT−Xにて放送開始となります。
本作の舞台は戦後間もない昭和23年、東京。クラスメイトから「図書館の幽霊」の噂を聞いた日下部栞奈(くさかべ かんな)が、国語の新任講師・中禅寺秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)に相談したことで、物語が動き出します。中禅寺先生の推理によって真相を解明した栞奈は「心霊探偵」と呼ばれ、いろいろな人から“物怪”絡みの相談を持ち込まれることに。活発で好奇心旺盛な栞奈と、不機嫌そうにしながらも鋭い推理を見せる中禅寺先生が、さまざまな謎の解明に挑みます。
今回アニメイトタイムズでは、日下部栞奈役の前田佳織里さんと、中禅寺秋彦役の小西克幸さんにインタビューを実施! 対照的な性格ながら、徐々に絆を深めていく二人を演じる上で大切にしたことや、しっかり掛け合いをするのは今回が初めてだというお二人のお互いの印象などを伺いました。
怪異の怖さとポップなキャラクターが融合した、「推理もの」の入り口としてオススメできる作品
──原作を読んだり、演じてみた作品の印象と魅力を感じた点をお聞かせください。
前田佳織里さん(以下、前田):京極夏彦先生の作品のスピンオフというところにまず興味を持って、原作を読ませていただいたら、(京極先生の普段の作品と比べて)よりポップで、謎解きも「平和的に解決するんだな」と思いました。
学園ものの中に、怪異もあり、謎解きもありと、個人的に好きな要素が全部詰まっていたので、「これを演じられるなんて嬉しいな!」とワクワクする気持ちでいっぱいでした。
小西克幸さん(以下、小西):僕もそういうことに尽きるのかなと思います。元々、(アニメ化の前から)この作品は知っていて、謎解きの作品ではあるし、難しいことも書いてありますが、内容的にはわかりやすいので、「どの年齢層の方でも読みやすい作品だな」と。すっと物語も入ってくるし、どのエピソードも長編ではなく数話で解決するので、さくさく読み進めることができて、「次はどんな怪異が起きるのかな?」とか、「栞奈はどんな苦労をするのかな?」と楽しめて(笑)。
登場人物もとんがったキャラクターが多いし、京極先生の「百鬼夜行」シリーズのキャラクターも出てくるので、「どのタイミングで登場するのかな」という楽しみもあって、「一粒で二度おいしい」作品だなと思いました。
──京極先生の作品のスピンオフと知った時は、人が死んだり、残酷な描写があったりするのかなと思ったら、意外にも……。
前田:誰も死んだりしないし、血が出ても不注意のケガからという(笑)。
小西:生徒たちは「幽霊が出た」とか「怪異のせいだ」と怖がりますが、中禅寺先生は「怪異じゃないよ。よく考えればわかることだから」と丁寧に説明してくれます。
前田:その説明を聞いてから、もう一度トリックや謎解きを考えてみると「なるほど! 思い返せば確かにこんなことをしていたな」と、繰り返し見る楽しさもあるのがいいですね。
小西:やっぱり、栞奈たち学生や先生にまつわるお話が多いことと、京極先生の作品に出ていたキャラクターの描き方もポップでトガっているし、(登場人物たちが)救われるお話も多いので、読んでいてほんわかする感じです。
──小学生くらいのお子さんが読むのにもピッタリだなと思いました。
前田:ぜひぜひ!
