
『アルドノア・ゼロ(Re+)』花江夏樹さん×小野賢章さんインタビュー| 後日談の「雨の断章」を演じて、ようやく気持ちに一区切りがつけられた
2014年~2015年にかけて放送されていた、地球と火星の戦争を描いたオリジナルロボットアニメ『アルドノア・ゼロ』。ロボットアニメでありながら主人公が量産機に乗り、高性能な火星のロボット(カタフラクト)に知略で立ち向かうという、一風変わったコンセプトが話題を呼んだ作品です。
2025年2月28日からは、TVシリーズ総集編に後日談となる新作アニメ「EP24.5:雨の断章 -The Penultimate Truth-」を加えた『アルドノア・ゼロ(Re+)』が劇場にて期間限定上映が行われ、3月26日にはTVアニメ全24話と「雨の断章」を収録したBlu-ray Disc BOXが発売されます。
今回は、そんな『アルドノア・ゼロ』におけるメインキャラクターを演じた、花江夏樹さん(界塚伊奈帆役)と、小野賢章さん(スレイン・トロイヤード役)へのインタビューをお届けしていきます。
がむしゃらな自分と冷静な伊奈帆のギャップを埋めようと頑張っていた
──最初に『アルドノア・ゼロ』の総集編と新作パートが作られるという話を聞いた時はいかがでしたか?
花江夏樹さん(以下、花江):新しい映像が作られるのはほぼ10年越しだと思うので、まずビックリしました。
新作部分のお話としては、アニメ放送が終わった後にやったイベントの朗読劇なので、内容は知ってはいたんですけど、伊奈帆を演じるのも本当に久しぶりだったので「ちゃんとできるかな?」という気持ちが大きかったですね。
小野賢章さん(以下、小野):収録は遠い記憶を呼び覚ましつつ……みたいな感じだったのですが、TROYCAさんの作品に参加させていただいた時に「『アルドノア』の続きができたらいいね」と話題に上がったりしていたので、実際に決まったというお話を聞いた時は嬉しかったです。
ただ、あの朗読劇でやった話だと僕は最初気付かなくて(笑)。「なんか口に覚えがあるな」みたいなのは感じていて、台本を読む中で「朗読劇でやったやつだ」って思い出しました。10年経ったんだということを実感しましたね。
──朗読劇として演じた時から印象が変わった部分はありますか?
小野:受けた印象としてはほとんど変わってないです。あのイベントは本番中に機材トラブルでマイクが入らなくなって、朗読劇を中断してトークでつないだんですよね。そっちの記憶の方が強く残っています(笑)。
──総集編をご覧になって、当時のことを思い出されたり、改めて何か感じられたことはありますか?
小野:当時もそうでしたけど、今見ても本当にものすごいクオリティで作られていたんだなって改めて感じました。自分の演技については、「すごい若いな」と思ったりもしましたけど(笑)。
花江:僕は結構新鮮な気持ちで見返したんですけど、自分で思っていたよりもしっかりと内容を覚えているなと。
一つ一つの台詞をとっても、やっぱりあの頃は今より無我夢中というか、食らいついていこうと演じていたんですけど、伊奈帆っていつも冷静で頭がいいので、そのギャップを埋められるように頑張っていたことを思い出しました。あの当時の自分にしか出せない良さみたいなのもあって、この時代ならではだなと懐かしみながら見ていましたね。
──役者さんって、昔のご自身の演技を見直した時に、気恥ずかしさみたいな感覚とかあったりするんでしょうか?
花江:僕はあまりないですね。やっぱりあの頃の感じって、今の自分が出そうとしても表現できなかったりするので、むしろちょっと羨ましいというか。
小野:僕は「意外と頑張ってるな」って思いましたね(笑)。もちろん、自分としてはベストを尽くすつもりで毎回やっているんですけど、僕が元々あんまり自分自身に納得できない性格なのもあって。だから昔の自分のお芝居に納得することも多くないんですけど、『アルドノア』は自分の中にあったイメージよりも頑張ってたなと思えました。
──新作パートとなる「雨の断章」について、どんなアプローチでお芝居を考えられましたか? 収録としては10年ぶりでも、キャラクター達はそうではないという難しさもあったのではないかと思うのですが。
花江:この10年、「『アルドノア』好きです」って言われる機会も多くて、僕自身の思い入れもあったので、優しい気持ちになっていましたね。
──優しい、ですか。
花江:カームと話すシーンとか、僕の中でやっぱりカーム好きだなぁって気持ちが湧いてきちゃって。最初「ちょっと優しいです」ってディレクションが入って、そこから微調整をかけていったりして、結構収録は難しかったですね。
小野:実は僕の方はあまり苦労した印象がなかったです。……というのも、伊奈帆って、1回フラットな状態に戻っているから難しかったと思うんですけど、スレインの方は全然フラットな状態じゃなくて、TVシリーズの最終回のメンタルを引きずっているんですね。
そこから伊奈帆に少しだけ心を開いていくという流れが「雨の断章」では描かれていたので、スタート時点の気持ちさえ作っておけば、あとはお話の流れに沿って自然に演じられるかなとイメージして臨みました。
ただ、当時の自分がどんな発声の仕方をしていたかの確認は、事前にやりましたね。
──その時のスレインの心境についてのディレクションはあったんでしょうか?
小野:いや……あまりなかったと思います。「とりあえずやってみて」という感じでした。収録はすんなりいって、大丈夫なのか逆に心配になったりしました。
花江:一緒に収録できたのも良かったよね。
──久しぶりのお二人での掛け合いはいかがでしたか?
小野:僕らの関係性って、10年前と今で大分違っていて、昔よりずっと仲良くなってるんです。
ただ、アニメの共演自体が結構久しぶりでしたし、それも二人で掛け合いをやるとなると尚更なので、なんかちょっとした気恥ずかしさみたいなのはありました。「ああ、しっかり芝居してるな」って(笑)。
──花江さんもそういう感覚はありましたか?
花江:いや、僕は別にそういうのはなかったです(笑)。久しぶりだから、純粋に楽しいなって思いながらやっていましたね。
小野:これが性格の違いってやつだと思います(笑)。