小西:謎解きなどとっつきやすいので、推理ものの入り口としてもいいかもしれませんね。
素直で誰とでも仲良くなれる栞奈と、“人間そのもの”があまり好きではない中禅寺先生
──演じるキャラクターの印象と、自分と似ている点、共感できる点をお聞かせください。
前田:この作品は栞奈ちゃんの視点で物語が進んでいきますが、彼女は等身大の高校生らしい、すごく素直な女の子です。怖いなと思ったら「怖い!」、嫌なことは「ヤダ!」と感情のまま言葉に出していて。でも困っている人を見たり、頼られたら嫌とは言えない性格なので友達も多いです。
最初の怪異について中禅寺先生に相談したら、解決してくれたけど、(表向きには)彼女が解決したことになり、周りから「心霊探偵」と呼ばれて、次々と事件の相談が舞い込んでしまうようになってしまって(笑)。困りつつも(他者を)放っておけなくて、人助けのために奔走する、いい子だなと思います。
あとは、ご飯をいっぱい食べる子で、私もめちゃめちゃご飯を食べるし、収録現場でも何かしら食べています(笑)。
小西:スタッフさんが毎回、その話数で出てきたお菓子などを持ってきてくれるので、スタジオでもみんなで「今日は何だろうね?」とワクワクして。それが収録恒例の楽しみになっています。
前田:第1話の時はカルメ焼きが置いてあって、テンションが爆上がりしました(笑)。大人になってからカルメ焼きを目にすることも、食べる機会もなかなかありませんから。
小西:なかなか売ってないしね。
前田:余ったものを「家に持って帰っていいですか?」とお願いしたくらい、おいしかったです。
──栞奈は「心霊探偵」と呼ばれて良い気分になったり、調子に乗ることも多いですが、前田さんは違いますよね?
前田:いや、結構調子に乗っちゃうところはあるかも?
小西:周りが見てどう思うか、だからね。本人にはわからないよね。
前田:バラエティーやトーク番組に出演した時は「おもしろくしたいな」と思って、自分から笑いに走ってしまうところがあるので、そういう点では栞奈と似ているかもしれません(笑)。
──では、小西さんから見た中禅寺先生は?
小西:変人です(笑)。僕が勝手に思っていることですが、(彼は)人間の考えていることや行動は好きでも、“人間そのもの”はそれほど好きでもないのかなと。そこは僕と共通しているところだと思います。
中禅寺は、偏屈で、頑固じじいで、皮肉屋な一面があるキャラクターなので、周りから見るととっつきにくいかもしれないけど、付き合ってみると彼の人間性が見えてくるので、少しずつ理解できるようになると思います。でも初対面の人や付き合いが浅い人にとっては、眉間にしわを寄せて怒っているように見えるかなと思います。
──ある意味、栞奈と同じで、しょうがないから謎解きや怪異の解決をしている感じがありますね。
小西:しょうがないから手助けはするんですが、あまり表に出たくないから、栞奈が解決したことにして、「君が心霊探偵として頑張って」ということなんだと思います。
前田:第1話で初めて出会った時は、お互いの印象が悪かったと思うんですが、段々仲良くなっていった気がします。
小西:それについては、栞奈がすごいんだと思います。彼女が持つ陽のオーラが強くて、最初に怪異を解決して「僕は一人で本を読みたいから二度とここに来るなよ」と言われたのに、何かあったら「先生~!」ってやって来て。
前田:まるでコントやギャグみたいに(笑)。
小西:中禅寺も「ジャマだな」と内心思っているはずなのに、彼女の持つ陽のオーラやパワーが少しずつ距離を縮めているのかなと。
前田:栞奈は誰とでも話すし、すぐに仲良くなりますからね。それを無意識にやっているのがすごいです。
小西:みんながなりたくて、でもなかなかなれない学生じゃないですか。嫌味を感じさせないのもいいですね。
──中禅寺先生自身が変わりものだからか、彼の知り合いも変人ばかりで。
小西:何ででしょうね?(笑) 榎木津(礼二郎)もそうだし、木場(修太郎)もそうだし。でもみんな変人だけど、人間には興味を持っているし、腐れ縁みたいに結構長い付き合いもしていますよね。変人でも話が合う人はいるわけで、中禅寺は知識の鬼なので、いろいろな情報も聞きたいし。人が何をするのか、その行動原理に興味があるのかなと思います。
前田:確かに、彼の知り合いはそれぞれの専門分野に特化したスペシャリストであり、変人という(笑)。
小西:考えてみたら、スペシャリストって変人が多い気がする。
前田:好きなことを突き詰めていくことで……。
小西:何かを忘れていって(笑)。それ以外のことを学ばないから。
前田:好きなことに必要なもの以外をそぎ落としていくことで、とんがっていくのかもしれませんね。